触レル
気がつくと、彼のしっとりと濡れたような感触の足の裏が、私の足のかかとに押しつけられている。
いつの間に、と思って顔を上げたら、じっとこちらを見ている彼と目が合った。
彼は、私の彼氏の息子。弱冠三歳。
雑誌を読む私の機嫌をうかがうように、彼が顔を覗き込む。
私は笑いかけるでもなく、足を離すでもなく、そのまま視線を雑誌に戻した。
拒まれなかったことでとりあえず安心したのか、彼もまた電車のおもちゃで遊び始める。
母親が恋しい年齢の彼は、いつもどこかしら私の体の一部に触れている。
子供が大好きとは思わないけれど、それは悪い感じではなく、私の中のある本能を呼び覚ます。
私は母親になれるだろうか―。
ひっそりと静かな部屋に二人。時間がゆっくりと流れていく。
了