醜く太っているのは運命か

 

「太っているのは運命だわ・・・」
とある日、精神病院の外来でMちゃんが、溜息まじりにそう言った。その言葉は私の心にもずしりと重くのしかかった。
 私もMちゃんも太っている。ただ,私は“太っている”くらいだけど、Mちゃんはものすごく太っていた。ちなみにMちゃんは、友達ではない。知り合い程度だけど、彼女の巨体は病院の中でも皆の目をひいた。Mちゃんは普通より少食だ。それなのに太っている。
 一時、Mちゃんはエアロビクスを習い、驚異的に痩せたことがある。そのこともやはり皆の目をひいた。しかしエアロビクスをやめたら、またもとの体形に戻ってしまったのだ。くどいようだが、その事実もやはり皆の目をひいたのである。
 Mちゃんは呟いた。
「運命だわ・・・」
という言葉はとてもインパクトがあった。

 

 話は少し変わるが、躁状態になると痩せることは医学的に証明されている。食事をほとんどとらず、人並み以上に動いてもお腹が減らない。私の場合は医師に聞いてみたら、「あなたは躁のときは、入院しているときにひっきりなしに病院の廊下を歩いていたでしょ。」と言われた。なるほど!!馬鹿みたいに歩いていたな・・・きっとそれはものすごい運動量だったのだと思う。また、躁のときは新陳代謝が高くなるという説がある。
 私は躁のとき、すなわち入院しているときだけに平均体重になる。子供の頃から太っていることを悩んでいた私にとって、躁状態のときだけは、心身ともにバラ色になるのだ。ナイスバディとなるのだ。楽しくて嬉しくてたまらない!!!
 しかしそれはあくまで病気のなせる業である。長くは続かない。躁状態がなおり,鬱になるにつれて、私はデブに戻る。

 

私は子供の頃から太っていること気にしていた・・・と書いたが、精神病になる前は精神病になった後ほどは、太ってはいなかった。普通サイズの服もなんとか着れた。それが悔しくてたまらない。
 精神病の患者は太っている人が多い。それは薬のせいなのかどうかはわからない。そこらの事実はオブラートに包まれているのだ。
「太るから薬は飲みません!」という人が多くなれば、やはり困るからだと私は思っている。誰か患者さんが薬のことを「あれは砂糖だ」と言っている人がいた。しかしそれは定かではない。それでももし、薬を飲むことが太ることの原因だとしても、薬をやめられない自分がいる。狂うよりは太っていたほうがいい。
 「太っているのは運命」
いやな言葉だな・・・しかしそれは真髄を得ているのだろうか?と思う今日この頃である