メモ書き by 堤 剋喜
1 オンブズマン?
『社会福祉 英和・和英 用語辞典』(1981年 誠信書房)でombudsmanをひくと、
「オンブズマン 民間の行政監査人」と出ています。
各地の「市民オンブズマン」の活動についての報道を眺めているだけでいると、
「民間の行政監査人」という説明だけで納得してしまいそうです。
三省堂の『日本語辞典』には
オンブズマン《外》
[ombudsman<スウェーデン(委員)<ombud(代表)+man(人)](1)行政監察官.行
政機関の仕事を監察・検査する役目をもつ人.〈現〉(2)官公庁・公務員に対する市民
の苦情を処理する役目の人.〈現〉
と載っています。
権利擁護、よりよい市民生活につながってこそ、
オンブズマンの活動は意義をもってきます。
市民生活は、いろいろな対人関係や組織の連携で織りなされています。
家族、親類、友人・知人、近所づきあい、医者と患者、市役所と住民、
政治家と有権者、師弟、国家と国民、雇い主と従業員・・・
特に福祉サービスは、利用者がそれまで歩んできた人生全体と深く絡んできます。
「行政」という枠のなかだけで解決できる問題はほとんどありません。
だから、私たち「あいち福祉オンブズマン」は、
福祉サービス利用者や関係者の方々の声を聞くことから出発したいと思います。
もちろん、「行政」との関係も不可欠ですし、
制度についての提言や啓発も大事です。
分からないことを質問したり、
自分が必要だと感じる援助を求めることは恥ずかしいことではありません。
「人間は一人では生きられない。一人で生きてはならないのだ」
『未来少年コナン』の中の台詞だったと記憶しております。
もともと、人間は相互依存的な生き物だ、との簡潔な表現として
私には印象深い。
堤 剋喜
2 「あいち福祉オンブズマン」と「愛知・名古屋ふくしネットワーク」
設立趣意書にあるように、両組織はオンブズマン契約を結んでいます。
契約の要点は次の通りです。
・「あいち福祉オンブズマン」は「愛知・名古屋ふくしネットワーク」(以下「ネットワーク」
と略記)会員施設へ定期的にオンブズマンを派遣し、訪問相談を実施する。*
・「ネットワーク」会員施設利用者の人権侵害の可能性が示唆されるときは、「あいち
福祉オンブズマン」はその施設にオンブズマンを派遣し、実態調査を行う。
・「ネットワーク」会員施設は「あいち福祉オンブズマン」の調査に可能な限り協力す
る。
・調査の結果、人権侵害が事実と判明した場合、「あいち福祉オンブズマン」は改善勧告を行う。
・「ネットワーク」会員施設は「あいち福祉オンブズマン」の改善勧告に従う。
・「ネットワーク」は会員施設から会費を集め、負担金として「あいち福祉オンブズマン」
の活動資金にあてる。**
*「あいち福祉オンブズマン」は「愛知・名古屋ふくしネットワーク」会員施設に
対しては立ち入り調査権と改善勧告を行う権限が認められています。
「あいち福祉オンブズマン」は民間組織ですから、「ネットワーク」会員施設以外の
施設などに対する特別な権限はありません。
**「あいち福祉オンブズマン」と各施設を「愛知・名古屋ふくしネットワーク」が
つないでいます。オンブズマンの公正で自由な活動を実現しつつ、活動資金を得るた
めの選択です。施設が直接オンブズマンを委託するより、「愛知・名古屋ふくしネットワ
ーク」を介した方がオンブズマン個人と施設とのしがらみを減らせるでしょう。
「あいち福祉オンブズマン」の独自財源の確保は今後の課題です。
堤 剋喜