月曜日の朝、薔薇の館で会議前のお茶を楽しんでいた所にビスケット扉を開けて瞳子ちゃんが入ってきた。
「あっ、瞳子ちゃん、ごきげんよう。」
「ごきげんよう。祐巳さま、今日からは瞳子の名前を呼ぶ時は、瞳子とお呼びください。」
投票も無事終わり、開票もその日に無事終了。その結果はと言うと・・・
「ちょっと瞳子さん。あなたは投票の結果、祐巳さまの妹にはなれないことになったんですよ!?」
「解っていますよ可南子さん。」
そう、投票の結果は僅差で反対票が上回ってしまった。その時の瞳子ちゃんの落胆ぶりは痛々しいほどで、私自身正直今日は顔を見るのが辛いなぁ思って登校したほど。それなのに、この瞳子ちゃんの晴れ晴れとした顔は何?
「なら何故そんな事をいきなり?さっきも言った通り、瞳子さんは祐巳さまの妹ではないのですよ。」
「あら可南子さん。では白薔薇さまは紅薔薇さまや黄薔薇さまの妹なのですか?」
「そんな訳無いじゃないの。」
「でも白薔薇さまは紅薔薇さまや黄薔薇さまに名前を敬称を省いて呼ばれているのではなかったかしら?」
「それは・・・。」
確かにそうだ。志摩子さんは令ちゃんや祥子さまに「志摩子」と呼ばれている。そう考えると、妹じゃないからと言って呼び捨てで呼ばれてはいけないと言う法はないわけだ。
「私、土曜の夜は泣き明かしましたわ。そして昨日一日冷静になって考えましたの。これからどうしようかと。確かに祐巳さまの妹にはなれなかった。でもだからと言って他の誰かの妹には絶対なれない。」
そうだろうね。だめだったからはい次って言うわけにはいかない話だもの。
「では今までと同じスタンスは?これも今回の事があった以上、前のように憎まれ口を叩いたり、適当に距離を置いて接するなんて事はもう絶対にできない。だって自分の本当の気持ちに気付き、また祐巳さまに知ってもらったのですもの。」
う〜ん、確かにそれも辛いだろうなぁ。あれだけの面前で思いのたけをぶつけたのだから。
「だからと言って略奪の方向に行ってしまったらそれこそ三奈子さまの御友人と同じ道をたどってしまう。それは流石にだめでしょう。」
「それは・・・そうですよね。」
おいおい、なにやら芝居がかってきたぞ。一体なにが言いたいのよ?この子は。
「そこで考えたのです。私、ただの友人以上に近しい下級生として祐巳さまとお付き合いを続けていただこうと思っていますの。そう、紅薔薇さまたちと白薔薇さまのように。」
「で、まずは名前の呼び方からと言うわけなのね。」
「そうです、由乃さま。」
確かに筋は通ってる、通ってるけど・・・
「ちょっ、ちょっと待って瞳子さん。私だってまだ祐巳さまに名前だけでは呼んでもらっていないのよ。」
「あら、それ以前に、まだロザリオの授与もしてもらっていないのではないですか?」
「うっ!」
そう言えばこのごたごたがあったから、祐巳さんと可南子ちゃんもまだ正式にスールになってないんだっけ。
「ゆ、祐巳さま、今すぐスールの契りを!いえ、それ以前に名前をちゃん抜きで呼んでください。」
「ちょっ、ちょっと待ってよ可南子ちゃん!」
「祐巳さま!」
事の成り行きをぼ〜っと見ていた祐巳さんも、いきなり自分に話が飛び火してきたからびっくり。でも、そもそもぼ〜っと聞いている祐巳さんの方が悪いんだけどね。
「ちょっと可南子さん。それは私が先に言い出したのだから私が先でしょ。」
「いいえ、私が祐巳さまの妹なのですから私が先です!」
「あら、まだ妹ではないのではなかったかしら?」
「キィ〜!」
「ちょっと、二人とも落ち着いて・・・。」
あ〜あ、結局三角関係は変わらずか。祐巳さんも大変だろうけど、これからもがんばってね。
あとがき(H18/1月5日更新)
可南子ちゃんが妹だったらシリージ2作目、瞳子ちゃんの逆襲、如何だったでしょうか?こちらのルートは一番最初に私が思いついたものです。やはりスール制度そのものを壊すと言うのもなんだし、なんと言っても瞳子ちゃんらしいのは多分こっちだろうと個人的には考えているんですよ。
だってあの瞳子ちゃんですよ?すんなりと可南子ちゃんの思い通りに進ませるわけが無いじゃないですか。たとえ負けても負けは認めない。最後はきっと私が勝つ!と言う勢いで突き進んでくれると信じてます。でもだからと言って略奪愛なんて自分には似合わない。あくまで姉と妹では無く、下級生だけど対等な立場で!と結論付けてくれるこのエンドは個人的に気に入っています。
でも、このエンドだとこの後が書きづらくなるので(理由は正規エンドで。)こちらはアナザーエンドになっています。それでもやっぱりこのエンドはどうしても書きたかったので今回のような二つのエンドがある話になってしまいました。
さてさて、皆さんはどのように感じてくれたのでしょうか?出来たらBBSかweb拍手の方にでも感想がもらえるとありがたいです。