「ところで祐巳ちゃん、この二人の事なんだけど。」
「はい。」
「来たっ!」
「由乃ちゃん、来たって何が来たのかな?」
「あっ、いえ、その・・・。」
江利子さまの発言についつい叫んでしまった由乃さん。その気持ち、解らないではないけどね。
「まぁいいわ。ところで話を戻すけど、この二人も泊まるのなら部屋を決めなければいけないわよね。」
「はぁ。」
「でもこの二人はあまり仲はよくないと。」
「はい、そうです。」
「しかし、他のメンバーがそれぞれ相部屋なのに、一年生がシングルではちょっとおかしくないかしら?」
「それはそうですが、この二人を同じ部屋にするわけにも行きませんし、たとえばどちらか一人を蔦子さんと相部屋にしたとしても一人はシングルになってしまいますよ。」
江利子さまは何が言いたいのだろう?由乃さんは何か裏があるに違いないといった感じの表情で見ているけど、この話の流れでそんな変な事はおきそうにないし。
「となると答えは一つ。この二人とここにいる誰かがそれぞれ相部屋になればいいのよ。」
「はぁ。」
それはそうなのだけど、ここまで芝居がかって確認するほどの事ではないんじゃないかなぁ?
「それなら瞳子さんは紅薔薇さまの従妹なのですから、紅薔薇さまと同室になっていただいて、私は祐巳さまと同室になればすべては解決します。」
「なっ、なんですってぇ〜!」×2
「あらあら、大混乱。」
「そうだね。」
すみません、私が浅はかでした。可南子ちゃんの一言にものすごい勢いで反発する瞳子ちゃんとお姉さま、そしてまさにしてやったりといった顔で微笑む江利子さまと、よくやったとばかりに肩に手を置く聖さま。見事に(はたから見れば)面白い事になってます。でもまさかこんな展開になるなんて。
「こらこら、3人ともはしたないよ。それと、祐巳ちゃんと同室になりたいのはあなた達だけじゃないのよ。」
「まさか聖さま。」
「うん、私も祐巳ちゃんと同室になりたいから立候補。」
「聖さまはお姉さまや江利子さまと同室でいいではないですか」
「あら、それなら祥子も蓉子と同室でいいのではなくて?」
「そうですね。でもそれなら聖さまも志摩子とご一緒なさったらいかがかしら?」
「えっ、そんな・・・。」
祥子さまの一言で今度は乃梨子ちゃんが青くなる。
「お姉さま、流石にそれは乃梨子ちゃんがかわいそうですよ。」
「祐巳、あなたは聖さまの味方をするの!?」
「いえ、そういう訳ではないですが・・・。」
ダメだ、完全に頭に血が上ってる。いつものお姉さまならこんな事はないのに。
「そういう事ならいい考えがありますよ。私と祐巳さんが同室で祥子さまは瞳子ちゃんと、蔦子さんは可南子ちゃんと同室になれば3年生の令ちゃんがシングルになる。これなら問題ないでしょ。」
「よ、由乃さん?」
さも得意げにそう言い切る由乃さん。でも・・・
「由乃さままで入って来ないで下さい。」
「あら、親友が同室になるのはあたりまえでしょ。」
ああ、由乃さんと瞳子ちゃんが喧嘩を始めてしまった・・・。うう、どんどん収拾がつかなくなっていくよぉ、誰かぁ〜、た〜す〜け〜てぇ〜。
「話が進まないからみんなとにかく落ち着きなさい!」
「蓉子さま!」
そうだ、この方がいらっしゃった。蓉子さまならきっと上手くこの騒ぎを収めてくださるに違いない。
「まったく、要は祐巳ちゃんと同室になりたい人が多いのだからもめているのでしょう。ならば揉め事の原因である祐巳ちゃんは私と同室にします!」
「えっ!」
「いいわね、祐巳ちゃん。」
「は、はい。」
まさかこんな展開になるなんて。でも、あのまま騒ぎを続けるわけにも行かないし・・・。
「ちょっと待って蓉子、さも正論を言っているように聞こえるけど、要するに蓉子も祐巳ちゃんと同室になりたいだけでしょ。」
「何を言っているの江利子、私は!」
「伊達にあなたと一緒に薔薇さまをやってきた訳ではないのよ。もしあなたがいつものように事態を収拾するつもりなら、祐巳ちゃんだけではなく、1年生の部屋割りまで決めてしまうのではないかしら?」
「そ、それは・・・。」
あの蓉子さまがしどろもどろに!?それにまさか蓉子さままで私と同室になりたいなんて・・・。
「本当なの蓉子?」
「流石に江利子はだませなかったわね。」
「お姉さま、どうして・・・。」
「あなたがいつもいつも祐巳ちゃんの事を誉めるし、聖も祐巳ちゃんにべったり。それに由乃ちゃんたちも「祐巳さん祐巳さん」と言っているのを見たら私だって少しはかまいたいと思うのは当然でしょう、私は祐巳ちゃんのおばあちゃんなんだから。孫は目に入れても痛くないほど可愛いものよ。」
蓉子さまの告白で一同騒然。なにせ相手は山百合会最強とうたわれた元紅薔薇さま。(ちょっと言い過ぎ)その蓉子さままで参戦したのだから、流石に聖さまからも余裕が消えている。・・・って、なぜ当事者であるはずの私が冷静に解説してるのよ!
あとがき(H16/5月15日更新)
ついに始まった祐巳ちゃん争奪戦。さて、誰が最後まで生き残るでしょうか。と言っても、実は話の途中で切ったので、実際の争奪戦は17話から始まるのですが。(笑)
日記を読んでいる方は知っているとおり、私は瞳子ちゃんが好きです。(後、祐巳ちゃんとの組み合わせでは祥子さまと由乃さんも好きです。)こうなると可南子ちゃんには分が悪そうですが、今回誰が勝つかはダイスで決めるつもりなのでまだ決まっていません。さてさて、誰と同室になって、どんな話になることやら。