ナザリックの居候 〜私の居場所〜
私の名前はロマーヌ、種族? はゴーストです。
と言っても生まれた時からゴーストだった訳じゃないのよ。
元はリ・エスティーゼ王国にある小さな村に住むただの娘だったの。
ではなぜ今ゴーストなんてやっているのかと言うと、収穫物をエ・ランテルに売りに行く途中でゴブリンに遭遇したから。
あっ、別に私一人で行動していたわけじゃないわよ、女一人でそんな危ない事するはずがないからね。
その日は村の男の人を含む10人くらいで3台の荷馬車を引いていたの。
で、そこに数匹のゴブリンが襲ってきたんだけど、私はその時はまだこの事態を結構楽観視していたのよねぇ。
だってゴブリンってそれほど強くない上に、その日は村でも数少ない剣が使える人が一緒にいたから。
でも、その日は私にとってよほどついていない日だったんだと思う。
それは何とそのゴブリンたちの中に魔法を使えるのが混じっていたからなんだ。
確かゴブリン・シャーマンだったかな? そんな名前を誰かが叫んでいたような気がするから多分そうだと思うんだけど、そいつが先制攻撃で範囲魔法を使ったみたいなのよ。
とは言っても所詮はゴブリン、殆どの人はせいぜい怯んだ程度でたいした怪我も負わなかったわ、ただ一人、私を除いては。
あっ、ここで言っておくけどこの魔法で私が死んだわけじゃないわよ。
唯一他の人と違ったのは私が無意識の内に相手の魔法を跳ね返してしまって無傷で終わり、そしてそのゴブリン・シャーマンが反射された魔法の直撃を受けて結構な怪我を負ってしまった事なの。
生まれてからその日まで普通の村娘として生活していたからからその瞬間までまったく知らなかったんだけど私、冒険者向けのタレントを持っていたらしくて、そのタレントの内容と言うのがどうやら魔力を含む攻撃を魔法、アイテムに限らず全て跳ね返すと言うものだったみたいなのよ。
これって凄いタレントよね。
もし予め解っていたら私は強い人の仲間になって、冒険者として歴史に名前が残ったかもしれないほどのタレントだもの。
でもさぁ、それはあくまで解っていたらの話。
そしてこのタレントが跳ね返すのは魔力を含んだ攻撃であって、ゴブリンが持つようなボロボロの剣やただ硬い木を削っただけの棍棒の前には無力な訳で。
味方のマジックキャスターを傷つけられたゴブリンが激昂して全員で私に襲い掛かり、私はあえなく昇天。
で、気付いたらゴーストになっていたと言う訳。
ところでさ、アンデッドになると生者を憎むようになるって言うあれ、どうやら魔力が絡んでるみたいなのよ。
不浄の魔力が精神に作用してそうなるみたいなんだけど、私のタレントはどうやら死んだ後も有功だったみたいで一向に生者を憎むようになる気配なし。
おまけに私はどうやら昼間でも行動ができるみたいなのよね。
と言うのも、私のようなゴーストが日の光を嫌うのは浄化の魔力が日光に含まれているかららしくて、これも例のごとく私には効かないから。
そして自分がなってみて初めて知ったんだけど、ゴーストはどうやら姿を見せない昼間は休眠しているみたい。
で、別にその休眠は絶対に取らないといけないわけではないけど、その時間を設けないと精神が磨り減って行くような感じがしたから昼間行動できる私は、夜をその時間に当てるようにしたんだ。
と言う訳で今の私はゴーストになったにもかかわらず精神は元のままで、なおかつ生活リズムもそのままなのよね。
でもさぁ、これって案外きついのよ。
人と言うのは群れる生き物だから一人だとどうしても寂しくなる。
でも、村とかに近づいたら大変な騒ぎになるのが解っているから普段は森とかでひっそりと暮らしているんだけど、だからこそ人が通りかかるとつい見に行きたくなっちゃうのよね。
先日も冒険者らしき人が来たから、そっと木の陰から観察していたんだけど、どうやらその中にカンの鋭い人がいたらしくて私は見つかってしまったんだ。
で、戦闘になったんだけど、私は実体を持たないゴーストだから普通の武器は素通りしてしまってまったく効かないの。
そして魔法も魔力の篭った武器もタレントのおかげでその威力は丸々相手へ跳ね返ってしまい、結果私はただ立っているだけだったのに、彼らは勝手に此方に攻撃して勝手に自滅してしまった。
とは言っても、誰かが死ぬ前に私は急いで逃げたから誰も死んでないと思うよ。
・・・死んでないよね? 特にあのマジックキャスターの人、なんか火の玉が跳ね返って爆発してたけど。
きっきっと大丈夫よ、後で気になって見に行ったけど死体は残ってなかったし、仲間に神官の人もいたみたいだから、きっと大丈夫! ・・・大丈夫だよね?
そんなある日の事。
私はいつものように森をふらふらと彷徨っていた。
するとこれまたいつものように冒険者らしき人を発見! でも、その人たちはちょっと変だった。
私が住んでいる森は結構深くて出没するモンスターもそこそこ強いから、普通は6人くらいで行動している冒険者が多いのよね。
なのにこの人たちはたった二人で行動しているんだもん。
それになんだろう? なんか変な感じがする。
なんと言うかなぁ、あの黒い鎧の大きな人、普通の人とはちょっと違うと言うか・・・なんとなく死の匂いがするのよね。
私もゴーストになって初めて知ったんだけど、アンデッドってみんな同じ様な雰囲気を纏っているの。
それを私は死の匂いって表現しているんだけど、あの人からもそんな感じがするのよ。
ただね、ゴーストやスケルトン、ゾンビとかならもっと強烈な感じが伝わってくるはずなのに、あの人からはほんのりとしか伝わってこない。
う〜ん、もしかしたらあの人は物凄い数のモンスターや人を殺しているから死の匂いを纏うようになったのかもしれないわ。
私にはよく解らないけど、エ・ランテルの宿屋の娘さんが「危険な香りがする人とか素敵よね」なんて言っていたからきっとそう。
「ん?」
「モモンさ、ぁーん、どうかなさいましたか?」
「うむ、どうやら誰かに見られているようだ」
あれ? どうもじっと見すぎたみたいで視線に気付かれたみたい。
でも、マジックキャスターや神官ならともかく、どう見ても戦士の人なのに私の視線に気が付くなんてすごくカンの良い人だなぁ。
野生動物やモンスターみたいに殺気があるのならともかく、私はただ見てるだけだからこの手の職業の人に視線を気付かれたのは初めてだ。
ちょっと残念だけど、こうなったからには仕方がない。
結構離れているから大丈夫だろうけど、気が付かれた以上念のためさっさと退散しないと。
あの人は戦士だからいいけど一緒にいる人は神官かマジックキャスターだろうから、まかり間違って魔法を撃たれたりしたら怪我をさせてしまうもんね。
そう思ってきびすを返そうとしたんだけど、どうやら遅かったみたいで。
「むっ、あそこですか。逃がしません! ライトニング!」
普通ならゴーストなんて倒しても何も落とさないから意味がないし、魔力の無駄になるだけだから見逃してくれると思ったんだけど、なんと黒い鎧の人の横にいた女性が私に魔法を撃って来たのよ。
それも物凄いスピードの雷のような魔法だったから、私程度が避けられるはずも無く直撃。
そしてその魔法はそのまま跳ね返って術者である女性に直撃してしまった。
・・・し、死んじゃったんじゃないかな? あの人。
だって凄い威力だったもの。
この森を彷徨うようになってから今まで色々な冒険者を見てきたけど、あれほどの威力がある魔法を見るのは初めてだった。
それだけに、その魔法が直撃して普通の人が生きていられるはずがないと私は考えたのよ。
そしてそれを肯定するかのように魔法を受けて横たわる女性の体からは煙が上がっていて、おまけにぷすぷすと何かが焦げるような音までしていたのだから。
ところが。
むくっ。
「なっ、ライトニングを跳ね返すとは!? ただのゴーストではありません。モモンさん、危険ですから私の後ろにお下がりください」
その女性はむくっと起き上がると、黒鎧の戦士の人の前に立ちふさがるようにして此方を警戒しだした。
これにはホントびっくり。
あれを耐えるなんて、なんてタフな人なんだろう。
もしかしたらあの人も何かのタレント持ちなのかもしれないわね。
あっと、感心してばかりはいられない。
ここにとどまっていたらまた魔法を撃ってくるかもしれないし、そうなったら今度こそあの人を死なせてしまうかもしれない。
あれだけの攻撃魔法を撃つことができて、その上その魔法を受けても立ち上がれるほどの人なんだもん、こんな所で死んで良い人ではないからね。
そう思って私は今度こそ、きびすを返した。
■
「遠くから監視している事実と、ナーベラル・ガンマの魔法をあそこまで見事に跳ね返して見せた手腕からプレイヤーではないかと思ったが・・・時間対策をしていないところを見ると違うようだな」
いや、フェイクという可能性もあるか。
そう考えて念のためゆっくりと近づいてみるも、そのアンデッドは固まったまま。
どうやら本当に止まっているようだ。
その時、ふとついてくる足音が聞こえない事に気が付いて振り返ると、何とナーベラルまで止まってた。
ああそう言えば鎧で隠せる俺と違って彼女は今、一般冒険者の振りをする為にステータス偽装の指輪以外の身元がばれるような装備ははずしているんだっけ。
ならわざわざ支配者口調で話さなくても良いな。
「さて、どうするかな。普段なら即死魔法なり極大魔法なりを時間停止解除のタイミングで発動させるんだけど、先程の魔法反射がどの程度の魔法まで適応されるか解らない以上迂闊な事はできないし」
この世界の有象無象の放った魔法ならともかく、俺自身の魔法がそのままの威力で跳ね返ってくるような事があれば、ただではすまないだろう。
そしてそれがトゥルー・デスのような即死魔法なら、この世界ではもう手に入らない貴重な身代わりアイテムを一つ無駄にする事になってしまう。
「魔法は悪手かな」
そう考え、自分が背にしているものを抜き放つ。
これは魔法の籠められた武器ではないけど、魔法で作られた武器だからワイトなどの物理無効のモンスター相手でもダメージを与えられるはずだ。
「試してみるか」
■
・・・んだけど、私はそこでとても驚く事になった。
だってそこには、さっきまで遠く離れた場所にいたはずの黒い鎧を着た戦士の人が立っていたんだもん。
そして。
「ふん!」
剛剣一閃。
私は一瞬にして彼が先程まで背負っていた大きな剣で真っ二つに斬られてしまった。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・って、あれぇ? どこも痛くないよ?
っ! ああそうか、私、ゴーストだから普通の剣で斬られてもダメージは受けないし、本来ゴーストを斬る事ができるはずの魔法の武器もその威力を全て跳ね返す事ができるんだっけ。
ああびっくりした、あまりの迫力に思わず死んじゃったかと思ったわ。
まぁ、もう死んでるんだけど。
「この剣でもダメか」
すぐ横から聞こえたその呟きに私は我に返って戦士さんの方を見ると、彼の持っていた物凄く強そうで高そうな剣が真っ二つに折れていた。
そして、その光景を見た私は顔からさぁ〜っと血の気が引いて行く。
いや、もう血はないんだけどね。
「ごめんなさい!」
そして、つい反射的に腰を90度以上曲げて謝ってしまう私。
だっていくら強力なタレントを持っているとは言え、私は所詮はただの元村娘でしかないもん。
そんな私の頭の中はこの時、こんな高そうな剣を折ってしまったことに対する罪悪感で一杯になってしまったんだ。
「なぜ謝るのだ? 私はお前を葬ろうと剣を振るい、お前はそれを防いだだけの事ではないか」
あっ、あれ? そう言えば私、なんで謝ってるんだろ? 確かに何も悪くないよね。
でもさぁ、
「でっでも、私が折った事には変わりないし、それにその剣、ものすごく高そうだし・・・」
小心者の私は、この剣を折ってしまった事でこの人がこれと同等の剣を買うために支払う事になるであろうお金を考えると、どうしても申し訳ないという気持ちしか湧いてこなかったんだ。
「変わったゴーストだ。此方の攻撃をすべて無力化するほどの防御力を持ちながらこの態度。その上・・・おい、お前。もしかして生前の記憶を持ち、なおかつ生きている者に対しても憎悪を抱いていないのではないか?」
「えっ? はい、どうやら私、魔力に対して絶対耐性のタレント持ちだったらしくて、不浄の魔力に侵されずにすんだみたいなので・・・」
「なるほど。ただのゴーストではないと思ったが、レア物だったと言う訳か」
ふむふむと、顎に手を置いてなにやら一人納得するように頷く黒鎧の戦士さん。
その上、なにやら嬉しそうに笑っているみたいだし、一体どうしたんだろう?
「それでお前はなぜこちらを見ていたんだ? その様子からすると、私たちを襲おうとしていたわけではあるまい?」
「えっと。私、ゴーストになったんだけど、体以外は生前と殆ど何も変わってないんです。だからずっと一人でいると、どうしても人恋しくなってたまにこうして通りかかる冒険者の人を見るのが唯一の楽しみになっているんですよ。だから今日も気付かれないようにそっと遠くから見ていたんですが」
「ふむ、だからこんな遠くから我々を観察していたのか」
そう言うと黒鎧さんは、ぶつぶつとなにやら独り言を始めてしまった。
小声「なるほど、ただ寂しがり屋だったと言うだけか。あっでもこの子、この様子なら誘えばナザリックに着いて来るんじゃないかな? レア物の上に、この子はNPCたちと違って俺を崇拝しているわけじゃないから、ナザリック内で普通に接してくれる唯一の存在に成り得る可能性もあるし・・・よし、スカウトしよう」
う〜ん、流石にここまで小さな声で喋られると何を言っているんか解らないなぁ。
と、そんなことを考えていると、
「アインズ様! お下がりください!」
いきなり先程の女性が割り込んできた。
あれ? なんか着ている服も変わってるみたい。
こんな森の中には不釣合いな・・・そう、ドレスのような鎧を身に纏っていて、先程までは持っていなかったはずの銀色の杖まで持っていた。
「えっと、あの、私は・・・」
「ああ、そう言えば。ゴホン、ナーべラル・ガンマよ。なぜ私の許しを得ずにその姿になってる! それに今の私はアインズ・ウール・ゴウンではない。エ・ランテルの冒険者チーム、漆黒のリーダー、モモンだ。間違えるな!」
「もっ申し訳ありません、アイ・・・モモンさん。すぐに元の姿に戻ります」
「まぁよい。ここでは誰も見てはいないようだから、今回だけは不問としよう。だが以後は気をつけるのだ。我々が本来の姿を隠すのは、隠れているであろう外敵を油断させ、おびき寄せると言う意味もあるのだからな」
「はい、モモンさん」
なにやらよく解らないけど、この人たちはどうやら仲間ではなくて主従みたいだね。
だって、ナーベラル・ガンマって人がモモンって人に傅いているもの。
ん、待てよ? って事はもしかしてこの黒鎧の人って物凄く偉かったりするのかな? だとしたら私も傅かないといけなかったりするんじゃない?
そう思い立った私は慌てて平伏した。
まさに、はは〜ってなもんである。
長いものには巻かれろ、偉い人には傅くどころか額を地面に擦り付けてひれ伏せ、それがしがない村娘であった私の認識だったりするからね。
ところが、
「おい、お前まで何をやっているのだ?」
「平伏していらっしゃるのでございますです、はい」
きっと敬語とやらを使わないといけない相手なんだろうけど、あいにく私はそんな物は知らないので、とにかく丁寧だと思う言葉を並べてみる。
「どこの言葉だ、それは。それにお前は何時から私のシモベになったのだ? 私とは何の関係も無いのだから普通にしていれば良いだろう」
ところが、この口調が気に入らなかったようで、怒られてしまった。
そう言えばこの黒鎧の人、さっき身分を隠しているみたいなことを言っていたっけ。
なら横でこんな村娘ゴーストが平伏していたら返って迷惑か。
「へへへっ」
私はそう思いたち、自分の行動の恥ずかしさのあまり、へらへらと照れ笑いを浮かべなから立ち上がった。
「うむ、それでよい。ところで提案なのだが、お前、一人でいるのは寂しいと言っていたな。ならば我がナザリックへ来る気はないか?」
「私が、ですか? でも、ゴーストが人里に出て行っては大騒ぎになるんじゃ・・・」
「なるほど、言葉足らずだったな。それに関しては心配ない、なぜなら私は」
そう言って黒鎧の人は兜を取った。
その下から現れた顔は何と骸骨。
スケルトンにしては迫力がありすぎるから私の知らないもっと高位のアンデッドなんだと思うけど、有名なエルダー・リッチとは多分違うと思う。
だってあれは確か魔法使いがなるアンデッドで、戦士ではないからね。
ゴブリンにはゴブリンキングなんてのがいるらしいから、もしかしたらスケルトンにもスケルトンキングなんてのがいるのかもしれないし、そうじゃなかったとしてもこの骸骨さんなら何とかキングって名前の種族なんじゃないかな? うん、きっとそうだよ。
口調とかもなんとなく王様ぽいもん、この人。
「アンデッドの人だったのですか。では、そちらの女の人もアンデッドなんですか?」
「いや、ナーベラルはドッペルゲンガーだ」
ドッペル何とかってなんだろう? アンデッドじゃないって事は何かのモンスターなんだろうか? でも人にしか見えないし。
そんな風に私が戸惑っていてもお構い無しに骸骨の人の話は続く。
まぁ偉い人みたいだから、こっちの都合なんてお構いなしでも問題ないどころか、むしろ当たり前の事ですらあるんだけどね。
「とまぁ、見ての通り我々は人間種ではない。そして先程話した我が城、ナザリック地下大墳墓は異形の者たちが住む場所だ。そこにはお前のような不定形アンデッドもたくさんいるからここと違って安心して住む事ができるだろうし、他にも色々な種族が住んでいるから寂しい思いをする事もないであろう。どうだ、来る気はないか?」
異形の者ばかりって所が少し怖い気もするけど、少なくとも一人ぼっちで彷徨わなくてもよくなると言うのは願っても無い話だ。
でも、
「私みたいなものが行っても良いんですか? 私は確かにゴーストですが、中身はただの村娘のまま。それにそちらの女の人のように強力な魔法が使えるわけでも無いし、生きてる頃はゴーストなら当たり前にできると思っていたポルターガイスト現象も起せない上に物に触る事さえできないから何の役にも立たないよ、です。あと、丁寧な言葉も知らないから失礼な態度を取ってしまうかもしれないし・・・」
「構わん、許す。言葉遣いなど些細な事だ。それに我が強大なナザリックに一人位役立たずの居候が彷徨っていても、それもまた一享だろう。そうだ、お前は先程物に触ることができないと言っていたな。それならばどこに居ようと何かを壊す心配もあるまい。特別にナザリック内のどこを彷徨っても構わない許可も出してやろう。存分に彷徨うが良い」 小声「この許可を出しておけば俺と二人きりで小部屋にいるところを見られたとしても、誰からも咎められる事がないからな」
そう言うと、モモンさんはナーベラルさんに言葉を掛けた。
「ナーベラル・ガンマよ。一旦ナザリックに帰還する。その際、先程私が言った事をナザリック内に通達するよう、アルベドに伝えよ」
「解りました、アインズ様」
ああ、冑をとって素顔を晒している時は、モモンさんじゃなくてアインズ様なのね。
「では行くぞ。ん? そう言えばまだ聞いていなかったな。居候ゴーストよ。お前、名前はなんと言うのだ?」
「ロマーヌって言います、アインズ様」
こうして私は今、ナザリック地下大墳墓と言う場所に居候している。
そこは村娘時代からしたら考えられないくらい豪華な場所で、と同時にとんでもないくらい危険な場所なんだけど、
「それでさぁ、この間パンドラの奴がとんでもない事を言い出しやがって」
「またですかぁ? この間ちゃんと注意したって言ってませんでしたっけ?」
私はなんとそんな凄い所の支配者であるアインズ様の愚痴聞き係になっている。
その上光栄なことに、二人きりの時はこうしてタメ口を叩いても良いと言う許可まで貰ってるのよね。
どうやらアインズ様はここに住んでいるほかの人の前では支配者として君臨しなければいけないらしいの。
で、大きな精神的ストレスなら種族特性で消えるんだけど、この様な何かに気を使うみたいな小さな物は適応されないからストレスがたまってるんだってっさ。
だから私はそのはけ口と言う訳だ。
でも、そんな生活でも私は満足している。
だって、もうあの寂しくて仕方がない生活には戻りたくないもん。
「なぁロマーヌ、聞いてるか? だからさぁ」
「はいはい、ちゃんと聞いてますよ、アインズ様」
完
後書きです
すみません、外伝は4で終わりといっておきながら外伝ですらない物を書いてしまいました。
思いついたら、どうしても我慢できなかったもので。
因みに此方は読んでもらえば解る通り書籍版を基にしています。
この話を思いついたきっかけはタレントがあるのは人だけなんだろうかというところでした。
もしモンスターにもあるのなら、そしてそれが強力なものだったらどうなるんだろうと考えている内に、これは強すぎてただの最強物になってしまいそうだと思って、どうやったら弱体できるかなと頭を捻った結果、魔法、物理両方に絶対の防御力を持つにもかかわらず、自身の攻撃力は皆無と言うキャラが生まれた次第です。
本文でゴーストならポルターガイスト現象ができると思っていたとロマーヌが言っていますが、ポルターガイスト現象を起せるのはポルターガイストだけですw
そしてホラータッチのようなエナジードレインが使えるのはワイトなど強力なアンデッドだけです。
ゴーストって名前の通り幽霊で、実は本当に何の力もない存在なんですよ。
生者を憎むようになれば不の感情でいずれワイトのような存在になれたかも知れないですが、彼女はそんな風にもなれないので、ずっとこのままだったりします。
まぁ、ナザリックの中に一人位役立たずで無力な存在がいても良いですよね?
さて、この話ですが今週は番外編として先週分の後に置いていますが、ボッチプレイヤーとは関係ないので来週分をアップする際に下にあるとんでもスキルとのコラボの下に移動させます。
また、ハーメルンの方へも次の週末辺りに単発の短編として投稿するつもりです。
感想欄、荒れないと良いんだけどなぁ。