空想

 

あなたに出逢う前

私はずっと空想にふけっていた

「孤独」「夢」

私の好きなこと

 

私は何もかも持っているようで

何も持っていなかった

人は羨む

あなたには財産があるのだから

確かに・・・

私は持っている

先祖代々からある

財産を・・・

豪華な屋敷

壁に書かれた宗教画

きらめくシャンデリア

美しい貴金属

私を取り巻く人々

 

私は良家の子女

 

でも私は知っていた

それは愛とはかけはなれたもの・・・

 

私は孤独を愛し

架空の世界を夢見て

 

でも心の中で私は叫んでいた

本当は空想なんかにひたりたくない!!!

 

ある日

私は奴隷という身分の

黒い肌を持つ

美しい男を見て心がときめくようになった

 

 

私は奴隷に声をかけた

奴隷は身分が低くとも

とても頭の回転が良く話術が優れており

私に喜びを与える

 

誰にも言えない・・・

 

恋する人が奴隷・・・

 

愛・・・それは財産のように

あってもなくてもいいものでなく

どうしても欲しいものだった

 

私は奴隷に言いたかった

「私をこの屋敷から連れ出してちょうだい」

 

土台無理なことだ

私の愛する人は私の父が

金で買った奴隷

 

私は奴隷と話しているときは

今までの人生の中で一番心ときめき

楽しい瞬間に感じる

 

私は奴隷に言えなかった

 

「私はあなたを愛しています」

 

言えない・・・

 

しかし奴隷は私の気持ちを解っていると

奴隷の目を見て解った

そして奴隷も私を愛していると・・・

 

もう何もいらないと思った

 

私は空想にふけらなくなった

 

これから先どうなるのか?

私は良家の子女

実は許嫁もある

その許嫁には全く心ときめくことなく

 

私は奴隷には

心臓が悪くなるほど

一緒にいて心ときめく

 

「私をここから連れ出してちょうだい」

と思うのだった

しかしそう思う心も

実は空想にすぎない

そう思うと・・・

私は一生事実から逃げて

空想に生きるのだろうかと・・・

自分の人生に恐怖を感じるのである