優秀新人賞

 

うちあげ花火をバカにしていたのに

今では

線香花火にさえもなれない私

誰にも言わないけれど

これでも元アイドルよ

 

そんなプライドが高すぎて

普通に働く事もできずに

結婚もせずに

今でも歌を歌っています

場末の酒場で・・・

 

ある日一人の客が言った

「あんた、若い頃は可愛かっただろ?」

私の胸はおどった

が・・・

過去形で言われたのに腹が立ち

「そうよ!私、昔はアイドルだったのよ!」

と口をすべらしてしまった













「ハハハ。あんた冗談がキツイね〜」

 


私は言い返す言葉を失った

 

私は優秀新人賞

最優秀新人賞をとった同期のアイドルは

今ではカリスマ的な存在

一方的なライバル心を燃やしていた私は

賞レースに負けて思った

『ふん。あんたなんてうちあげ花火よ

そんなものは一時だけの人気よ!

いつか私が追い抜いてみせるわ!!!』

・・・と今思えば負け犬の遠吠え

 

私は優秀新人賞をもらっただけでも

奇跡だったのだと

今は思う

 

私はデビューして一年だけで

芸能界から消え去った

ただひとつ私に残ったのは

 














“プライド”

だけ

 


プライドを日本語に訳すと

“自尊心”

だという

でも私は果たして自分を尊敬しているのだろうか?

 

うちあげ花火をバカにしていたのに

今では線香花火にさえもなれない私

 

闇夜のカラスをかくす闇より

さらに暗い運命に翻弄されています