ズマリ写真

 

 

金髪碧眼と言うのは

この少女を表現するためにあるのだろうと

少年は思った

 

金髪碧眼の少女の写真

裏を見れば

“ローズマリー”

と書いてあった

 

モノクロの写真ではないので

ローズマリーと言う少女は

現代に生きる少女であることが伺われる

しかしローズマリーという名の少女は

まるで中世のヨーロッパ人のような服装をしていた・・・

 

「ローズマリーに会いたい!」

と渇望した少年は

その時

すでに精神を病んでいた

東洋人に生まれて

黒い髪と黒い瞳を持つことが義務づけられたという

妄想を持った少年は

髪をビールで脱色した

 

それでも僕の目は黒い

僕はローズマリーとはつりあわない・・・

 

常人では理解できない苦悩が

少年の心を駆け巡る

 

それ以来

少年は不眠に苦しみ始めた

 

僕は醜い・・・

ローズマリーとはつりあわない・・・

と・・・少年は鏡を見ては

自分の運命を呪った

 

白人として生まれたなら

ローズマリーとダンスができたはずだ・・・

 

そんな夢想を少年は誰にも打ち明けず

家族が寝静まってから

暗闇の中で時間を忘れるほど鏡を見つめた

 

その時

鏡の中にローズマリーが現れた

 

「私もあなたに恋をしています

舞踏会へようこそ」

 

と涼やかな声が少年の心にこだまするかのように

響いた

 

少年は狂喜した

 

少年は鏡の中の少女

ローズマリーとダンスをした

 

気がつけば

夜が明け

空は青かった

空を見上げれば

少年の瞳は空の色のように

青く変色した

ローズマリーほどに

碧い瞳ではなかったが・・・

少年は自分が白人になったと妄想をした

 

それ以来

毎晩

少年とローズマリーの

舞踏会は催された

 

少年の生活は昼夜逆転してしまった

 

少年のことを今まで気にかけたことさえなかった

母親が

少年の奇行に気づいたとき

少年は取り返しのつかないほどの

狂気にとりつかれていたことにやっと気づいた

 

真夜中に一人で踊り狂う少年を

父親の力を借りて

ロープで縛り

救急車を呼んだ

 

精神科のドクターが言った

「あなた方の愛情不足ですね

お母さん

息子さんを抱きしめたことがありますか?」

「・・・・・・・」

 

 

誰にも愛されないと

苦悩した少年の

心の葛藤が

金髪碧眼という

憧れが

少年がこうありたい

苦悩したあげくに

自分自身の生活から逃げたい

という願望が

妄想を産んだ

 

そう

少年は本当にひとりぼっちだったのだ

 

そして実は

ローズマリーの写真は

少年の母親が少女の頃

ロリータのファッションをしていた時の

写真だったのだ