ミセス・ロザリア

 

 

子供のころからその人格が素晴らしいと言われていた

ミセス・ロザリアは

いつも誰にでも優しく

そして人のためになら自分を犠牲にしても

笑顔でいられる人だった

 

ミセス・ロザリア

・・・その名前の響き・・・

恋して愛して結婚したわけではなかったが

ロザリオの祈りが大好きだった少女は

自分が結婚して

「ロザリア」

という名前になったことを

神に感謝した

 

と・・・それはただの

夢にしかすぎなかった

ミセス・ロザリアの配偶者は

とても短気な人で

ほんの少しのミセス・ロザリアのミスをつつき

稲妻のように怒る人だった

 

馬を鞭打つ鞭で

洋服を着ると隠れる場所に

配偶者は鞭打つのだった

 

それでもミセス・ロザリアは誰にでも笑顔で接し

「ああ、あの方は天使の様ね」

と誰からも好かれていた

 

配偶者に鞭打たれた跡が

ミミズばれになった体を

自分でひそかに見て

『自分もイエス様と同じ体験をさせていただいているのよ』

と感謝する

ミセス・ロザリアだった

 

辛く悲しい人がいれば

大雨が降っていても赴き

優しい言葉をかけるミセス・ロザリア

辛く悲しい人々は

ただミセス・ロザリアの微笑みと

優しい言葉に癒され

辛い人生から立ち直るのだった

 

「ああ、あの人は天使の様ね」

みんなは噂した

  

ミセス・ロザリアはただ神に感謝して

隣人を愛し

そして自分を虐待する配偶者をも愛した

 

『私を虐待することで怒りが無くなれば主人も幸せになれる』

そう思いながら

鞭打たれても悲鳴さえあげなかった

 

配偶者は子供の時のトラウマで

女性を抱けない人で

その代りに鞭を打つことが性癖であったのだ

子供が大好きなミセス・ロザリアにとって

それは辛かった

 

しかしミセス・ロザリアは

配偶者を恨むこともなかった

『私はマリア様にお近づきになれるのだわ

死ぬまで乙女でいましょう』

 

「あんたのところはまだ子供ができないのかい?」

と余分なことを言う人にでも

ミセス・ロザリアはにっこりと笑い

そう言う人の悲しい部分をすぐに察し

優しい言葉をかけて

その人の心を喜びに導くのだった

 

「あなたはまるで天使のようだね」

と人に言われれば

謙遜し

「いえ、私はただの罪人です」

とやはり微笑んで言うミセス・ロザリアの言葉に

本当に罪を犯した人も癒されるのだった