しばらくして江利子さまたちが別室から帰ってきた。

 「それじゃあ、得点について説明するわよ。」

初めての合宿26

 「まずトランプの得点だけど、1位が5点、2位が3点、3位が2点、4位が1点で、5位と6位は0点ね。」
 「あれ?なぜ2位が3点なんですか?4点なら5位まで点数が入るのに。」

 普通に考えたら、ババ抜きのような最後に二人残ってしまうゲームをやる時は、最下位以外の人全員に点数を入れるのが普通なのに。この得点方式だと最後の二人は、たとえ勝ったとしても点数が入らないのに続ける事になってしまう。

 「確かにそう。だから私も始めはそうしようと思っていたんだけど、志摩子がね。」
 「志摩子さんが?」

 志摩子さんのほうを見ると、うなずきながらその趣旨を説明してくれた。

 「やはり1位の人にはそれ相応のアドバンテージがあった方がいいと思うの。ここでもし2位を4点にしてしまうと、それほど差がなくなってしまうから1位になった喜びもあまりないと思うし。」
 「そう言えばそうよね。」

 確かに点数が違えば1位になったうれしさも増すというものよね。

 「あっでも、5位と6位が同じ点数と言うのはおかしくない?」
 「ああ、それはね。」

 由乃さんの質問に志摩子さんを制すような形で令さまが答えた。

 「この後の説明でもあるけど、テニスでは複数の人が0点なのよ。だから問題が無いと考えたのと、ここで6位をマイナスにしてしまうとあまりに不利になってしまうでしょ。」
 「でも、それじゃあ最後までやる意味がなくなってしまうじゃない。」

 あくまで食い下がる由乃さんを見て、江利子さまがさも楽しそうな顔をしながら・・・。

 「そうね。最下位の人には何か罰ゲームをやってもらいましょう!」
 「ばっ罰ゲームぅ〜!?」

 江利子さまは由乃さんの発言を聞いて、「面白い事になった。」と言わんばかりに目を輝かせている。令さまたちもその発言に驚いている所を見ると、どうやら罰ゲームと言うのはあらかじめ決まっていたものではなく、たった今江利子さまが思いついた事のようだ。そして、それを見た由乃さんはと言うと・・・。

 「余計な事を言ったかもしれない。」

 由乃さん、いまさら後悔しても後の祭りよ・・・。

 「罰ゲームって、一体何をする事になるのでしょう?」

 由乃さんの様子を見て不安になったのか、瞳子ちゃんが恐る恐るそうたずねた。

 「う〜ん、そうねぇ。」

 顎に人差し指を当てるポーズで数秒考えて・・・。

 「ちょっとすぐには思いつかないわね、これは一時保留と言うことにしましょう。」
 「そうだ、祐巳さんと同じ格好をして、みんなの前でデュエットすると言うのは?」
 「えっ、私!?」

 志摩子さんたら、なんて事を言い出すのよ!私は別に何かに負けた訳でも悪い事をした訳でもないのに景品にされて、その上罰ゲームまでやらされるの!?はっ、でもお姉さまとなら普段は出来ないだろうし、ちょっとうれしいかも。(テレテレ。)

 「う〜ん、それはそれで面白いけど、一部を除いて罰ゲームにならないわよ、それは。」
 「罰ゲームにならない人がいる・・・と言う事ですか?」

 不思議そうに聞き返す乃梨子ちゃんに江利子さまは・・・

 「そうそう。ほら、ああいう人たちにはね。」
 「ああ、なるほど。」

 乃梨子ちゃんが納得したようなので、私も江利子さまが指し示した方向を見てみると・・・。

 「(ゆっ祐巳と同じ服を着て歌を歌う!)」
 「(ゆっ祐巳さんとペアルック!)」
 「(ゆっ祐巳さまと同じ衣装でを着て舞台に!)」
 「(ゆっ祐巳さまとツーショットで歌を!)」

 ???なにやら考え事をしているお姉さまたちがいる?でも、なぜ罰ゲームにならないんだろう?それに乃梨子ちゃんだけでなく、令さまたちまでうなづいているし。

 「と、ところで蓉子さまと聖さまはなぜ省かれているのですか?」
 「私は人前で歌うのはちょっとね。」
 「う〜ん、歌はともかく、さすがの聖さんでもその服はねぇ。祐巳ちゃん、私にロリータ服、似合うと思う?蓉子は似合いそうだけど。」

 聖さまのいきなりの爆弾発言に、すかさず蓉子さまは・・・。

 「何を言い出すのよ。どちらかと言うと西洋顔の聖の方が似合うと思うわよ。」
 「あれ?クリスマスの時うれしそうに頭に王冠載せていたじゃない。案外ああいう服も好きなんじゃないの?」
 「あのねぇ。」

 う〜ん、変な擦り付け合いはともかく、確かに蓉子さまと聖さまのおっしゃる理由は私にも納得できる。でも、それは他のメンバーにも当てはまるんじゃないかな?特にお姉さまは、人前で歌を歌うなんて考えられないし。

 「祐巳ちゃん、あまり深く考えない方がいいよ。」

 私が頭にはてなマークを浮かべているのを見て令さまがこう仰った。う〜ん、でも気になるなぁ。あとで・・・。

 「いくら解らなくても、祥子達には聞かないようにね。」

 また顔に出ていたのか、先に釘をさされてしまった。

 「えっと、聞かない方がいい事ですか?」
 「そう、お互いの為にね。」
 「???」

 よく解らないけど、そう言うことなんだろう。

 「さて、罰ゲームの話は後にして、テニスの点数を発表するよ。」

 江利子さまの言葉を合図にしたように、令さまが机の上に手書きの得点表を広げた。

 「まず優勝した蓉子は5点。以下、準優勝の聖が3点、2回戦で蓉子に敗れた祥子には2点、後、一回戦で負けたほかのメンバーはそれぞれ0点。」
 「基本はトランプ勝負と同じですね。」

 上位からの点数は同じで、一度も勝てなかった人は最下位と言う事で点数は入らない計算だ。

 「得点の計算方式はわかりました。けど、もし次のトランプ勝負でお姉さま(蓉子さま)が勝ってしまわれたら、その時点で結果が出てしまうのではなくて?」
 「その点は、ちゃんと考えているから大丈夫よ。」

 う〜ん、考えてあるって言うけど、それはもしかして・・・・。

 「大丈夫よ祐巳ちゃん、最後の対決の勝者に1万点とか言うベタな事はしないから。」

 ・・・また顔に出ていたのか、先に江利子さまに言われてしまった。私って、そんなに考えている事が解り易いのかなぁ・・・。


あとがき(H16/9月16日、更新)
 やっと修正が出来て、正式に更新となりました第26話。と言ってもあんまり変わってなかったりもしますが。(笑)

 私の場合、SSを書く時は一旦あらすじと簡単なセリフで下書きを書いて、それを読み直しながら肉付けをして完成させると言う方法をとっているのですが、12日にアップした仮更新版は下書きに少しだけ手を入れただけの物なんですよ。おかげでかなり言葉が足りない物になっていたと思います。

 ただ今回の話は、盛り上がる所が無いと言っていいような話なので、手を入れた後の改訂版を読んでもあまり面白くなっていないかもしれませんが。見せ場を作る為に、もう少し妄想にふけっている人たちを壊れさせてもよかったけど、そうするといかににぶちんの祐巳ちゃんでも気付きそうなので、祥子さまたちの名誉の為に、あの程度で済ませました。(笑)

 ところで修正前も書いていたとおり罰ゲームの内容は本当にまだ決めていません。ですから引き続きいい案があれば送ってもらえるとうれしいです。(と言うか、まだ一つも来てなかったりする。)

 ただ、前回も書きましたが、どじょうすくいとかマジックのように、祐巳ちゃん達が薔薇さま方を送る会でやったものは無し。後、同じ私のSSだけど、一応違うワールドなのでマツケンサンバUネタも無しの方向でお願いします。(と言うか、同じワールドだったら、これまた一部の人(特に聖さまあたりが。)喜んでやりそうだしね。)

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