ずるずる
「蓉子、何か引きずるような変な音聞こえない?」
ずるずる
「そう言えばそうね。」
「ちょっと見て来るよ。」
そう言って廊下に出た私はとんでもない物をそこで見つけた。
「よ、蓉子ぉ〜。」
「どうしたの聖!」
私の声に、ただならぬ気配を感じて慌てて出て来る蓉子と江利子。そしてその二人が見たものは・・・。
「あれ、蓉子の妹の祥子よね。」
「ええ、確かにあれは祥子だわ。まったくあの子と来たら・・・。」
よ、蓉子さん、何をそんな冷静に。
「でも目がイッちゃってるよ。それに鞭なんか持ってるし。」
「ほんと、ボンテージとか着て羽仮面とかつけていたら似合いそうね。後、赤いハイヒールも。」
いや、そう言うことではないような。
「蓉子、そんな事を言っている場合じゃないような気がするんだけど・・・。」
「そうね、確かに面白い状況ではあるけど。でも一体何があったのかしら。」
「大体想像はつくわね。」
「やっぱり祐巳ちゃん?」
「それしかないでしょ、あの子があんなふうになる理由なんて。」
それはそうだけどあんな状態の妹を見て、落ち着きすぎじゃない?
「それはそうだけど、蓉子。えらく落ち着いているじゃない?」
「まぁ、初めてじゃないからね、祥子が錯乱するのは。」
「なるほど、それで落ち着いているわけね。なら元に戻せる?」
「う〜ん、どう言う理由でああなったのかを確かめないと。祥子が、あの鞭で祐巳ちゃんを叩こうとしているなんてことは有り得ないから、誰に対しての鞭かも知らないとね。」
「案外聖なんじゃない?ターゲット。」
「そんなに楽しそうに怖い事言わないでよ。」
でも有り得ない話ではないなぁ、いつもの私の行動を考えると。
「それはないわね。」
「なぜ?」
「聖なら錯乱せずにヒステリーを起こしていると思うから。本気であなたが祐巳ちゃんを取るなんて祥子は思わないでしょうからね。」
「なるほど。」
そう考えると確かにそうね。では誰に対して?
「・・・・・・・・・・」
「ん?何かつぶやいてるよ、祥子。」
「そうね、近くに行って聞いて見ましょう。」
「でも大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。伊達にあの子のお姉さまはやってないわ。」
蓉子の頼もしい言葉に支えられて祥子のもとへ。
「ドリルゥ〜、どこぉ〜、出て来なさぁ〜い。」
あのぁ〜、本当に怖いんですけど。
「ドリル?」
「あっ私、令に聞いた事がある。祐巳ちゃんの妹候補が祥子の従妹で、その子の事を由乃ちゃんがドリルって呼んでいるって。」
「なるほど、祐巳ちゃんの妹候補かぁ。それなら祐巳ちゃんを取られるかもしれないと思うのも解るわね。」
「さて、理由は解ったけど、どうするの?」
「とりあえず祥子にコンタクトを取ってみるわ。」
そう言うとすたすたと祥子に近寄っていく蓉子。本当に度胸あるなぁ。
「祥子。」
そう呼ばれると確かに蓉子の方を見るのだけど、目はイッちゃったままで祥子の表情もそのまま。相変わらず、「ドリルゥ〜」と言い続けているし、蓉子の顔なんて見えていないんじゃないかなぁ。
「ふぅ。まったくこの子は・・・。」
そう言うと蓉子は片手を上げて・・・。
「えい!」
と、かわいい感じの声を出して祥子の額にチョップ。
「・・・あっ、お姉さま。」
それで直るのか、この子は。まるで・・・
「まるでテレビみたいな子ね。」
江利子も同じことを考えていたか。やっぱり斜め45度で殴るといいのかな?
「祥子、はしたないわよ。」
「はい、すみませんお姉さま。」
「気持ちも解るけど、あなたも祐巳ちゃんのお姉さまなんだから、みっともない嫉妬はしない。」
「でも、お姉さま・・・。」
「でもじゃありません。」
「はい。」
流石蓉子、あの祥子がうなだれて子犬のようになってる。
「聖、祐巳ちゃんたちを探して来て。その間にこの子をしゃきっとさせておくから。」
「うん、わかった。」
「祥子も、祐巳ちゃん達が着たらいつも通り接するのよ。わかった?」
「はい、お姉さま。」
「私たちはリビングでお茶を飲んでいるから見つかったらつれてきてね。」
そう言うと、うなだれた子犬とその飼い主は江利子を連れて、リビングの方へ行ってしまった。
「さて、それじゃあ祐巳ちゃんを探しますか。」
朝から珍しいものも見れたし、今日も一日いい日になりそうだ。おっ、祐巳ちゃん発見!後ろからそぉ〜っと近づいて・・・えいっ!
「おっはよう!ゆ〜みちゃん。」
「うぎゃうっ!」
「今日もかわいい怪獣の鳴き声、ありがとう!」
ホント、この姉妹は楽しませてくれる。さてさて、こんな可愛い可愛い祐巳ちゃんを連れて行ったら祥子がどんな顔で迎えるか、今から楽しみだ。
祐巳ちゃんを抱きしめながら、この先の展開を考えて思わずほほが緩む聖さまであった。
あとがき(H16/4月9日)
やっぱり乃梨子ちゃんは超能力者ですね。(笑)
私の中の祥子さまは祐巳ちゃんの事となると人が変わってしまいます。本来のマリみての中でもかなり嫉妬深いですが、それに輪をかけて。もう激ラブ、べたぼれ、独占欲の塊です。だからこれからもこのような姿をさらしてくれる事でしょう。
でも祥子さまファンから見ると、私はとんでもない奴なんだろうなぁ。私の妄想の中の祥子さまの話だから許してね。