とりあえずテニスは一時中断。可南子ちゃんの紹介をするからと一度リビングに戻る事に。
「江利子さまたちが何かたくらんでいるって、一体何を?」
「そんなの、私にわかる訳無いじゃない。」
「なら勘違いなんじゃないの?」
「いや、それは無いわ(よ)。」
何も黄薔薇姉妹そろって否定しなくても・・・・。
「さて、それじゃあ祐巳ちゃん、改めて紹介してもらえないかな。」
「あっ、はい。」
聖さまの指示で私は瞳子ちゃん、可南子ちゃんと一緒にみんなの前に出されて紹介する事になった。
「えっと、二人とも1年生で文化祭までの少しの間、山百合会の手伝いをしてもらっています。まず、この縦ロールの子が松平瞳子ちゃん。皆さんももうご存知の通りお姉さまの従妹でもあります。」
「松平瞳子です。祐巳さまにはいつもお世話になっています。」
そう言ってぺこりと頭を下げる瞳子ちゃん。流石に自称女優と言うだけあって、みんなの注目が集まっているにもかかわらず堂々としたものだ。
「そして背の高い方が細川可南子ちゃん。」
「細川可南子です。よろしくお願いします。」
それに対して可南子ちゃんは少し表情が硬いみたい。こう言う場になれていなければどうしても表情は硬くなってしまうものだよね。
「この二人と乃梨子は同じクラスなんですよ。」
「へぇ、クラスメイトか。乃梨子ちゃんから見て、この二人はどんな感じ?」
「私から見てですか?えっと・・・。」
聖さまに聞かれた乃梨子ちゃんは、そう言って志摩子さんをちらり。その視線に対して無言でうなずく志摩子さんを見て・・・。
「いつも喧嘩ばかりをしている問題児二人です。」
「乃梨子さん!」(×2)
「あら、こんな時は仲がいいのね。いつもは喧嘩ばかりなのに。」
「由乃、チャチャを入れないの。」
「はぁ〜い。」
乃梨子ちゃん、はっきり言うなぁ。でも、確かに早めに知っておいてもらった方がいいかも。この後一緒に行動するとなると必ず何か問題が起こるだろうし。
「なるほど、二人ともいつも祐巳ちゃんを取り合って喧嘩しているわけか。」
「違います!」(×2)
「うんうん、息が合っていてよろしい。」
はぁ、早速聖さまにおもちゃにされているよ。
「でも、こんな子が二人もいるとなると祐巳ちゃん、祥子のお守りも合わせて大変でしょ?」
「聖さま!な、なぜ私が。それにお守りって!」
「あら、素直じゃない妹候補二人と、同じく素直じゃないお姉さま。それぞれに気を使っている祐巳ちゃんは大変だと思うけど?」
「大丈夫です。その分私と志摩子さんが祐巳さんを守っていますから。」
「そうです。心配はありませんわ、お姉さま。」
「なるほど」
由乃さんと志摩子さんの言葉に、うんうんとさも納得したようにうなずく聖さま。それに対して・・・。
「祐巳は私が大切にしているのだから、誰にも心配していただかなくても結構です!」
「祥子、そうは言うけど友人は大切よ。それはあなたにも令がいるから解っている事でしょ。」
「それはそうですが・・・。」
さすが蓉子さま、お姉さまの爆発寸前に見事に鎮火して下さった。
「それに祥子がいつもヒステリーを起こすから、うちの令や由乃ちゃんが苦労するのではなくて?」
「うっ、それは・・・。」
「そんな事はありませんよ。お姉さまはいつもお優しいです。」
「あらあら祐巳ちゃん、いくらスールだからと言ってかばわなくてもいいのよ。いつも苦労しているのでしょう?」
「いえ、そんな事はありません。確かにやきもち焼きでわがままな所はあるけど、素敵なお姉さまです。」
「祐巳ちゃん、それ、フォローになってないよ。」
「あっ!」
うう、お姉さまが目に見えて落ち込んでしまっている・・・。
「ついつい本音が出てしまうのは仕方ないよ。苦しくなったらいつでも私の胸の中へ飛び込んでおいで。」
「ぎゃう!聖さま、いちいち抱きつかないで下さい。」
「愛しい愛しい祐巳ちゃんが苦労しているから、慰めてあげようとしているだけじゃないか。」
「そんな慰め方はいりません。」
まったく、いつもいつも何かと理由をつけては抱きついて来るんだから。
「聖、江利子、あまり祥子や祐巳ちゃんをいじめないの。それに1年生二人がほって置かれて立場がなさそうじゃないの。」
「あ、ごめんごめん、すっかり忘れていたよ。」
おいおい。
「とにかく、君たち二人が祐巳ちゃんの事が大好きだと言う事はよ〜く解ったよ。」
「そうね。二人とも祐巳ちゃんをいじめ始めると本当に怖い顔になっていたし。」
「えっ!?」
驚いて二人の顔を見てみると凄くビックリした顔をしている。と言う事は本当なんだ。二人の事なんてまるで目に入っていないような素振りだったのに・・・。前薔薇さま恐るべし。
あとがき(H16/5月9日更新)
う〜ん、本題に入る前に1話分書きあがってしまった。
聖さまたちを書いていると楽しいからついつい文章が長くなってしまうんですよね。まぁ、そのあたりは仕方が無いと思って見てやって下さい。(自分で言うなって。)