嫉妬
それは英語で
ジェラシーなどと表現するが
私の思いはジェラシーなんてものではない
私の思いは世にも醜い
それは嫉妬という感情なのだ
あの人は孤独になりやすい
独特の個性を発している彼は
その個性ゆえに人を遠ざける
「君は僕の理解者だ
こんなふうに僕を褒めてくれた人は君が初めてだ
心が喜んでるよ」
とあの人は言ってくれた
あの人は前衛芸術家だった・・・
「美紀は僕の養護者だね」
と
あの人は昔同棲していた女性のことをそう表現していた
私はあの人の理解者
養護者だったと表現されている美紀は
あの人の芸術がまったく理解できなかったという
どうして?
と私は思うのだけれど
あの人の芸術はこのように素晴らしいのに
「美紀は僕の芸術を解ろうとすればするほど苦しむ」
あの人はそう言っていた
あの人の人生において
養護者と
理解者と
どちらの女性が心の多くを占めるのかしら
あの人は私の手さえ握ってくれなかった
それなのにあの人は美紀を抱いたのだわ・・・
そんな嫌な感情
泥沼の様に汚い嫉妬
嫌な感情
抑えようとしてもわき出てくる
嫌な気持ち
私は毎日その気持ちを
殺している
殺しても殺しても
湧いてくる
ああ・・・
底なし沼のようにどろどろとして汚い
嫉妬・・・
・・・事実婚に敗れた彼と美紀・・・
・・・一夏の恋だった彼と私・・・