空っぽの鳥籠

 

 

ある春の朝

うつむき加減で散歩していたら

瀕死の小鳥を見つけた

片羽を怪我をして飛べない小鳥は

とても辛そうで

息をするだけで精いっぱいだった

 

心を病む私と

片羽の折れた小鳥

私は小鳥の世話を一生懸命にした

 

小鳥は3日したら歌を歌うようになった

それはとても美しい声で

私は小鳥に魅了されてしまった

 

銀でできた美しい鳥籠を買いに行って

小鳥を入れた

 

毎日小鳥の怪我を癒してあげた

小鳥はそれにこたえるように

美しい声で歌ってくれた

その歌う姿もとても可愛らしくて

私の心の病は治ってしまった

 

小鳥も怪我が治り

美しく成長した

 

その羽の色も歌声も

とても素晴らしく

私の小鳥は世界一素晴らしい小鳥・・・

 

と私は有頂天になった

自分の人生を生きていて

今が一番幸せに感じた

 

可愛い小鳥・・・

私の小鳥・・・

 

そう思ってなにげに

窓を開けたら

小鳥は籠から飛び出て

大空にはばたいた

 

それっきり

小鳥は私の視界から姿を消した

 

私の小鳥・・・

可愛い小鳥・・・

世界一素晴らしい小鳥・・・

 

とその時から

私はその言葉を反芻するようになった

 

私はまた心の病におかされた

 

こんなことになるくらいなら

あの小鳥を拾うんじゃなかった

 

ああ、でもあの小鳥に出会わなければ

私は本当の愛に出会わなかった

 

そう思って空を仰いで

どこか電線にでもあの美しい小鳥がとまっていて

また歌を聴かせてくれるといいのに・・・

 

と私は空っぽの鳥籠のある

自分の部屋という鳥籠の窓から空を見て

ひとり悲しむ