パパのロザリオ

 

 

日本人のうちカトリックの信者になる者は

100%のなかの

1%だと

神父様がおっしゃっていた

 

カトリックとプロテスタントの大きな違いは

カトリックにはマリア信仰があること

 

カトリックの祈りに

ロザリオの祈りというものがある

ロザリオと言って

仏教で言う数珠みたいだけど

ペンダントみたいな

美しい道具を使って

マリア様の取り次ぎによって神様に祈る

カトリックの信者はロザリオを持つ

 

私の家は貧乏だから

仏教でする

盛大な葬式はできないからと

母一人子一人の私の家は

どちらが先に死んでも

安いお金で葬式をしてくださるという

カトリックの教会で

葬式をすると決めた

 

私の母は子供のころから

天理教を信仰していた

天理教には天国地獄も存在せず

死んだら生まれ変わるという思想だ

 

「お母さん。死んで今の自分とまったく違った世界に行くより

天国へ行って

もう一回パパに会いたくない?」

 

私がそう言ったら

母は何も言わなかった

 

 

聖パウロ書院へ行って

シスターに聞いてみた

「死んだ人のためにも

ロザリオがあったほうがいいですか?」

シスターは

「死んだ人のためのロザリオを持つのはいいことよ。

死者のための祈りがあるので

お父さんのために祈ってあげなさい。」

とおっしゃった

 

私は

母と父のためにロザリオを二つ買ってきた

 

「お母さん

一回だけ一緒にロザリオの祈りをして

お母さんは

お母さんのロザリオと

パパのロザリオを持っていて。」

 

ロザリオの祈りは30分かかる

私がロザリオの祈りをしている間

母はずっとロザリオについた

マリア様の像を見ていた

 

ロザリオの祈りが終わった

 

「ロザリオはカバンの中に入れておくといいよ。

お守りになるんだよ。」

私は言った

 

「マリちゃん。

パパのロザリオは

マリちゃんのカバンに入れるの?」

 

「お母さんが持っていても

私が持っていてもどっちでもいいよ。」

 

そう言ったら

母は無言で

自分のカバンの中に

自分のロザリオとパパのロザリオを一緒に入れた。

 

『そんな・・・

死んでいても好きでいられるパパがいていいな』

 

私は少し母がうらやましかった

 

 

2009.11.28()