「仮面ライダー島津由乃は改造人間である。彼女は生まれながらの重い心臓病により瀕死の状態に陥ったが、小笠原コンツェルンの手によって改造手術を受け仮面ライダー由乃としてよみがえったのだ!」
「えっと・・・由乃さん、これは一体何の冗談でしょうか?」
ここは薔薇の館の二階。外からは生徒達の楽しげな声や合唱部の美しい歌声などが遠くから聞こえる一見平和な午後なのに、なぜかここだけがちょっと異様な雰囲気。と言うのも私、福沢祐巳は机の上に縛られ、その横で親友であるはずの島津由乃さんが訳のわからない事をブツブツとつぶやいているからだったりする。
「私の記憶が間違っていなければ、ついさっきまで由乃さんの入れてくれたお茶を飲んで楽しくおしゃべりをしていたような気がするのですが?」
「ええ、そうよ。何も知らず睡眠薬入りのお茶を祐巳さんはおいしそうに飲んでくれてたわ。」
オイオイ、そんな事をさらっと言いますかあなたは。
大体なぜにあなたは制服の上から白いポンチョを着ているのですか?おまけにマスクと白い手袋までして。
「えっと、なぜ私は由乃さんに睡眠薬を?おまけになぜ机の上?」
「それは仮面ライダーは1号だけでなく2号やV3もいるからよ。フフフ。」
またも訳のわからない事を。なんですか由乃さん、その笑みは。ちょっと怖いんですが・・・。
「話の意味がよくわからないのですが?なぜ仮面ライダーが・・・」
「仮面ライダー島津由乃は改造人間である。彼女は生まれながらの重い心臓病に・・・」
「そこにもどるんかい!」
いけない私としたことがこんな言葉遣いを。こんな所をお姉さまに見られたらまた怒られてしまう。まぁ、それ以前に縛られている所を見られただけでとんでもない事になるだろうけどね。
「いえ、それはわかったけど由乃さんが受けたのはただの心臓手術で改造手術じゃないんでしょ。それに手術したのも普通の病院でお姉さまの会社じゃないし。」
「いいの、その方が面白いから。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あのぉ〜、もしかして私は面白いから縛られてるのでしょうか?」
「そうよ。」
「・・・・・・」
「それと祐巳さんには今日から仮面ライダー祐巳(2号)になってもらう事が決定しました!」(パチパチパチ)
なにこれ以上ないって言うほど楽しげに手を叩いているんですか、この人は。なんだか頭が痛くなってきたんですけど。
「それでは改造手術を始める。」(真顔)
「ぎゃう!」
よっ由乃さん、その後ろから出した羽根ぼうきは何?その筆は?ああ、マジックまでもってる!
「や〜め〜てぇ〜、誰か〜、た〜す〜け〜てぇ〜。(泣)」
「無理。」(満面の笑顔)
このあと薔薇の館からは祐巳さんの悲鳴のような笑い声とか、「ダメ、そこは弱いのぉ・・・。」など祥子さまが聞いたらそれこそ卒倒しそうな艶っぽい声とかが聞こえたとか聞こえなかったとか・・・
数刻後
「ごきげんよう。すみません、遅れてしまって。」
「あっ志摩子さん、ごきげんよう。委員会だったんでしょ、仕方ないわよ。」
「ごきげんよう・・・。」
「・・・あのぉ祐巳さん?その額の文字はいったい?」
「聞かないで・・・。」
大満足と言った顔の由乃の横でたたずむ半笑いの祐巳の額には「にごぉ〜」と言う文字が燦然と輝いていた。
あとがき
初めてのマリみてSSです。
本当はもっとシリアスな物を書こうと思っているのですが、初めからそれだと後が続かないので最初くらいはこのようなネタで行こうかと。
あ、そこの人、物は投げないで。(泣)