忘れじの君

 

 

僕はひたすら鉛筆を持つ

マルガリータを忘れないため

 

そんな日々がもう5年続いただろうか

 

何の生き甲斐もなく生きていた僕の前に現れたのが

マルガリータ・・・

君だった

 

マルガリータは絶世の美女でもなく

平凡な女性だ

それでも僕にとっては

おとぎの世界に出てくるどんなお姫様よりも

心が美しいんだ

 

僕はそう思って

君の内面を絵にしたいと思ったのさ

 

マルガリータ・・・君の内面の美しさを表現できるのは

絵だけだと思った

 

しかしそう思った日に

マルガリータは急にどこか遠くへ行ってしまった

『いったいどこへ?

何してる?

僕のことはもう忘れちゃったの?』

 

ああ僕には君に会えないことは

この世で何もかもを失うことだった

でも絵を描いている時だけは君に会えるんだよ

 

貧しい僕が持ってる画材は鉛筆だけ

人は信じるだろうか?

 

それはね

マルガリータが僕にくれた

プレゼントなの

たくさんの鉛筆を

なぜかマルガリータがくれたんだ

 

絵を描くには硬いHBの鉛筆は

みんな奇麗な花柄で

君が着ていた服みたいだ

 

でもね

もうすぐなくなっちゃうよ鉛筆

 

僕はマルガリータの絵を

殴り書きしてきたわけでない

丁寧に繊細に

描いてきたんだよ

 

そうしているうちにも

マルガリータがくれた鉛筆は

あと一本しかなくなってしまった

 

ああ・・・

5年も経ってしまったよ

君がいなくなって

 

それなのにまだ君を忘れられず

君と会っていた時少年だった僕も

大人になった

 

それでもまだ君を夢見て・・・

 

マルガリータ

社会人になった僕は

初めて貰った給料で

絵の具を買ったよ

 

君への思いを

無彩色だった僕の思い出の絵に

色もついて

時が経つにつれて

だんだん美しくなっていく君を

僕はまだ探しているんだよ