逆境!祐巳ちゃん

注意!このSSは未来の白地図のネタバレです。まだ読んでいない方は絶対に読まないように。

未来の白地図、166ページより。

祐「私じゃ、駄目?」

 祐巳は大きな声で尋ねた。

瞳「祐巳さま・・・。ありがとうございます。祐巳さまはなんて親切なお方なのでしょう」
祐「え?」
瞳「・・・なんて、私が言うとでも?」

中略

祐「瞳子ちゃ・・・。」
瞳「そのロザリオは受け取れません。戻してください。」
祐「そっ、それは・・・」

逆境とは!?

祐「それは・・・決定ですか?」
瞳「私が不用意な言葉をお聞かせしてしまった事で祐巳さまに気の迷いを起こさせてしまった事は謝ります。」
祐「瞳子ちゃん!」
瞳「くどい!」

 瞳子ちゃんは言いたいことだけ言うと、黙って頭を下げた。

瞳「もうお話する事はありません。失礼します。」

思うようにならない境遇や不運な境遇のことをいう!!

祐「・・・・そんな。」

 今度こそ行ってしまう。けれど、祐巳はもう追いかけなかった。呼び止めもしなかった。何を言っても、きっと今の瞳子ちゃんには届かない。瞳子ちゃんが、どんどん遠くなる。

祐「これよ。」

「これが逆境よ!!」

祐「フッ、フッフッフッ、フハハハハハッ」

 ふがいなさと情けなさからこみ上げた笑いで声をからした後、祐巳はうつむき、泣きだしそうな気持ちを抑えてとぼとぼと校舎に向かって歩き出した。


祥「祐巳。」

 不意にかけられた声に顔を上げると、何処をどう歩いてきたのかそこは薔薇の館の前。そして扉の前には祥子さまが立っていた。

祥「瞳子ちゃんと何かあったの?」
祐「ロザリオ・・・受け取ってもらえなかった」
祥「そう」
祐「どうしてなんだろう?私は、別に同情なんかで渡したわけじゃないのに。」

 泣きそうな表情でうつむく祐巳。そんな祐巳を見た祥子は

祥「落ち込まないで祐巳・・・。うん、まだ大丈夫。そうよ、祐巳にはまだいつものがんばりがあるじゃないの!」

 と言って励まそうとした。しかし、

祐「がんばり?」
祥「そうがんばりよ!」

 その一言で祐巳は心の中で張り詰めていたものが切れた気がした。

祐「も、」

 泣きながら崩れ落ちる祐巳。

祐「もう頑張りしか残ってない・・・!!」

 プツン!そんな泣き崩れる妹の姿を見て、今度は祥子の中で何かが切れた。

祥「祐巳・・・もう・・・いい。もう充分よ。できることはやったわ・・・瞳子ちゃんだけが一年生じゃないわ。とても無理よ!!元々無理だったの!!」
祐「・・・無理?」
祥「そうよ!!」

 祥子さまが、祐巳の肩に触れた。

祐「そんなことはないですわ・・・!!」
祥「!?」

 しかし、その祥子の手を振り解きゆらりと立ち上がる祐巳。

祐「祥子さま・・・悪いですがお姉さまの言うように諦める事は出来ません。」
祥「で、でも」
祐「まだこのがんばりが残っているうちはね。」

 負け犬のようだった祐巳の目に光が灯った!そして、

祐「まだ受け取ってもらえる可能性があるのにゴタクをならべている暇は私にはないんです!!」
祥「でもさっきまで・・・。」
祐「ようし・・・やるぞ!!やる気がわいてきた・・・!!
祥「う〜ん、もうっ!!」

 うぉぉぉと叫び声を上げながら薔薇の館のドアをあけて入っていく祐巳。

祥「まったく、あまのじゃくなんだから。」

 言われた事の逆を行こうとする妹を見送りながら、祥子はひとつため息を漏らした。


 祐巳が薔薇の館から出てくると、外には真美さんと蔦子さんが待ち構えていた。

真「新聞部です!」
祐「おう!」

 勢いに任せ、リリアンの生徒らしくない答え方をしてしまう祐巳。しかし、この勢いを止めてまで言い直す気にはなれない。いや、言い直すつもりも無い!なぜなら、今の祐巳は熱い魂に突き動かせらているのだから。

真「紅薔薇のつぼみ、祐巳さんに質問。妹候補ナンバー1の瞳子さんにロザリオを受け取ってもらえなかったそうですが、事を急ぎすぎたのではないですか?」
祐「事を急いだのは承知の上です!」
真「でもそれは少し無茶だったのでは?」

 真美の言葉に真っ直ぐな、そして燃えるような瞳で祐巳は答えた。

祐「私が無茶をさせているのではないです。強いてあげれば3つの条件・・・。」
真「3つの条件?」
祐「紅薔薇のつぼみの3つの条件が私に無茶をさせているのよ!!」

 いつに無い祐巳の迫力に真美も思わず強い口調で聞き返してしまう。

真「その条件とは・・・!?」
祐「一つ、紅薔薇のつぼみは、」

「イザというときにはやらなければならない!」

祐「ふたつ、今が、」

「イザというときである!」

祐「そしてみっつ。」

「私は紅薔薇のつぼみなんだぁ〜〜!!」

 後日、真美さんと蔦子さんはこの時、祐巳さんの後ろに稲妻をバックに仁王立ちする狸の画がはっきり見えたと語った。

(バックミュージック、水木一郎「炎の笑顔(漫画版逆境ナインのテーマ)」)


あとがき(H18/2月21日更新)
 すみません、石を投げないでください。m(_ _)m。えっと、今回のSSは昨年の12月30日の日記に書いた簡易SSに加筆修正したものです。と言っても、実際は普通に1本書き下ろす以上の時間がかかってしまったけど。

 読んでもらえば解ると思いますが、これは島本和彦先生の逆境ナインのパロディーです。(これはクロスオーバーとは言わないですよね。)元々、未来の白地図を読んでいる時にこんな事を考えていましたと言う意味で書いたものなのですが、私自身結構気に入っているにもかかわらず、この日の日記を読んでくれたのは30人ほど。流石にこれはもったいないなぁと思っていたので、加筆修正して1本のSSにしていました。

 ここにでてくる祐巳ちゃん達はマリみての祐巳ちゃん達とはかなりずれています。それもそのはずで、今作の祐巳ちゃん達には今野先生の魂ではなく、島本先生のやたらと熱い魂が宿っているのですから。ですから、一部の人には拒否反応を起こす人もいるかもしれません。そんな人たちにはここでお詫びしておきます。ごめんなさい。しかし、一部の(本当に一部であろう)このSSを面白いと思ってくれた方の為(と言うか、私自身の為)に書いたものなので許してやってください。今月末にはハッピーエンドを読むことができるでしょうから、この事には目をつぶる方向でお願いします。(笑)

 後、面白いと思ってくれた方は、web拍手やBBSの方に感想など書いてもらえると嬉しいです。

P・S
 最後にバックミュージックと書いてある我らがアニキ、水木一郎の「炎の笑顔」は本当にいい曲です。アニキのファンだけでなく、島本先生のファンの方は是非聞いてみてください。島本節と、アニキの雄叫びが完全融合した凄い作品になっているので。

マリみてSSページへ