ゆかりちゃん

 

 

初めてゆかりちゃんを見た時

私は目を見張った

ストレートのロングヘアーに

派手な顔立ちの美少女

彼女は光っていた

 

ゆかりちゃんはその時

私よりひとつ年上の15歳の少女で

私が好きなバンドのライヴに行くと

必ずいて

そこへ集まる少女達を

仕切っていた

 

ゆかりちゃんは全身から

派手な色のオーラを発していて

その光りが

ステージに立つバンドの

ギタリストの

ヒデキのハートを射止めた

 

でもそれがゆかりちゃんの

悲劇の始まりだった

 

ゆかりちゃんがヒデキに

処女を捧げたその時から

ゆかりちゃんの肩書きは

“グルーピー”

になったのだ

 

「ヒデキったらステージから

ゆかりちゃんばかり見ているわ

腹が立つったらないわ!」

 

そんな噂が行き交っていた

 

私はなんとも思わなかったけど

ヒデキの率いるバンドに飽きたし

高校受験もひかえていたしで

ライヴハウスに通うこともなくなった

 

 

いつしか時は流れて

あれは私が30歳を過ぎたばかりころ

あるマニアックなロックバンドの

コンサートに行った時

 

アリーナの真ん中の

一番前に

陣取っている

綺麗な女の人を見た

その人は

「私は美しいのよ!」

という感じの態度をしていて

少し嫌味だった

 

コンサートが終わり

家に帰ってから気付いた

 

『あの綺麗な女の人は

・・・
あれはゆかりちゃんだ・・・』

 

ゆかりちゃんはいい大人になっても

グルーピーから卒業できずに

半端していたのだ

 

ゆかりちゃんは相変わらず

綺麗だったけど

光り輝くかつてのオーラは

まったく放たれていなかった