有閑夫人の優雅な闇

 

かわいそうな貴婦人

毎日が幸福の連続

自分が楽しければ

全ての人々が幸せだと思っている

しかし彼女は自分に幸福を施しても

決して人には施さない人

 

彼女はたくさんの宝石を身にまとい

いつもキラキラとした輝きを見て

うっとりとしていた

 

何をするでもなく

宝石を見つめるだけの毎日

 

彼女の人生は満たされていたが

自分の家族が

自分によって

「退屈」をさせられていて

不幸になっている様を知らないのだった

 

『お母様はいったいいつも何を考えているのか

さっぱり解らないわ

毎日誰とお話しするでもなく

宝石ばかりを見つめていて

なにがそんなに楽しいの?

そんな暇があったら少しは私の心の孤独に

気付いてほしいわ』

 

16歳になる多感な娘は自分の母親を憎むようになった

 

それに貴婦人は全く気付いていなかったのだ

 

とうとう多感な娘は

自殺した

 

かわいそうな貴婦人は

自分の娘が自殺した理由を

全く解らなかった

 

そして悲しむことも忘れて

今日も優雅に宝石を見つめている