リビングでの解散後、30分ほどで全員がテニスコートに集合した。
「あのぉ〜。」
「みんなそろっているわね?」
「もしもし、江利子さま・・・。」
「それではトーナメントを開始します。」
無視ですか・・・。
「あのぉ〜。」
「主審は令、あなたにお願いするわ。」
「あっ、はい。」
「先に言っておくけど、由乃ちゃんの時、贔屓するのは無しね。」
「解ってます。」
令さまが体育系らしい小気味いい返事を返す。それはそうと・・・
「あのぉ〜。」
「ラインアンパイアは志摩子と乃梨子ちゃんね。」
「はい。」
そろそろ放置は辛くなってきたのですが・・・。
「江利子さま・・・。」
「なぁに、祐巳ちゃん?」
「私はなぜこのような仕打ちを受けているのでしょうか?」
「どうして?祐巳ちゃん、可愛いわよ。」
そう、先ほど江利子さまに呼ばれた私は志摩子さん、乃梨子ちゃんを含めた3人に押さえつけられて、なぜかロリータ風の服を着せられている。
「そうそう、祐巳ちゃんにはそう言う服もよく似合うなぁ。」
「ピンクと白を基調にした服だから、日なたでも暑くはないでしょ?帽子もついているし。」
「いや、そうじゃなくて。」
確かにロリータ風の服だけなら問題はない。と言うより少しうれしいかも。問題なのは他の要因である。
「なぜ私は縛られているのでしょうか?」
「景品だから。」
「そうね、やっぱり優勝商品にはリボンがついてないと。」
解ってはいたけど、ずばり言われると悲しくなるのはなぜ・・・?
「ではなぜロリータ?」
「やっぱり可愛いお人形さんのような格好の方が華やかで優勝商品らしいでしょ。」
そう言う理由でロリータですか・・・。
「因みにこれを提案したのは志摩子だからね。」
「えっ、志摩子さんが?」
「はい。祐巳さんにはとても似合うのではないかと思ったので。」(隠し部屋のお人形を見たら誰でもそう思いますよ、きっと。)
「祥子もそう思うでしょ?」
「えっ?あっ、はい。」
いきなり話を振られたお姉さまは他事を考えていたのか、曖昧な返事を返す。そう言えば、私がこんな目にあっているといつもは助けてくれるのに・・・。それほど試合に集中しているという事なのかな?
「とにかく、祐巳ちゃんにはこの格好で一日いてもらうのでよろしくね。」
「せめてリボンはほどいてもらえませんか?」
「そのリボンも可愛く巻けていると思うんだけどなぁ。」
「可愛い可愛くないではなく、動けないのは辛いですよ・・・。」
流石にそう言うとほどいてくれたけど・・・。
「頭にはリボンを巻いたままなのね・・・。」
「それはそうよ。景品にはリボンは付き物ですもの。」
「本当なら最後までリボンをかけたままにするつもりで綺麗に巻いたのですものね。」
言わなければ最後までこのままのつもりだったのか・・・。
「誰からも異論は出ていないのだし、諦めて景品のお人形さんを演じていなさい。」
「そうですよ祐巳さん。せっかく可愛い服を着たのだから楽しまないと。」(私たちがね。)
「・・・・。」
これが景品でなければ私も楽しんで着ますよ。とほほ・・・。
あとがき(H16/6月5日更新)
聖さまたちの試合まで行こうと思っていたのですが、祐巳ちゃんの格好だけで一話書ききってしまいました。(笑)本当はさわりだけで終るはずだったのですが、書いているうちに楽しくなってしまって長くなるのは私のいつものパターン。さっさと話を進めろと言われているかとは思いますが、私自身がこのような性格なのでご容赦を。
次回はいよいよ試合開始。ダイスはすでに振って、1回戦の結果は出ています。意外な結果だったり、順当な結果だったりしたものもあるので、今どう言う風に理由を付けるかを考えています。案外書くのが楽しいかも。