「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第14話

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ボウドアの村編
<ひどい話>


 さて、セルニアの話ではあちらが捕らえたのは3人、こっちが捕らえたのが最初の2人と次に挟撃してきた3人、そしてさっき倒した2人だから、残りは10人か

 私が野盗の立場で、もし一撃離脱をするのなら、防御力が高い、または回避が得意なメンバーを正面に配置してぶつけ、その隙に他のメンバーで敵の後ろに回って攻撃、その攻撃を防いでいる隙に正面を担当したメンバーが回り込んで合流、そして全員でけん制をしながら離脱って所かなぁ

 ただ逃げられる人数を増やすというのなら全員一斉に掛かり、かつ全員が各自のおとりになって逃げるというのが一番だけど、これだと間違いなくリーダー格が捕まってしまう
 身のこなしで誰がリーダーか解ってしまうからね

 私としては雑魚は逃がしてもリーダーは捕らえたいし、当然それはあちらも解っているだろうからそんな手は打ってこないんじゃないかな?
 その程度の判断はできる集団である事は、これまでの行動を見れば解る

 まぁ、リーダーだけ別方向に逃げて、他全員が私に掛かってくるというのならリーダーは逃げられるけど・・・流石にやらないんじゃないかな?

 「そんな案を出しても他のメンバーは絶対に首を縦に振らないだろうし」

 たとえば王様を逃がすために家臣がそういう行動を取るというのならありえなくはないけど、野盗がリーダーを逃がすために取る行動としてはやはりありえないだろう

 「次に考えられるのは店長も指摘した村人を人質にとって逃げるという方法だけど・・・これは悪手なんだよなぁ」

 だって、たとえ私が村人を人質に取られたからとここを通したとしても、いつまでも村人を連れて行くわけには行かない

 ここまで村人を殺さないようにしていた野盗だから、いくら不都合があるとしても殺さずにどこかで村人を解放するだろうけれど、解放したら移動手段が限られるこの世界ではわざわざ開放のために別方向に行くわけにもいかないからどちらに逃げたかすぐに解ってしまう
 それに人質も素直には動かないだろうから、村から離れる時間が掛かってしまって追撃されるリスクも上がる

 「それに普通に考えたら私たちみたいなメンバーが3人だけで旅をしているわけはないから、追っ手がさらに増えて手ごわくなる可能性も考えられるしなぁ」

 子供一人にメイドと護衛一人で行動しているより、私クラスのメンバーがパーティを組んで護衛をしている金持ち、または貴族の家族が居て、今は子供だけが何かに気をとられて別行動していると言うほうが納得できる話だ
 もしそうなら安全圏まで逃げ切る前に私クラスの追っ手が後4〜5人増えると言う事になる

 「私でも逃げ切る自信ないなぁ、そんな相手だったら」

 つい、自分の考えに笑ってしまう

 あと、人質を殺さない代わりにこちらが捕らえたメンバーをかえせとか言ってくるかもしれないけど、そうなると怪我をしたメンバーを連れての逃走だから逃げ切れる可能性はもっと低くなる

 どう考えても百害あって一理無しだ

 正直、ここはとにかく大人数で逃げて夜を待ち、闇にまぎれてメンバーを奪回するのが一番リスクが少ないんだよ
 私たちはこの村の住人ではないから、夜になればもうこの村から離れるかもしれないからね

 それが解っても、相手が自分たちよりも強いと心情的に人質を取りたくなってしまうのも解るんだよなぁ
 一撃離脱は相手が想定以上に強かった場合、最悪全滅もありえるから

 「実際、一撃離脱を選んでくれたら私としては楽なんだよね」

 あの程度の野盗10人なら向かってきてさえくれたらすぐに終わるしね

 さてさて、どうなるかな?なんて考えながら進んでいくと、多分待ち構えていたのであろう前方の家の影からぞろぞろと武装したメンバーが現れた
 当然野盗なんだけど・・・

 「ああ、やっぱり村人を人質にしちゃうか」

 姿を見せた野盗たちは村人を3人、人質にとってその全員の首筋にナイフを突きつけていた
 人質になっているメンバーに女性は一人もいない所がこの野盗たちの性格を現している気もするが、荒事を経験した事がないであろう村人たちでは男であっても顔は真っ青な上に恐怖に体をこわばらせているので、返って女性のほうが度胸が据わっていいのではないかと思ってしまう

 そんな人質たちを私の正面において武器を構え、こちらの動きに注意を向けている野盗の人数は10人、と言うことは全員いるってことか

 伏兵を置こうと考えないのは分散しても各個撃破されるだけと言う判断かな?
 戦うより逃げる事に重きを置くなら正しい判断だ

 「おいお前、そこで止まれ!これが見えないか!」
 「見えるけど、なに?」

 特にどう答えようと思っていた訳ではなかったけど、なんのひねりも無いお決まりの悪役然とした言葉に、ついこうぶっきら棒な口調になって答えてしまった
 だって、何か言うならもうちょっとこう、台詞を考えて行動してほしいじゃないか
 普通の野盗と違って、ここまで統率取れているんだから、こちらとしてもちょっとは期待していたんだし

 「こ、これ以上進んだらこの村人の命はないぞ!」

 私の反応が予想したものと違ったのだろう、一瞬ひるんだ後、再度脅してくる

 「うん、うん、解ってるって」

 それに対して納得顔でそう返事をし

 「で、その人たちが死んだら、私になにがデメリットがあるの?」

 あらかじめ考えておいた台詞を口に出す

 「なっ!?」
 「デメリットだとっ!?」

 何と言うかなぁ、リーダーなんだろうけど私がとんでもない事を言い出したとでも言いたいような顔をしているし、横にいる盗賊風の装備の者は副リーダーだろうか?彼も信じられないものを見たかのような顔だ

 「どういう事だ?こいつ、村を助けに来たんじゃないのか?」
 「えっ?えっ?えぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜」

 いや、リーダーだけではなく、他の野盗、そして人質になっている村人までが驚愕の表情でこちらを見つめている

 あっそこ、いくら驚いたからと言って突きつけたナイフ、首筋から放しちゃダメじゃないか
 ほかの二人が突きつけたままだからいいけど、もし人質が一人だったら襲いかかっちゃうぞ

 「う〜ん、私は子供の味方ではあるけど、正直大人はどうでもいいんだよね」
 「ちょっ・・・」

 右手の人差し指をあごに当て、少し小首をかしげて、本当にどうでもいいと言う表情でそう言い放つ

 あっこいつ、とんでもない事言い出しやがったって顔してるなぁ
 まぁ、確かにとんでもない事だけどね

 「だいたい、大の大人が私みたいな若い女の子に助けてもらおうなんて根性が気に入らない。大人なら自分で何とかするべきでしょ、ねぇあなた、そう思わない!」
 「え、あ、はい」

 ビシッって音がしそうな勢いで私に指差され、話を振られた野盗の一人が、その剣幕に押されたのか、普通に返事をした
 なにやってるんだか
 せめて女の子と言うところくらい突っ込んでよ、恥ずかしいでしょ

 「私は依頼されてここにいるわけでもないし、村を救う義務もないのよ」
 「なっなら、なぜこんな事をする?関係ないんだろう!」

 その言葉を受けて、私は小馬鹿にしたようにフフ〜ンと言う顔をして

 「なに言ってるのよ、あんたらの一人が子供を泣かしたからに決まってるでしょ」

 ババァ〜ン!と音がなるような勢いで胸を張って言い放つ
 何と言うか、我ながらとんでもない理論だ

 「あの子達に野盗は全員排除すると約束したから私はやってるのよ。この村の人のためじゃないわ」

 う〜ん、我ながら外道な発言だなぁ
 でもまぁ、これもある意味私の本音だったりする
 当然内緒だけどね

 「それと、もともと私がこの村に現れたタイミングからしておかしいとは思わなかった?偵察しているみたいだから解っているとは思うけど」
 「おかしいとは?」

 なんか怖いくらい、こっちが思った通り喰いついてくれるなぁ
 強敵を前にして緊張しているのかな?
 それとも私の反応が意外すぎて思考がついて行ってないとか?

 まぁ、予定通りなのはこちらにとっても好都合だしと、あらかじめ考えておいた段取りにあわせて、野盗のリーダーらしき男に向かって解らないかなぁと、呆れ顔で言い放つ

 「私たち、どこにいたと思ってるの?あの子達がこの村に帰ってこなければ、襲われているのは解っていたけど見捨てるつもりだったのよ。そうじゃなければあの子達が泣いてすぐに現れるわけないじゃない、御伽噺のヒーローじゃないんだから」

 じっと見つめてるけど、これは事実だから私の顔を見ても嘘だという痕跡は見られないよ
 でもまぁ、嘘かどうか疑っているようだからダメ押しもしておこう

 「丘の上から見ていた感じだとあなたたち、人を殺さないようにしているみたいだけど何か理由でもあるのかなぁ?おかげで私も殺すわけには行かないから苦労させられたわ」

 そしてさも楽しげに、にっこりと笑い

 「でも、あなたたちが殺すというのなら手加減する必要もないし、楽ができていいわね」

 そう言って剣を鞘からゆっくりと抜き放つ
 あえて構えず、切っ先を下に向けた脱力した格好ではあるけど、野盗たちからしたらこちらの殺傷力が上がっただけに、緊張感は確実に増している

 今までは殴っていただけだったので私の剣の腕前はわからないだろうけど、剣を装備している者が拳で殴るより剣を使うほうが苦手などと言うはずはなく、また、白銀の光を刀身から放っているので、それが魔法の武器であるのも一目瞭然だ

 「ぐっ」

 私が剣を抜いた姿を見てひるむ野盗たち
 さて、このはったりでどう出るか

 やけになって村人殺さないといいけど
 いくら相手が弱いと言っても、流石に3人もいると全員助けるのは難しそうだからなぁ

 「さて、そろそろ始める?」
 (見知らぬ村人さん、もし殺されたらごめんね)

 そう言うと、一気に間合いをつめ、あえて村人を人質にしていない一人を剣の柄で殴り飛ばす

 「なんてやつだ」
 「本当に見捨てやがった」

 その姿を見た野盗たちは、やっと身を守るために村人を放り出し、武器を構えた
 それはそうだろう、本当に助けようとしなかったのだから

 明らかに自分より強い相手が襲い掛かっているのに、足手まといがいては自分を守る事ができないという判断くらいはできたようだ
 よかった、よかった

 ここで最後のダメ押しっと

 「あれ?殺さないの?」

 投げ出した村人をそう言いながら一瞥する、さも残念そうに
 そして視線を野盗たちに戻し、殺気を放つと完全に野盗たちの視線は私に向き

 「逃げて!」

 その野盗の変化を感じ取り、意識が村人たちから完全に離れたのを確認してから、すかさず村人たちの前に移動し、そう叫ぶ
 投げ出され、うずくまっていた村人たちは、その声に反応してあわてて逃げて行った

 「何の躊躇も無く反応したところを見ると、前にテレビで見た通り危険が迫った時は「危ない!」とかより「走れ!」とか「逃げろ!」みたいに行動を示す言葉で伝えた方がいいと言うのは本当なんだろうなぁ」

 そんな独り言を言いながら安全圏まで逃げた村人たちの姿を確認し、やっとそうとは見えないよう気をつけていた緊張を解く
 野盗が開き直ったら、何とか一人でも多く助けようと気楽そうな演技をしながらもずっと意識を集中していたからね

 「あはははっ、いやぁ〜よかったよかった。意固地になって村人が殺されたらどうしようかと思ったよ」
 「なっ!」

 それだけに、つい笑い出してしまった
 そして剣を肩に乗せ、笑顔で野盗たちを見渡す

 「でも、ホント、なぜ人を殺さないの?まぁどうでもいいけど」
 
 改めて剣を野盗たちに向け、微笑んだ

あとがきのような、言い訳のようなもの


 13話もほんの少しだけ手を入れ、あとがきも書き直して解説を入れたので興味がある方はどうぞ

 そして14話もちゃんと読み直し、再構成しました
 少しは読みやすくなったかな?

 いやぁ、外道ですねぇ、シャイナ
 これはシャイナがNPC寄りな思考であるという事ではなくて、うちの主人公がこんな性格なのだと思ってください

 助けられるものなら助けたいけど、できないのなら合理的に考えます
 これはまだ彼がゲームを引きずっているからなんですよ

 頭のどこかでこの世界に居る人たちをゲームのキャラクターのように感じているんです

 それと、シャイナは彼本人ではないので現代人の罪悪感で判断するのではなく、ユグドラシルの人間としての罪悪感で人の生き死にを判断しているというのも実はあって、もしかするとこの場面のキャラがシャイナではなくアルフィンだったら村人の命を優先して野盗を逃していたかもしれません

 実際問題、もし助ける事ができる命が目の前にあって、でもそれを他人の命だからと割り切るのは普通の社会で生きている人にはできないでしょうからね

 こう言う細かい所がシャイナたちは主人公とは別人格であるという部分なのかもなぁ

 ■

 これ以降は仮アップの時に書いたあとがきをちょっとだけ修正したものです

 実はこの話、うちの掲示板に書き込まれた”あおり”を読んで書く気になりました
 何と言うかなぁ、あおりでつまらないと書かれた事によって9年前を思い出したんですよ

 私が書けなくなったのはちゃんと私のSSを読んでくれていた人が、その回のつまらない理由を書いてくれて、その文を頭において次の話を作ったのに、なお自分が書いたものがこれでいいのか自信が持てなくなったからなんですよね

 でも、今回の掲示板の書き込みを読んで改めてハーメルンの感想欄を読んで気付いたんです
 誰も私のSSの感想を書いていないんですよ

 全員が私のあとがきや感想の返事として書いた物の感想しか書いてないんですよね
 私は本文ではなく、あとがきやその返答を読んで反応した人の意見を読んで、SSを書くのをやめていたんですよ

 結局今度も私は私のSSを楽しみにしてくれている人を裏切っていたわけです
 何と言うか、私はやっぱりダメですねw

 と言うわけで、それに気付いたので休みを利用して書き上げました

 しかし、我ながら本当に気が滅入っていたんだなぁ
 普段ならあんなに過剰反応もしないし、長文返答もしないのに
 別にあそこまで熱くなるような事でもなかったしね

 あれが無ければ長期休載もしなかったんじゃないかなぁ
 ちょっと反省

 それでは私が書いたものを楽しんでくれる人が一人でも多く居る事を祈っています
 駄文で才能のカケラもない話ですが、これからも読んでもらえたら幸いです

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