自己満足

 

私は満足していたはずだ

自分自身に

自分自身の生活に

 

ある日私は宝石店で綺麗な指輪を見つけて

どうしても欲しいと思った

 

私はがむしゃらに働いて

指輪を手に入れた

私は満足した

 

ある日私は歩いていたら

道に指輪が落ちていた

それは私ががむしゃらに働いて

手に入れた指輪より高価なものだった

 

私は周りをせせこましく見て

道に落ちている指輪をポケットに入れて

家路につく

 

家に帰って私は道で拾った指輪を

よく見た

それは貴族の女性しか持てないような

上品でかつ豪華な指輪・・・

 

・・・警察に届けるべきだろうか・・・

 

という考えも遠のいてしまって

私は毎日拾った指輪を見つめる日々が続いた

 

自分でがむしゃらに働いて買った指輪など

もうどうでもいいと捨ててしまったって構わない

そう思った

 

毎日寝る前にそっとはめてみた

豪華な指輪を

 

そんな日々が続き

気付いた

 

ずるい事をするものじゃない

拾った指輪に魅了されることによって

私は忘れていた

自分自身を

 

私は貴族になりたいと思ったことはなかった

ささやかな幸せに満足していたはずだ

ささやかならばささやかなりの幸せ・・・

 

私は拾った指輪に魅了されることによって失ってしまった

ささやかな光を・・・

 

私は満足していたはずだ

自分自身に

自分自身の生活に

 

拾った指輪は警察に届けて

本来の指輪の持ち主に届きますよう・・・

 

私は久しぶりに青空を仰げた