「おめでとう瞳子ちゃん!」
「ありがとうございます、祐巳さま。」
嬉しさのあまり祐巳さんの胸にすがり付いて泣き出してしまった瞳子ちゃん。そう薔薇の館の会議室で行なわれた開票結果は僅差ではあったものの賛成票が上回り、無事瞳子ちゃんと可南子ちゃん、二人が祐巳さんの妹になることが出来ることに決まった。
「良かったね、瞳子ちゃん。」
一通り泣いて、瞳子ちゃんが落ち着いた所を見計らって私もお祝いの一言。今までの事を考えると私も本当に嬉しかったからね。
「ありがとうございます、由乃さま。そして三奈子さま、あなたがいなければ私はきっと諦めてしまっていたと思います。本当になんと言っていいのか。」
「いいのいいの。私達としても瓦版のいいネタになったしね。」
「そうそう、お姉さまの言う通りよ。おめでとう瞳子さん。今日はとても無理だろうから、来週にでもまたインタビューさせてね。」
「はい。」
そう言うと、また涙がぶり返してきたのか、祐巳さんの胸に顔をうずめる瞳子ちゃん。それを見て可南子ちゃんが何か言いたそうだったけど、泣きじゃくる瞳子ちゃんを見て言葉を飲み込んだみたい。きっと「祐巳さまを独り占めさせてあげるのは今だけだからね。」なんて考えているんじゃないかな?
「ところで祐巳さん。」
「はっ、はい!」
瞳子ちゃんの頭をなでていた所にいきなり三奈子さまに声をかけられてびっくりの祐巳さん。でもその次の言葉にはそれ以上の驚いた表情を見せた。
「ここまで盛り上がったのだから、当然ロザリオの授与は今から私達の前でやってくれるのよね?」
「ほぇ?・・・・えぇぇぇぇぇ〜〜〜〜!?」
そりゃ驚くわよね。普通ロザリオの授与ってこんな大勢の前でするものじゃないし。
「だって当然でしょ。外で待っている一般生徒たちも賛成が上回ったのならこの二人がロザリオを首から下げている姿が見たいだろうし。」
「ううっ、確かにそうでしょうけど。」
実際一番見たがっているのは三奈子さまや真美さん、それといつの間にかこの場に入り込んでちゃっかりカメラを構えている蔦子さんだろうと思うけど、そこは突っ込まないのがお約束。私も見たいしね。
「まさかロザリオを二人分持っていないとか?」
「いえ、それは無いですけど・・・。」
そう言って祐巳さんは2本のロザリオをポケットから取り出した。二つとも少し形は違うものの、祐巳さんが祥子さまからもらったロザリオと同じ緑の石が埋め込まれた綺麗なロザリオを。
「それでは祐巳さん。みんなの前でロザリオの授与を。」
「由乃さん!?」
「もうここまで来たら観念してやるしかないんじゃないの?私達が見届け人になってあげるから。それとも庭に出て、全校生徒の前でやる方がいいかしら?」
「ははは、それは流石に・・・。」
そう言うと祐巳さんは少し無言で考えてから、
「よし!可南子ちゃん、瞳子ちゃん。みんなの前での授与だけど、いいわね?」
「祐巳さまがよろしければ。」
「ハイ。私は皆さんのおかげで祐巳さまの妹になれるのですから依存はありません。」
祐巳さんは二人の言葉を聞いて頷き、まずは可南子ちゃん、続いて瞳子ちゃんの首にそれぞれロザリオをかけた。
「おめでとう、二人とも!」
薔薇の館の中に響く拍手の音とお祝いの言葉。その声が漏れたのか、外からもお祝いの声が聞こえ出した。
「じゃあ3人で並んで。はいはい、瞳子ちゃんも泣いてちゃせっかくのかわいい顔が台無しだよ。」
蔦子さんがそんな事を言いながら祐巳さんたち3人を並ばせて写真を1枚パチリ。そして今度は祥子さまも入れて4人並んだ所をもう一枚。
「(小声で)祥子さま、機嫌が悪いのは解りますが、ここはもう少し笑ってください。」
「(小声で)解っているわよ。」
なにやら蔦子さんが祥子さまの耳元でささやいてから、
「では最後にもう1枚。4人とも目線ください。では行きま〜す。」
そう言ってシャッターを切った。
「それじゃあ外に出ましょう、みんな御待ちかねのようだし。」
「そうね。」
志摩子さんにせかされて外に出る初々しいスール3人。私も続いて外に出ようと思ったんだけど、
「(小声)本当は一人でもいやなのに。ああ、私の祐巳が・・・。」
あれ?よくは聞き取れなかったけど、後ろで祥子さまがなにやらつぶやいたような?
「どうかしました?祥子さま。」
「なんでもないわ、由乃ちゃん。さぁ私達も行きましょうか。」
「そうですね。」
その時外から大きな歓声と「おめでとう!」の声が。どうやら投票結果が発表されたみたいね。
「いけない。祥子さま、早く行きましょう。」
「そうね。」
外に出るとなにやらテレ笑いしている祐巳さんと泣いてしまっている1年生二人。あらあら、今度は可南子ちゃんまでもか。まぁ、可南子ちゃんもここまで来るのに色々あったし仕方ないよね。
三人とも本当におめでとう。これから色々と大変なこともあるだろうけど、がんばってね。
「さて、後は由乃だけか。」
「うっ!」
意味深な顔でこちらを見る令ちゃん。でも令ちゃんはまだ菜々の事、知らないんだよなぁ。さてさて、どうやって切り出したものか。
あとがき(H18/1月5日更新)
えっと、終り方が由乃さんの話に続くような書き方ですが、それは原作の方でやっているので当然書きません。次回は祥子さま編(?)です。
さて、可南子ちゃんが妹だったらシリーズ2作目、瞳子ちゃんの逆襲正規END、如何だったでしょうか?まさにハッピーエンドを絵に描いたようなラストです。
正規ENDと銘打ってありますが、本来このようなラストになる予定ではありませんでした。でも、この続きを書こうと思うとやっぱりこの展開になってしまうんですよね。もしここで瞳子ちゃんが妹にならなかった場合、祥子さまが自分で妹を作れと言った手前暴走し辛いんですよね。(まぁ、祐巳ちゃんと可南子ちゃんがいちゃつき始めたら爆発するだろうけど。(笑))でも、妹が二人となるとそうは行きません。当然やきもちも2倍です。今回の話でも少ない出番にもかかわらず毎回瞳子ちゃんが妹になるのを妨害しようとしているのを見ても解りますよね。(笑)
後、次の話での瞳子ちゃんの立場を考えた場合もこの方がいいんですよ。やはり一人だけスールじゃないと言うのは立場が弱いですから。特に可南子ちゃん相手ならともかく、敵はあの(笑)祥子さまです。少しでも弱みを見せたらあっという間に飲み込まれてしまいます。と言う訳で今回のようなENDになってしまいました。
さて、皆さんはどちらのENDがお好みでしょうか?感想などBBSやweb拍手の方に送ってもらえると嬉しいです。やはり励みになるので。
それでは次の話、祥子さまの復讐(この題名、スターウォーズに引っ掛けているだけの題名だから多分変ると思います。)でお会いしましょう。
祥子さまの復讐(仮名)へ(工事中)