「何かあったのかなぁ?」
「確かに祥子と可南子ちゃんでは正直、接点は見つからないよね。」
「実は祐巳さんを巡って裏ではすごい戦いがあったりして。」
流石にそんな事は無いと思うけど・・・ねぇ。
「どうする?見に行ってみる?」
「う〜ん、やめておく。あまり詮索するのはよくないからね。」
「でもどう考えても祐巳さんがらみだよ。」
「そうとは限らないじゃない。」
「私は限ると思うけどなぁ。」
私たちがここに来ている事は知らないはずだし、お姉さまと二人で話したい事だったらきっと、私には知られたくないと思う。それなのに無神経に覗きに行くことなんて出来ないよね。
「祐巳ちゃんも行かないと言っているのだから、由乃もいつまでも話を引っ張らないの。」
「は〜い。」
この話はここまで。当初の予定通りテニスを始めたんだけど・・・あれはテニスと言うのだろうか?
「祐巳さま、1度くらい打ち返してもらわないとテニスになりませんよ。」
「すみません・・・。」
ハイ、この通り一度もボールが相手コートに戻らないの。
「祐巳さん、情けないなぁ。」
「こらこら、由乃だって人のことは言えないだろ。」
「あら、私は2球返したわよ。」
「30本以上打ってね。」
「うぅ〜〜。」
そう、由乃さんはスポーツ観戦が趣味と言うだけあってフォームは綺麗なんだけど、いざボールを打つとなると体がついていかない様子。まぁ、1年前までは激しい運動が出来なかったのだから仕方ないんだけどね。
「がんばって祐巳さん、そろそろちゃんとボールを打ったところの写真も取らせてね。」
「もぉ〜!蔦子さんまで。」
でも、確かにそろそろ1球ぐらいは返さないとね。それに由乃さんはフォームが綺麗だから、ちょっとコツをつかんだら普通に打てるようになりそうだし、そうなったら悲しい事になってしまう。
「祐巳さまはボールをラケットに当てようとしすぎて、上半身がボールの方に傾きすぎなんですよ。」
「そうそう、正しいフォームで打たないと、いつまでたっても上手くならないわよ。」
「うんうん、フォームだけは綺麗な由乃が言うと説得力あるなぁ。」
「もう、令ちゃんたら茶化さないの。」
そう言いながらみんなが私の腕や肩に手を当ててフォーム直しを始めた。瞳子ちゃんなんか後ろに回って私の腰に手をあてて「腰はこう回すのですよ。」なんて言ってるし。私のほうが上級生なのに、そんな威厳は何処にもないのね。(とほほ)
「そうそう、そして上半身は前に泳がないようにっと。」
「わっわっ、由乃さん。」
由乃さんったら、私に正面から抱きつくようにして・・・と言うか、抱きついて私の体を起こすものだから、前からは由乃さんに抱きしめられ、後ろからは瞳子ちゃんが腰にすがり付いているような変な格好に。
「おっ、そのポーズいただき。」
「蔦子さんまでぇ〜。」
蔦子さんたら、私の抗議の声など何処吹く風。角度を変えていろいろな方向からパシャパシャ取るし、それを見て調子に乗った由乃さんと瞳子ちゃんもより一層体を摺り寄せてくる。令さまは令さまで助けてくれる様子もなく、おなかを抱えて笑っているし・・・。
「うぅ、私はみんなのおもちゃなのね。」
「あれ?知らなかったの。」
頼むから誰か否定してよ。
「おっ祐巳ちゃんたち、楽しそうな事しているねぇ。」
「あっ聖さま!助けてくだ・・・さ・・い・・・。」
「ほんと楽しそうね、祐巳。」
「お、お姉さま!?」
「さっ祥子、これは、いや、その、ただじゃれあっていただけで。」
そう、聖さまはお一人ではなかったのだ。聖さまの後ろにはお姉さまを始め、可南子ちゃん、白薔薇姉妹、前薔薇さま方とオールスター勢ぞろい。
「お姉さま、これは私のフォームがおかしかったから、由乃さん達が治していてくれていただけなんですよ。」
「なるほど!手取り腰取り直していたわけだ。どおれ、私も教えて進ぜよう。」
「聖さまは黙っていていただけますか。」
「は〜い。」
私がジト目でそう答えるとこの返事。もう、こんな時の返事は凄くいいんだから。
「瞳子さんは、いつの間にそんなに祐巳さまと仲良くなったのかしら?」
「あら、あなたには関係ないことではなくて、可南子さん。」
「確かに関係はないけれど、いつまでも祐巳さまの腰に抱きついているのはどうかと思いますよ。」
「あっ。」
そう言われて、顔を真っ赤にしながら慌てて私から離れる瞳子ちゃん。由乃さんもぽかぁ〜んとしていたけど、それに気付いてやっと離れてくれた。
「と、ところで皆さんそろってどうなさったのですか?」
「それに可南子ちゃんまで。どうしてここに?」
「それは私が呼んだからだよ。」
「聖さまが?」
「そう。私と聖が乃梨子ちゃんに連絡させたの。」
と、江利子さま。さっき志摩子さんたちを連れて行ったのはそう理由だったのね。
「祐巳ちゃんには二人妹候補がいて、そのもう一人をここに呼ぶと言う話だったから、私も賛成したのよ。いい機会だし、孫の妹候補を見ておきたかったからね。」
「私は別に妹候補と言うことでは。」(×2)
「はいはい、解ってるから。」
蓉子さまには流石の1年生コンビも形無しね。でもなるほど、蓉子さままで賛成したのなら話はすんなりと進みそうね。前薔薇さま3人の意見では誰も逆らえないし。
「と言うことは、さっきの聖さまと江利子さまの笑顔はこれをたくらんでいたからなのか。」(小声)
ふむふむと一人で納得していると、私の独り言が聞こえたのか由乃さんが小声で。
「なに言ってるの、あの江利子さまがこの程度の事であんな笑顔を見せる訳無いじゃない。」
「ま、まさか。」
そう言って令さまを見てみると・・・困った顔をしながら無言でうなずいているし。一体、この後何が起こるって言うのぉ〜?
あとがき(H16/5月1日更新)
イベントが動き出しましたね。
しかし、今回は可南子ちゃんの正式な登場なのにかなり影が薄いなぁ。まぁ、一緒に聖さまたちがいてはどうしても影は薄くなってしまうんですけどね。
ところで、テニスコートの光景を見たわりに、祥子さまがかなりおとなしめですよね。でも、蓉子さまが隣にいては流石に祥子さまをバーサーカーモードには出来ないからなぁ。でもこの理由、いい案が浮かんだら外伝で書くかも。(笑)