「反対反対、絶対反対!」
上の発言は由乃さん。なぜこんなに反対なのかと言うと・・・
「テニスなんて、どう考えても私が一番不利じゃない!」
という訳なんです。
私からすると、心臓が弱くて激しい運動が出来なかった由乃さんにテニスで勝負しろと持ちかけるのはどう考えても不公平だと思うのだけど。それにさっきの様子からすると、しばらく練習を積んでからならともかく、今すぐにやるとなるとテニスサークルに通っている幼稚園児にまで負けてしまいそうな感じだったし。そもそも、ラケットに球があたらないのでは試合にすらなるかどうか疑わしい。
「あらどうして?テニスをやった事がないのはあなただけではないのよ。それに由乃ちゃんはさっきまで、テニスをしていたのでしょう?」
「でも、つい最近まで運動をした事のなかった私と、何でもこなすお姉さま方、それにいつもテニスをしているであろう瞳子ちゃんや、1年生で体育祭のリレーのアンカーになるような子相手ではどう見ても不利じゃないですか。」
「そうは言うけど、走るのが速かったり、運動神経がよかったりしたからといって、初めてやるテニスが上手いとは限らないわよ。」
「そうそう。何事もやってみないと・・・ね。」
「ううぅ〜。」
江利子さま、蓉子さま、聖さまと、お三方に順番に正論を吐かれてしまっては、流石の由乃さんも言い返す事は出来ないみたい。でも、確かに正論ではあるけど運動を出来なかった由乃さんの不利な立場には一言も触れていない事に気付いてはいないみたい。これはちょっとずるいよね。
「あのぉ〜。」
「祐巳ちゃんは黙っていてね。」
「そうそう、景品は誰かに有利になる事は言わないの。」
「うぅ〜、私は景品ですか。」
私が発言する前に、それを察知した蓉子さまと聖さまにしっかり釘をさされてしまった。おまけに景品扱いだし・・・。
「でっでも、庭にテニスコートがある祥子さまやテニスをやった事のある瞳子ちゃんは?」
「それを言ったら、その二人と対戦する可能性のある私たちも不利なのは同じじゃないの?」
「聖の言うとおりね。それに、対戦のトーナメント表はくじ引きで決めるのだから、もしかしたらその二人が最初につぶしあってくれるかもしれないわよ。」
「何より、このテニス対決だけで結果が出るわけではないのだからいいじゃないの。それとも由乃ちゃんは全種目、自分の得意なものでやって欲しいわけ?」
そうなのだ。実はこのテニス対決だけで全てが決まるわけではなく、得意不得意での不公平の無いようにいくつかのゲームをして、その総合点が一番高かった人が勝者になると言う事になっている。
「そういう訳ではないですが・・・。」
「なら決まりね。」
元々テニス対決に異論のないお姉さまや、1年生である二人からは特に反対意見はでなかったので、由乃さんの敗北とともにテニス対決は決定。でもちょっと由乃さん、かわいそう。どんな理由をつけたとしても、このメンバーで一番不利なのが由乃さんである事には代わりがないし、いくら総合点で勝利が決まるとは言え、一つのゲームを落とすという事はそれだけ優勝からは遠のくという事なのだから。
「それでは祐巳ちゃんをお部屋につれてって杯、第一回戦の対戦組み合わせ抽選会を始めます。」
そう江利子さまが言うと、アシスタント?の乃梨子ちゃんがくじの入った箱を持ってみんなのところへ。引いた人から自分の番号を読み上げてもらい、それをこれまたアシスタントの志摩子さんがホワイトボードに書き記していく。
「おっ、これは一応ラッキーなのかな?」
「一回戦は聖さまですか。」
第一グループは由乃さん対聖さま。因みに、参加メンバーが6人なので、この二人の勝者はそのまま決勝へ。次の2試合はそれぞれの試合に勝った者同士が再度戦って、その勝者が決勝進出という事になる。
「私の相手は瞳子ちゃんね。これは強敵かな?」
「よろしくお願いします、蓉子さま。」
第二回戦は蓉子さま対瞳子ちゃん。マイラケットまで持っている瞳子ちゃんが有利なような気がするけど、蓉子さまは何でも出来るスーパーマンだから、やってみない事には解らない、ちょっと楽しみなカード。
「残った私たちが第三試合ね。」
「はい。紅薔薇さま。」
第三試合はお姉さまと可南子ちゃん。
「この二人はキャラかぶっているし、二人ともストーカーになってもおかしくないほど祐巳ちゃん激ラブだからもしかしたら血を見るかもしれないね。」
などと横から聖さまが小声で言ってきてるけど、いくらなんでもそんな事はない・・・よねぇ。
「このストーカー娘め。こんな子が祐巳と同室になったら何をされるか解らないわ。なんとしても阻止しないと。」(ぼそぼそ)
「祐巳さまに、このヒステリーなわがままお嬢様はふさわしくありませんわ。祐巳さまを守る為にもここで息の根を止めなければ。」(ぼそぼそ)
なんか、凄く殺気がみなぎっているんだけど・・・。お姉さまも可南子ちゃんも長身の美人だからにらみ合うと迫力があるからそのせいよね、きっと。
「みんなルールは解っているわね。間違っても凶器は持ち込まないように。」
「凶器って・・・。」
そんなもの、テニスに持ち込む訳が・・・。
「チッ!」(×3)
・・・お姉さまと由乃さん、可南子ちゃんから舌打ちが聞こえたような・・・。
「みっみんな、正々堂々と試合をしようね。」
「大丈夫よ祐巳ちゃん、反則したら即失格にするから。」
「そうそう。それにもし全員失格になったら、私たちと同室になればいいから。」
「そうですね、お姉さま。」
志摩子さん、その一言で全員がこっちをにらんでいるんですけど・・・。
「審判への暴行は即失格ですよ。」
「と言う事は、審判になる前ならいいのね。」
「ちょっと、お姉さまったら。それに志摩子さんも。」
「大丈夫よ祐巳さん、ただの冗談だから。」
そう言ってころころと笑う志摩子さん。私、たまに志摩子さんのことが解らなくなる・・・。
「冗談はさておき、みんな準備が出来たらテニスコートに集合。集まり次第トーナメントを始めるわよ。」
江利子さまの言葉を聞いて、みんなそれぞれ自分の部屋へ。私も服を着替えようと部屋に戻ろうとすると・・・。
「祐巳ちゃんはちょっとこっちへ来て。」
「あっ、はい。」
江利子さまに呼び止められてしまった。何かあるのかな?
あとがき(H16/5月30日更新)
今回のトーナメント表はあみだくじで決めました。結構いい感じで配置された気がするけど、聖さまがかなり有利になってしまったのは事実。ダイスで決めるとは言ったけど、運動能力を考えて、それぞれダイス目に+−修正をするつもりなので全員が同じ条件というわけではないので。
でももしダイス目がよくて由乃さんが優勝したら・・・それはあまりに変だろうなぁ。
追記
この話は短時間で書いたので、後になって修正や追加をするかもしれません。私の場合は、通常アップの二日くらい前に書いた物を、後日読み直してセリフや場面を追加する事が多いので。特に今回は内容が薄いからなぁ。
追記その2(H16/6月2日)
ちょっと加筆をしました。