第一試合は聖さまの勝ち。で、次の第2試合の組み合わせはと言うと・・・
「蓉子さま、お手柔らかにお願いします。」
「こちらこそお手柔らかにね、瞳子ちゃん。」
第一試合と違い、どちらが勝つか予想の付き辛い組み合わせの蓉子さまVS瞳子ちゃんの対決だ。
さっきやった所を見る限り、瞳子ちゃんはかなり上手いような印象を受けたけど、蓉子さまはどうなんだろう?何でも出来るってイメージがあるけど、同じようなイメージの聖さまがかなり苦戦していたから、蓉子さまも同じようにやった事がなければかなり分が悪いような気がする。
「お姉さま、蓉子さまもテニスは初めてなのですか?」
「いいえ。でも私の家に来て数回やった事があるだけで、本格的にやっているという話は聞いてないわ。」
「そうですか。では瞳子ちゃんは?」
「正直言って上手いわよ。」
「やっぱり。」
いくら蓉子さまでも数回だけしかテニスをした事が無いのでは、お姉さまが上手いという瞳子ちゃんには流石に太刀打ちできないのではないだろうか?
「私でも、出来たら1回戦からあたるのだけは避けたいと思っていたのよ。」
「お姉さまでもですか?」
「だからと言って、私がうまいというわけではないのよ。よくプレイするというだけ。」
そう謙遜するお姉さま。でもよくプレイするという事は上手いのだろうなと思う。だって、お姉さまの気質からして、苦手なものなら絶対やらないと思うから。
「祐巳、何か失礼な事を考えてなくて?」
「えっ!?いえ、そんな事は・・・。あっ、始まりますよお姉さま。どちらが勝つでしょうね。」
危ない危ない。お姉さまは悪口に関しては鋭いからなぁ。
「それでは第2回戦を始めます。サーブは蓉子さま。」
「それでは行くわよ、瞳子ちゃん。ハッ!」
蓉子さまの打ったサーブを上手く返す瞳子ちゃん。それを蓉子さまも打ち返したのだけど、その時体制を崩してしまいファーストポイントを取られてしまった。
「ラブ、フィフティーン」
「なかなかやるわね。」
「蓉子さまこそ。」
続いて瞳子ちゃんのサーブ。これをなんと蓉子さまがリターンエース。あっという間に取り返してしまった。流石の瞳子ちゃんもこれには唖然とした顔。
「フィフティーン、オール」
「あら?そんな顔をする所を見ると、かなり甘く見られていたのかしら。」
「そんな事はありませんが・・・。」
リターンエースで得点された所に追い討ちをかけるように言われた一言で、瞳子ちゃんの顔に動揺の色が広がる。そんな瞳子ちゃんの心の揺れを蓉子さまが見逃すはずも無く・・・。
「サーティ、フィフティーン」
「フフフ、祥子に聞いたほどの事は無いようで安心したわ。」
「くっ!」
「フォーティ、フィフティーン」
瞳子ちゃんの動揺が収まる前に2ポイント続けて取り、マッチポイントまで運んでしまった。
「テニスはメンタルなスポーツというけど本当ね。実力ではどう考えても瞳子ちゃんのほうが上なのに。」
「蓉子さまのペースで運ばれてしまっていますね。」
確かにはたから見ても瞳子ちゃんのほうが上手いというのは解るのに、瞳子ちゃんはあせってしまってその実力が出せないでいる。
「瞳子ちゃん、あせらないで。」
「はい、祐巳さま。」
そう返してきたものの、表情からはあせりの色が消えない。そして・・・。
「こらこら祐巳ちゃん、瞳子ちゃんだけ?応援するのは。」
「あっ、すみません。蓉子さまもがんばってください。」
「よろしい。」
そう言って微笑む蓉子さま。精神的な優劣はこの二人の態度を見れば明らかだ。
「今度こそ!ハッ!」
早いサーブで蓉子さまの体制を崩し、上手く逆サイドにボールをあやつって今度は瞳子ちゃんが得点をあげた。
「フォーティ、サーティ」
「う〜ん、取られちゃたわね。でもまだ私の方が有利。」
「なんとか次も取ってデュースに持ち込まないと。」
得点を取って少しは落ち着くかと思った瞳子ちゃん。ところが・・・。
「長引くと不利そうだし、これで決めさせてもらうわね。ハッ!」
(バシッ!)「えっ!?」
今までの蓉子さまのサーブとは明らかに速さの違うサーブに対応できず、瞳子ちゃんはエースを取られてしまった。
「切り札は最後まで取っておくものよ。」
「ゲーム!蓉子さま。」
「負けてしまった・・・。」
テニスにはよほど自信があったのか、瞳子ちゃんの落胆ぶりはかわいそうなほど。でも、あの蓉子さまが本気で揺さぶりをかけてきては、まだ1年生の瞳子ちゃんでは太刀打ちできないのは仕方が無い事よね。
「お姉さま、おめでとうございます。」
「ありがとう祥子、でもあの早いサーブは入るかはいらないか五分五分だったから、正直ひやひやだったけどね。」
五分五分のサーブをあの局面で打てるのは流石は蓉子さま。でも、言わない方が次の試合の時有利な気がするけど。
「あら?前にわたくしとやった時はもっと入らなかったような記憶が・・・。」
「フフフ、祥子も言うようになったわね。」
なるほど。そう言えば祥子さまとはテニスをしているのだし、すでに知っている事なのね。
「さて、祐巳ちゃん。聖が悪さをしないように私が守ってあげるから安心しなさいね。」
「蓉子、悪さをしないように守ってあげるとはひどいなぁ。」
「あら?的確な言葉ではないの?」
「江利子まで。しまいにはすねるよ。」
そう言って笑う聖さま。それにつられて笑いの輪がコート全体に広がった。
あとがき(H16/7月3日更新)
前回から少し間が開いてしまってすみません。
さて、今回はダイスを振る前は瞳子ちゃんが勝つだろうと思っていました。なぜなら今回も前回同様ハンディ付き、それも蓉子さまには無しで瞳子ちゃんには+2のハンディがあったからです。にもかかわらず蓉子さまの方にいい目が集中して、こんな結果になってしまいました。
正直瞳子ちゃんには勝って欲しかったけど仕方がありません。ダイスの目がこの勝負の全てですから。なお、ダイスの目は以下の通りです。(ハンディ修正後)
| 蓉子さま | 3 | 9 | 7 | 9 | 9 | 4 |
| 瞳子ちゃん | 12 | 6 | 5 | 6 | 12 | 3 |