楊貴妃の鏡

 

 

この顔が私の顔・・・

世界一の誉れと財力を身につけ

皇帝の寵愛を欲しいがままにして

 

時に深く人に愛され

時に深く人に嫌われ

 

・・・何故この顔が私の顔・・・

 

私はこの顔を憎む

この世の全ての鏡を叩き割ってしまいたい

そうすれば私は世界一の美女だと言われずにすむ・・・

 

しかし私はそれだけで

自分からは逃げられやしない

 

私の腕

私の手

私の爪

 

私の足・・・

 

鏡がなくとも見える

全身が優美だと人は言う・・・

それが幸せかと・・・

 

私は私の全てを憎む

多くの男たちが魅了されると言う

私の全身が憎い

 

誰か斧で私の顔を切って

粉々になるまで叩いてください

 

腕も脚も引きちぎって

バラバラにしてください

 

それでも私の胴体が残るなら

乳房をくりぬいて

生皮をはがして

ただの肉塊にしてください

 

そう願いながら

今日も私は

鏡に映る自分に

見とれずにいられない・・・