名前

 

かつて私は

柔らかな真っ白なタオルでした

家人の顔の水分をすみやかに吸いこみ

フカフカとした

とても心地の良いもの

家人は私をとても大切にしてくださいました

それが年月が経って

私は雑巾になりました

家の床の汚れをすみやかにとり

ささやかではありますが

家人に喜ばれました

そして今はとうとう

私はボロ布です

ごみ箱に捨てられました

もうすぐ私は燃やされます

つくしてつくしてつくしきりました

「このタオルは高級ブランドよ」

とかつて喜ばれていた私

タオルとして生き

雑巾として生き

今はゴミです

でもいいのです

私は一生懸命

自分の命をまっとうしましたから

生まれ老いていくことを

ただの布である私も

経験できましたから

ただ私は自分が

「タオル」として生まれましたが

自分には「ブランド」という

名前があることに固執し

自分が高慢であったこと

死にゆく今反省しております

もうすぐ燃やされてゆく私・・・

走馬灯のように思い出が巡るとともに

私のご主人である

「人」も

死んだら自分と同じように灰になる事に

気づいたら

安心感が湧いてくるのは何故でしょう