静かな劇薬
少女Kの場合は
「現実」に関する全てが無駄であった
自分が食事をしなければ生きてゆけない不便さに
つくづく嫌気がさしていた
そんな少女の最高の趣味は
わけのわからぬ世界を
暗中模索することであった
(人に言わせればね)
少女は海と空の境目と同じ色のブルーのインクを持っていた
透明なコップに水を入れて
それにインクをたらすのが日課であった
それはインクと水が同じように混ざることが
一日としてないからである
少女はストロベリーキャンディーが好きであった
なめるのが好きなのではなく
地面に落とすのが趣味であった
キャンディーにアリがたかるまでの過程が好きなのであった
それは一日としてアリが同じようにたかることがなかったからである
少女は散歩が好きであった
彼女は歩きながら妖精の家の入り口を探していた
少女には妖精の友達がいた
しかし妖精は一方的に少女の前に現れるばかりだったので
いつか自分で妖精を訪ねて
彼をびっくりさせようと思っていたのだ
少女Kの実年齢は36歳であったが
本当は
この世にないほど大きな数字歳
であるということだ