「祥子もそう思うでしょ?」
 「えっ?あっ、はい。」

 いきなり話を振られたお姉さまは他事を考えていたのか、曖昧な返事を返す。そう言えば、私がこんな目にあっているといつもは助けてくれるのに・・・。

初めての合宿外伝 妄想

 もうすぐ試合が始まる。

 「絶対負けない。」

 そう、本来なら当然の権利であるはずの祐巳との同室、こんな事で奪われてたまるものですか。

 「あのぉ〜。」
 「みんなそろっているわね?」
 「もしもし、江利子さま・・・。」

 あら?祐巳も来たみたいね。

 祐巳の声に気付いて振り返った瞬間、私の全身を稲妻が貫いた。

 「ゆ、祐巳が!私の祐巳が!」

 なんて可愛いの!まるでお人形さんのよう。おまけにリボンでパッケージングまでされて!

 私の目は白とピンクを基調とした、かわいらしいゴシックロリータ風の服を着た祐巳に釘付けになった。

 「はっ!」

 はたと気が付き蔦子ちゃんの方を見ると・・・。

 「(ばっちりです、祥子さま。)」

 すでに数カットカメラに収めたのか、こちらに向かって親指を立てている。

 「流石は自称写真部のエースね。」

 この写真を元に、後でお抱えの業者に新たな人形を作らせなくてはいけないわね。あと、当然抱き枕も!そうそう、海洋堂とか言う業者がガレージキットとか言う人形もどうかとこの間言って来たし、そちらも試しに作らせようかしら。

 「祥子もそう思うでしょ?」
 「えっ?あっ、はい。」

 ビックリしたぁ、何の話かしら?

 「祥子、気持ちも解らない事無いけど祐巳ちゃんの格好見て呆けてると試合、負けちゃうよ。」
 「れっ令、私は別に」
 「はははは。」

 笑いながら令は審判席に行ってしまった。それにしても、よりによって呆けているだなんて!確かにそうなのだけど・・・。

 令と話しているうちに祐巳達の会話がどのような流れになっていったのかは解らないけれど、志摩子が祐巳のリボンを頭の部分を残してほどいてしまった。あんなに可愛かったのに、なんてもったいない事をするのかしら。

 「頭にはリボンを巻いたままなのね・・・。」
 「それはそうよ。景品にはリボンは付き物ですもの。」

 けっ景品!?どっ、どう言う意味なの?まさか私が呆けている間に同室だけではなく、祐巳そのものがもらえると言う話になったと言うの!?

 「はぁ・・・。」

 突然のため息に振り返ると、そこにはお姉さまがいらっしゃった。

 「祥子、その妄想癖、治した方がいいわよ。」
 「はい・・・。」

 お姉さまの目が「もらえる訳無いじゃない。」と語っていた。哀れみを含みながら・・・。

妄想番外編 令さまの場合

 祐巳ちゃんがやたらと可愛い姿で現れた。

 「白とピンクのゴシックロリータにリボンかぁ。」

 由乃にあの格好をさせたら可愛いだろうなぁ〜。

 「令ちゃん。」

 それで「令ちゃん、どう?似合うかなぁ。」なんて上目遣いで言われたりしたら・・・。

 「令ちゃんたらぁ。」

 おまけに「私がプレゼントよ。」なんて言いながら微笑まれたりしたらもう!

 「令ちゃん、聞いてるの!」
 「はっ、よっ由乃!?」
 「令ちゃん、凄く熱心に祐巳さんの事見てたわよね。」
 「そ、それは・・・。」

 思わず口ごもってしまった私に、由乃の癇癪が炸裂した。

 「さっきも祐巳さんの同室争奪戦に立候補してたし、私なんかより可愛い可愛い祐巳さんの方がいいのよね。」
 「ごっ誤解だよ!私はただ・・・。」
 「令ちゃんなんか知らない!」
 「由乃ぉ〜。」

 平謝りに謝って(それこそ土下座するくらいの勢いで。)、何とか由乃に許してもらえた。

 「よかった、またロザリオ叩きつけられたらどうしようかと思ったわ。」

 そんな苦労を他所に、親友の祥子と来たら愛しの妹のかわいらしい姿を見て・・・。

 「祥子ったら、あんな緩みきった顔してるし。」

 そんな顔を見ていたら・・・。

 「祥子、気持ちも解らない事無いけど祐巳ちゃんの格好見て呆けてると試合、負けちゃうよ。」

 と、つい一言余分な事を言ってしまった。おかげで少し気が晴れたけどね。


あとがき(H16/8月28日)
 読んでいただくと解るように初めての合宿第18話と対となる外伝です。

 始めはもっと早く書くつもりだったのですが中々まとまらず、そのまま時間が経ってしまったので、どうせ遅れたならテニス対決が終ってからアップしようと思った為にこんな時期になってしまいました。

 時間があったにもかかわらず面白くないのは私の文才が無いからです。ネタ的にはもっと面白くできるはずなんだけどなぁ。

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