「そうだ、祐巳さんと同じ格好をして、みんなの前でデュエットすると言うのは?」
「う〜ん、それはそれで面白いけど、一部を除いて罰ゲームにならないわよ、それは。ほら、ああいう人たちにはね。」
「ああ、なるほど。」
志摩子さんのとんでもない提案に対して、江利子さまが出した結論とそれに伴なって指差さされた方を見た乃梨子ちゃんは納得したようにうなずいた。
祥子さまの場合
「ゆっ祐巳と同じ服を着て歌を歌う!いえ、そんな人前で歌を歌うなんて・・・でも祐巳と!」
確かに歌を歌うと言うのはちょっとどうかと思うけれど、祐巳と一緒にと言うのなら蔦子ちゃんに写真を撮ってもらえるわね。それどころか映像に残すのも可能だわ。
「ふふふ。」
いけない、考えただけでほほが緩んでしまう。でもそうなると前もって準備が必要だわ。祐巳との始めての共同作業なのだから簡単なビデオカメラなどではなく、ちゃんとした設備と衣装を用意しなくてはいけないし。
「やはり今からデザイナーを呼び寄せるべきかしら・・・。」
そうだ、例の海洋堂とか言う所が言って来たガレージキッドとか言うのも作らせましょう!二人で同じ服を着て並んでいる姿の人形なんてこの機会を逃せば作れそうに無いし。ああ、また新しい祐巳コレクションがわたくしの手に。(うっとり)
「あの子ったら、勝ったら祐巳ちゃんにキスしてもらえるのに負けたときの事ばかり考えてそうな顔ね。ほんと、祐巳ちゃんの事となると何も見えなくなってしまうのだから。」
すっかり遠い世界に行ってしまった妹を見てつい苦笑してしまう蓉子さまであった。
由乃さんの場合
「ゆっ祐巳さんとペアルック!」
祐巳さんと同じ服を着る機会なんて制服や体操着を着るくらいしか今まで無かったわよね。私たち親友なのにそんなんじゃダメだわ。それに、今以上に仲良くなる為には、息を合わせるために歌を一緒に歌うと言うのもアリね。
「いえ、アリどころか必然よ!」
仲のいい二人が同じ服を着て歌を歌う。それこそ真の友情よ。蔦子さんにいっぱい写真をとてもらって、ついでにそれをリリアンの学園祭でパネルにしてもらえば私たちは公認の仲!祐巳さんってこの頃1年生に人気があるみたいだけど、誰にも渡さないんだから!!!
「由乃が・・・由乃が違う世界に行ってしまってる・・・。」
自分の妹が自分以外の子の事だけを考えて遠い世界に旅立っている姿を見て、どうにも悲しい気持ちになっている令さまであった。
「由乃ぉ〜、帰ってきてよぉ〜。」
瞳子ちゃんの場合
「ゆっ祐巳さまと同じ衣装を着て舞台に!」
いや、別に祐巳さまと一緒に歌いたいなんてことじゃなくて、祐巳さまなら舞台に立った時とても映えるだろうし、その横に瞳子がいれば相乗効果でその輝きがきっとより一層際立つはず。
「そっそれに、学園祭ではきっと祐巳さまと同じ舞台に立つ事になるでしょうから、前もって並んだ時の画とかを確認しないといけませんわ。」
そうよ、別に一緒の衣装を着たいとか、二人の世界に浸りたいとか、歌っている時は私のことだけ考えてくれるとか、祥子お姉さまの位置と取って代わりたい、祥子お姉さまが邪魔だなぁ、祐巳さまは私だけのものなのにぃ!とか考えているわけではないのよ。確かに祐巳さまと今以上に仲良くなりたいと言う気持ちがないとは言わないど、それとこれとはまた別の話で・・・・。
「完全に自分に言い訳している顔ね、あれは。」
友達の顔が照れたような顔になったり、すねたような顔になったりするのを横目で見ながら冷静に分析する乃梨子ちゃんだった。
可南子ちゃんの場合
「ゆっ祐巳さまとツーショットで歌を!」
それも同じ服を着てだなんて。そうしたら当然蔦子さまにツーショット写真を撮ってもらえるわよね。それにそれに・・・あっ!
「いっいえ、私は祐巳さまの事は別になんとも・・・」
そう、好きとかじゃなくて・・・えっと、つまり、そのぉ〜・・・そっそう、ただ一緒に写真を撮って欲しいだけなのよ。写真の中の祐巳さまは私のあこがれていた頃の可憐で清楚な祐巳さまのままだろうし、今の祐巳さまと一緒に何かがしたいとかそう言うのじゃなくて・・・でもちょっとしたいかな。特に一緒の服を着て町を歩けたりしたら!それに歌っている時にあの祐巳さまの大きな目で見つめられたりしたら私っ・・・。(てれてれ)
「ハァ、瞳子も瞳子だけど、可南子さんもかなりあっちの世界に行ってしまっているわね。」
これまた顔を赤くしてブツブツなにやらつぶやいているもう一人の友人を見ながら、どうして私の友人はこうも妄想癖の人が多いのだろうかと、ただただため息をつく乃梨子ちゃんであった。
番外その1
「乃梨子ったら、きっと瞳子ちゃんたちの事を見ながら妄想癖がある友人をもって大変だなんて思っているんでしょうね。でも・・・。」
乃梨子もかなり妄想癖があるのよね、などと考え、そんな妹を可愛く思う志摩子さんであった。
番外その2
「う〜ん、ペアルックでのデュエットはなさそうか、残念。誰との組み合わせになってもいい写真が取れそうだったのに。」
この案が通らず、一番残念がっているのは、祥子さまでも、由乃さんでも、瞳子ちゃんでも、可南子ちゃんでもなく、蔦子さんなんだろうなぁ、やっぱり。(作者談)
あとがき
私のぎっくり腰で大幅に更新が遅れた初めての合宿外伝、夢想。いかがだったでしょうか。
これは26話の時の感想でどなたかが(プレゼさんだったかな?)もう少し妄想を書いて欲しかったと書かれていたのを見て書こうと思った話なんですよ。でもいざ書いてみると、4人も妄想しているキャラがいるから結構大変でした。
どうしても内容がかぶりがちなんですよね。本来祥子さまが考えている舞台を映像で記録するなんて言うのは瞳子ちゃんが考えそうだけど、そうなると祥子さまが薄くなる。それと、瞳子ちゃんと可南子ちゃんは基本的にスタンスが同じだからこれまたかぶるんですよね。
そして何より困ったのが由乃さん。書いているうちに内容がかなり危ない方向に行ってしまったので(18禁までは行かないけど、ラブビーム出まくりになっていました。)オール没にして書き直したらこんな文章になってしまった。ちょっともったいなかったけど、祐巳さん好き好きラブ・ビ〜〜ム!(神谷明調)状態のままだと令さまがあまりに不憫で不憫で。(笑)
そんなこんなでちょっと中途半端な感じもする話になってしまいましたが、それは私の実力の無さのせいなので許してやってください。
また、ここでこんな話を入れて欲しいなと言う意見があればBBSがwab拍手に書いてもらえるとうれしいです。(特にBBSに書いてもらえるとかなりうれしいです。)全て書くとは言えませんが、書けそうな案は取り入れていこうと思っているので。