「遅いっ。」

 玉逃げに出るために入場門まできたら由乃さんに遅いと怒られてしまった。蔦子さん曰く「姫はご機嫌斜め。」だと言うのだ。

恋せよアミーゴ!

 「令ちゃんの格好、見た?」
 「え?いや、まだ。」
 「何か、もう、って感じ。」

 由乃さんの話からすると、ご機嫌斜めの原因はどうやら令さまの格好にあるらしい。それを本人にぶつけられないでおなかにためているので、ちっとしたでも腹が立ってしまうと言う状態なのだ。

 「どんな姿だったの?」
 「カナリア祭りで浮かれてカーニバルよ。」
 「か、カナリア?」

 その表現に思わず「どんなのだろう?」と黄色チームの応援席を見ようとしたら、由乃さんに頭をつかまれグルリと回された。

 「武士の情けじゃ。祐巳どの、せめて私の前では見ないでくだされ。」

 そこまで言われては見るわけにもいかず(逆らった時の由乃さんの報復も怖いしね。)結局この時は令さまの姿を見る事は出来なかった。


 そしてプログラムは進み、いよいよ応援合戦!応援の順番は現在の順位が下の方から行われ、赤チームのカルメン、お姉さまを含めた応援団スタイル(お姉さま、凛々しい!)の我が緑チーム、ピンクチームの桃太郎、白チームの鳩・・・じゃなかった天使、志摩子さんを中心とした紫チームの藤娘を経て、いよいよ現在トップの黄色チームの応援の番が回ってきた。

 由乃さんに「見ないで。」と懇願されていた令さまの格好、でも応援合戦ともなれば見ないわけにも行かない。どんな格好なのだろうと期待を込めて見守る中、、先ほどの紫チームの艶やかな舞によって感嘆のため息に満たされた会場の雰囲気を一変させる、軽快な音楽がスピーカーから流れてきた。

 チャッ!〜チャッ!〜チャッ!〜♪

 「(ヒクッ!)こ、この音楽って!」

 どこかで聴いた事のある明るいリズムが響き渡り、登場したのは派手な黄色・・・と言うか、金色のスパンコールの衣装に身を包んだ令さまたち。そしてかかった曲と言うのが・・・。

 叩けボ〜ンゴ、響けサ〜ンバ、踊れ南のカルナバルゥ〜♪

 「マツケンサンバUだぁぁぁぁ〜〜!」

 流れてきた曲はまごう事無きマツケンサンバU。それもカラオケバージョンを令さまがヘットセットマイクをつけて歌うと言うおまけ付きだ。その軽快なサンバ(?)のリズムに合わせて令さまを中心とした黄色チームの応援団が踊っている。

 「カナリア・・・と言うよりフェニックスって感じ。」
 「そうとも言えるわね。」

 もう由乃さんはそちらを見ようともしない。それに対して凄く楽しげに歌い踊る令さま。チーム全体がラテン(?)ののりで、盛り上がってる。

 「令ちゃんたら、薔薇さま達を送る会で聞いて以来、マツケンサンバUにはまってしまったのよ。でもまさかこんなところでやるなんて。」
 「悪くはないと思うけど。」
 「祐巳さんは、自分のお姉さまじゃないからそんな事が言えるのよ。」
 「そ、そうかな?」
 「そうよ。想像して御覧なさいよ。」

 で、素直に想像してみたけれど、浮かんできたのは「こんなのできるわけないじゃない。」と衣装を投げ捨てるお姉さま。

 うん、確かに。

 そっちの展開の方が、むしろありそう。と、学ラン姿のお姉さまを横目で眺めながら思っていたら、お姉さまがいらだたしげに一言つぶやいた。

 「まったく令ったら。」

 ああ、お姉さまもこれにはあきれているのかな?などと思っていると、お姉さまは続けてとんでもない事を言い出したのだ。

 「ケンサンバUなのだから、黄色チームじゃなく、緑チームがやるべきものでしょう。」

 前言撤回。お姉さま、やる気まんまんです。思いつかないでくれてよかった。

 「由乃さんの気持ち、解ったような気がする。」
 「・・・でしょ。」


 そんなこんなで曲もクライマックスに近づき、会場のボルテージも最高潮。

 「あぁ〜あ、恋せよアミ〜ゴ♪」
 「(ズキューン!)ああ、黄薔薇さまぁ。」(フラフラァ〜、ドサッ!)

 「踊るセニョリ〜タ♪」
 「(ズキューン!)令さまぁ〜。」(フラフラァ〜、ドサッ!)

 令さまが歌詞に合わせて応援席に向かって指差しながら流し目をするものだから、それに直撃された(と思った)生徒が次々撃沈。その他の生徒も令さまに振り向いてもらおうと身を乗り出して手を振るものだから、応援席は大パニック。

 「まるでコンサート会場ね。」
 「令ちゃんたら!まったく我が姉ながら情けない。見てよあの楽しそうな顔。」

 会場の興奮に煽られて手を振る令さま。そして最後の決めポーズ!

 イ・エ・ロ・ォ・サ〜ンバァ〜・・・オレッ!

 令さまが片手を高く掲げた所で曲は終了、学園は大歓声に包まれた。そしてその歓声はまさに大地を揺るがさんばかりだった。

 ・・・大丈夫なんだろうか、この学園。


あとがき
 踊るセニョリーターに引き続き、マツケンサンバSS第2弾です。見てのとおり、舞台はレディ、GO!で、今度のメインは令さま。(ファンの方、怒らないでね。)因みに題名の順番が本来の歌詞と逆なのは、内容で決めたからです。

 こちらもすぐ思いつきました。と言うか、マツケンサンバUのPVで松平健の流し目を見た時、「令さまがやったら似合うだろうなぁ。」などと思っていたから、前作より先に思いついていたんですよね。

 とりあえず、これでマツケンサンバネタは終わりのつもりなんだけど、書いていて結構楽しかったのでもしかすると思いつきで別キャラの話も書くかも。やっぱりマリみてメンバーが壊れていくさまは書いていて面白いですからね。(爆)、

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