晩年のシンデレラ

 

 

右も左も上も下も

斜めにも・・・

どこにだって道はあるはず

 

なのに私は進みたくない・・・

 

そんな心境

 

逃げ道はいっぱいあるのに

私は自分自身の中に閉じこもっている

 

いや閉じこもっていたい

 

私は今

私だけを見つめていたい・・・

 

私は城に砦を作った

カミソリ一枚だって入れやしない

 

・・・・・自分を守るため・・・・・

 

もう前に進めやしないと思いこんで

それでいて

後ろを振り返りたくもない

 

それでも夕暮れ時だけ

私は世界をのぞく

人目につかないように造った小さな展望台から

 

・・・のぞく・・・

 

どこへも行きたくないはずなのに

私は弱いから

 

やはり完全に一人ぼっちになれやしない

 

 

ああ晩年のシンデレラ

もう舞踏会も開けない

 

王子様・・・?

あれは妄想だったかしら

 

いえ、何よりも美しい思い出・・・

 

年老いたシンデレラは女王様になったのよ

子宝に恵まれなくてね

 

めでたしめでたし・・・

 

何が?

 

それでも年老いた私にも

まだ人生という時間があるのよ

 

それを辛いと思うか

楽しいと思うか?

は人の気の持ちようと言うけど

 

人から見た幸せと

自分で感じる幸せと

それはくいちがい・・・

 

私はシンデレラという年老いた女王よ

 

それでもね

私はね

 

人から自分を不幸と呼ばれたくないから

砦を作ったのよ

 

でもね

ちっぽけな希望がまだあるから

展望台を作ったのよ