「今度こそ、本当にトーナメントを始めるわね。」
江利子さまの言葉で最初の組み合わせの二人がコートへ。
「由乃さんと聖さまかぁ。どう考えても聖さまの勝ちだろうなぁ。」
「そうね、ちょっとハンデがあり過ぎって感じ。」
カメラを構えながら、蔦子さんが私の独り言に賛同してくれた。
「ゲームはセットではなくワンゲームマッチ。セットだと時間がかかりすぎちゃうからね。」
「それに短期決戦なら、まぐれで由乃ちゃんが勝つって事もあるしね。」
そう言って笑う聖さま。それに対して由乃さんはというと・・・。
「ムキィ〜!余裕を見せていられるのも今のうちですからね。」
と、やすやすと挑発に乗っているし。ただでさえ不利なのに、平常心まで失ったら勝てるものも勝てなくなるって言うのに。
「ワンゲームマッチという事で、サーブは交互に。最初のサーブ権は先ほどのくじ引きで若いの番号を引いた由乃ちゃんからね。」
「それではゲームを始めます。」
令さまの宣言でゲーム開始。由乃さんのサーブ、ちゃんと入るかな?と、親友としてはかなり失礼な事を考えながらゲームに集中する。
「それ!」
由乃さんの掛け声とともに勢い良く・・・訂正、ゆっくりとしたボールが聖さまのコートへ。聖さまはこれを難なく打ち返・・・せない!?
「あれ?」
「やったぁ!」
「フィフティーン、ラブ」
なんと由乃さんのボールを聖さまが空振り。テニスは初めてと言っていたけど、まさかあの球を空振りするなんて。
「聖さま自身が先ほど言われていた事が正しかったと、自ら証明して見せたって所かしらね。」
「蔦子さんはいつも冷静ね。」
私が驚いている横でそんなに冷静に言われても・・・。
「聖、しっかりやらないと、本当に由乃ちゃんに負けちゃうわよ。」
「いやはや、意外と難しいものだね、テニスというのは。」
蓉子さまの言葉に照れながら頭をかく聖さま。しかしこれでふざけ半分でやったら本当に負けてしまうと思ったのか、顔が真剣になる。
「次は私のサーブね。ハッ!」
先ほどの由乃さんと違い、早いボールが由乃さんのコートへ走ってそのボールに追い付いた由乃さんだったけど・・・。
「エイッ!あれ?」
「フィフティーン、オール」
見事に空振り。由乃さんは「おっかしいなぁ。」なんて言っているけど、さっきまでやっていたテニスを見ていた者からすると予想通りの結果。
「なんの、取替えしてやる。えいっ!」
「ほいっと。」
今度は上手くラケットに当てた聖さま。しかし・・・。
(パスッ)「ネット。サーティー、フィフティーン」
と言うようにネットにあたってしまい、ボールは無常にも自分のコートへ。
「ラッキー!」
「う〜ん、これはちょっとまずいかもしれない。」
と言った聖さまの言葉どおり、なんと次の聖さまのサーブがネットにあたり、打ち直しで軽く撃った球を由乃さんが上手く打ち返してフォーティ、フィフティーンになってしまった。
「フフフ、聖さま、後1ポイントで私の勝ちですよ。」
「何の、これからこれから。」
そう強がって見てもピンチには変わりなく、流石にあせりの色が見える聖さま。誰もが大番狂わせか!と思った所で奇跡は起きた。二本続けて取り、デュースに持ち込んだのだ。
「やっとコツが解って来たかな。」
「うぅ〜、まだ追い付かれただけよ!」
そうは言っても自力に差があるこの二人。コツをつかんだという聖さまに、普通の球も空振りする由乃さんが太刀打ちできるわけが無かった。
「ゲーム!聖さま。」
「よしっ!」
「悔しい悔しい悔しい!」
立て続けに2ポイント取られて由乃さん敗退。もう少しで勝てそうだっただけに本当に悔しいだろうなぁ。
「よ〜し、これで後一つ勝てば祐巳ちゃんと同室だ。祐巳ちゃん、待っててね。」
「うう〜、待っていたくないような・・・。」
聖さまは嫌いじゃないけど、同室になったらどうなってしまうのだろう?まさかずっと抱き付かれっ放しって事は無いよね。
あとがき(H16/6月13日更新)
今までの流れだと前回の話の外伝が来そうな所ですが、今回は上手くまとまらないので先に19話をアップしました。(こう言って置いて、外伝が結局ボツになったらどうしよう。)
さて、前にも書いたとおりテニスの結果はダイズを振って決めています。もちろん本人達の力量を考えてハンデもつけてね。
因みに今回は聖さまは0、由乃さんは−2のハンデがついています。この状態で1球ごとに10面ダイスを振って決めたのですが、聖さまの目がいつも悪くて本当に負けてしまう所でした。もしそうなっていたらそれはそれで面白かったのになぁ。因みにダイス目は以下の通りです。(ハンデ修正後)
| 聖さま | 2 | 3 | 2 | 2 | 10 | 4 | 7 | 8 |
| 由乃さん | 5 | 0 | 7 | 7 | 8 | 0 | 1 | 3 |