ハロウィンSS


 

「浩史(こうじ)、お菓子持ってる?」

遊びに来ていた洋平(ようへい)が、聞いた。

「お菓子?持ってないけど。なんだよ、突然」

俺がそう返すと、ニッと笑う。

「じゃあ、いたずらしよう」

言いながら、

「は?」

わけが分からずにいる俺を押し倒そうとしてくる。

「ちょっ、なんなんだって」

意味不明の行動に、抵抗するように腕を上げたら、

ポロリと俺の胸のポケットから何かが落ちた。

見ると、昼間に食ったミントガムの残りだ。

入れたことを、すっかり忘れていた。

洋平に目を戻すと、それを見て、怪訝そうな表情をしている。

「ガムならあるけど」

俺が言うと、ガムから俺へと視線を移してじっと見た。

「……」

それから、

「なんでガム持ってんだよっ」

いきなり喚かれて、驚く。

「え。だって、一人だったから、昼に家でカップヌードルのカレー味食ったんだよ。

あれの後はミントガムだろ」

「ええっ、そんなの決まってんの?」

洋平が眉間にしわを寄せて聞いた。

「俺の中では決まってる」

俺が頷きながら言うと、奴が首を傾げて、

「そうかなぁ。俺は、カレーヌードルの後は、チョコレートだと思うけど…」

と漏らし、その組み合わせを思い浮かべて、

「ええっ!?」

今度は俺が眉間にしわを寄せた。

俺の中では、カップヌードル(カレー味)の後には、

ミントガムとの組み合わせより上を行くものなんてない。

チョコじゃ、まったりし過ぎんだよ。

って、…それはともかく。

「で、菓子がなんだってんだよ」

「…今日、ハロウィンだろ。ハロウィンのやりとりで、

『お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ』ってフレーズがあるんだよ。

言われて、お菓子を出さないといたずらされるんだ」

俺はポカンと口を開けた。

ハロウィンにそんなことするんだ。知らなかった。

 

ガムが出てきたせいで、微妙にいたずら出来なくなったらしく、

なんか固まっている洋平に、

「ガムも菓子に含まれるんだな?」

俺は聞いた。

奴は、不服そうな顔をして、黙っている。

どうやら含まれるらしい。

「で、洋平は菓子、持ってんのか?」

「…持ってないけど」

俺はその答えに、

「じゃあ、いたずらだ」

ニッと笑って起き上がると、奴を押し倒し返して、押さえ込んだ。

 

 

                               了

 

 

2011.10.19

 

 

他愛もない話でスイマセン^^

 

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