王子の庭園

 

 

ある国に孤独な王子がいた

何に対しても興味がわかず

ただ城の庭に

美しい花々を育てることが

何よりも楽しかった

 

「王子様そんな庭仕事などされて

もったいないです

庭仕事など私たちがいたします

大事なお手が汚れますから」

と召使が言うならば

「いいのだ

わたしは美しい物が好きなのだ

花に囲まれた生活

それはわたしの最高の場所なのだよ」

と王子は言った

 

召使の噂話が国王に伝わった

 

「王子

そなたには美しい姫君が

必要のようだ

花を育てるのはもうよしなさい

やがて王になるそなたは

庭仕事などすべきでない

相即に婚姻の用意をしよう」

 

王子のもとに嫁いだ姫君は

世界一美しいという評判のリアス王女だった

・・・リアス王女は花より美しい・・・

いうことはただの評判ではなく

リアス王女の美しさは

ただそこにリアス王女がいるというだけで

その場の空気が変わるほどだった

 

王子は一目見るなりリアス王女の虜となった

 

「リアス王女・・・あなたにプレゼントを・・・」

と王子は小走りにその場を立ち去り

自分の育てた花を切って

花束を作った

 

「リアス王女

あなたにわたしの育てた花を捧げます」

 

そう王子が花束を手渡したと同時に

リアス王女は不快な顔をして王子を睨みつけて

花束を地面にたたきつけた

 

「わらわは花より美しいのですよ!!!」

 

王子はとてもショックを受けた

思わず頬に涙がつたった

 

「まあ、なんてなさけのない王子様でしょう

でもいいのです

わらわはこの国の富が目当てで

嫁いできたのですから」

といとも冷静な表情で

リアス王女は語った

 

王子はさらにショックを受けて

口走った

「貴様が花より美しいなどと

美しい花たちはそちのように

汚い言葉を吐かぬ!!!」

そう言って

おもわずリアス王女を殴りつけたら

その物凄い力で

リアス王女は倒れ

頭部を打って即死した

 

一瞬その場は

し〜んとしたが

年端の行かない召使が

思わず悲鳴をあげた

 

王は一瞬とまどったが

王家同士の婚姻は

国交をよくするための

政略結婚であったので

この事実を隠蔽した

 

「王子

そなたが女を牛耳れる力が

まだなかったこと

わたしの思惑とは違っていた

そなたはずっと花だけを愛でて

母親の愛さえも知らずに育てたわたしが悪かった

そなたが幼いころに亡くなった

わたしの前王妃の次に

即現在の王妃をめとったこと

そなたには悲しかったのだね」

 

王子の目から涙があふれ出た

 

「リアス王女は可哀そうだったが

あの姫は人間の姿をした毒草だ

リアス王女を城の庭に埋めなさい

そしてそなたは

リアス王女の為に

城の庭に花を育てるのだ

それを1年続けて懺悔しつつ

そなたが本当に美しいと言う事が

どんな事なのかが自分でわかるようになった時

新たに花嫁を迎えよう

しかし次の花嫁は

花を上回るほど美しくはないと思いなさい」

 

王は威厳のある表情で言った

 

王子は少し不安を感じた

花より美しい王女を殺害したこと・・・

それを隠蔽すること・・・

しかしそれができない器なら

一国の王にはなれないと王子は悟った

 

そして王の語り口は

汚くとも威厳があったこと

それに感動し

また王子は庭園で花を育てている

心を一歩前に進めながら