無念の色彩

 

過ぎてしまった過去の日々に

私は忘れ物をしてしまった

若かりし日々に

流行った口紅の色

無念の色

 

ああ。一度でいいから

口紅をつけて街を歩いてみたかった

60年にわたる辛い闘病生活を経て

今死にゆく私

 

せめて柩に入る時くらい

くれないの口紅つけて

若い乙女のように

笑っていたい