テニス対決第一回戦もこれが最後の試合。
「それじゃあ祐巳、行ってくるわよ。」
「はい!がんばってください、お姉さま。」
いよいよお姉さまの登場です。
「祐巳さま、一方だけの応援をしないで下さい。」
「あっ、ゴメン可南子ちゃん。可南子ちゃんもがんばってね。」
「大丈夫です、私は瞳子さんのように無様に負けたりはしませんから。」
「なんですってぇ!」
瞳子ちゃんと可南子ちゃんの喧嘩が始まってしまったので一時中断。何とか収まりはしたんだけど・・・。
「二人とも、もう少しでいいから仲良く出来ない?」
「いくら祐巳さまの頼みでも、細川可南子なんかと仲良くすることは出来ませんわ。」
「私もお断りします。」
「はぁ。」
この通り。何とかして仲直りさせたいんだけど、無理なのかなぁ?
「そろそろ始めてもいいかしら?」
「あっ、すみません江利子さま。可南子ちゃん、いい?」
「私はかまいません。」
「お姉さま、お待たせしました。」
「祐巳も大変ね。」
そう言いながら微笑むお姉さま。私の肩に手を置いて、「あの二人のことは気長にやりなさい。」と言ってからコートへ向かった。ああ、本当にお姉さまはおやさしくて、ステキでカッコイイ。(デレデレ)
「それじゃあ始めるわよ。サーブは祥子から。」
令さまの合図で試合開始。綺麗なフォームで放たれたサーブは一直線に可南子ちゃんのコートへ吸い込まれていく。このボールを可南子ちゃんが上手く打ち返し、それからしばらくラリーが続いたのだけれど、最後はお姉さまが可南子ちゃんの逆をつきファーストポイントを取った。
「フィフティーン、ラブ」
「なかなかやるわね?テニスは初めてではないの?」
「遊び程度ならやったことはありますから。」
遊び程度であれなら、真剣にやったらどれだけ上手くなるんだろう?私なんか一生懸命やってもボールがラケットにあたってくれないのに。
続いては可南子ちゃんのサーブ。長身から打ち下ろすボールに戸惑ったのか、これをお姉さまがリターンミスして浮かせてしまい、その隙を見逃さなかった可南子ちゃんのスマッシュが決まって同点に追いついた。
「フィフティーン、オール」
「あれだけ打点が高いと、流石に返しづらいわね。」
「お褒めの言葉と受け取っておきます、紅薔薇さま。」
これには流石のお姉さまもたじたじと言った感じ。でも、そこはお姉さま。
「でも、次はそうは行かなくてよ。」
と言ってすぐに気持ちを切り替えた。
次はお姉さまのサーブ。ところが1球目をネットに引っ掛けてしまい、続いて慎重に打ったボールには流石に勢いが無く、可南子ちゃんに上手く逆サイドに運ばれてこのポイントも取られてしまった。
「フィフティーン、サーティー」
「くっ!」
自分の消極さが招いたピンチだけに悔しそうなお姉さま。ここでがんばってと声をかけたいけど・・・。
「祐巳ちゃん、あなたはあくまで公平に応援しなくてはダメよ。」
「はい、解っています蓉子さま。」
そうなのだ。ここでお姉さまを応援してしまうと可南子ちゃんが動揺してしまい、プレイそのものの公平さが失われてしまう。そんなことはお姉さまも望まない筈だ。
「でも、私はそんなこと関係ないから祥子の応援をさせてもらうわよ。祥子がんばりなさい!」
「はい!お姉さま。」
「あっ、蓉子さまずるいです!」
「ふふふ。」
私の反応を見て楽しそうに笑う蓉子さま。蓉子さまにまでおもちゃにされている気がする・・・。
「(ありがとう祐巳、気持ちは伝わったわ。)」
なんか今、お姉さまにまで笑われたような。ううっ、情けない妹ですみません・・・。
「行きますよ紅薔薇さま。ハッ!」
「そのサーブにはもう慣れたわ!」
そう言うと、可南子ちゃんのサーブを上手く裁いて逆サイドへ。可南子ちゃんも必死にくらについてそのボールを返したものの、崩れた体制では次の球を返すことは出来なかった。
「サーティー、オール」
「追いついたわよ。」
「まだ追いつかれただけです。」
しかし、あのサーブに対応されてしまうと、自力に勝るお姉さまにどうしても試合の主導権が行ってしまう。次のお姉さまのサーブで始まったラリーは可南子ちゃんの意地で長く続いたのだけれど、そこで体力を使いすぎたのか次の可南子ちゃんのサーブに今までの力強さは無かった。
「ゲーム。祥子」
「やったわ。」
「おめでとうございます、お姉さま。」
最後はお姉さまのスマッシュが決まり、熱戦に決着がついた。
「祐巳の応援のおかげよ。」
「えっ、私は何も。」
「いいのよ、解っているから。」
???ま、まぁ、とにかく私の気持ちは伝わっていたみたいだし、いいか。
「ほっほっほっ。細川可南子、あなたも無様に負けてしまいましたね。」
「くっ!」
あっ!まったく・・・また始めてるし。
「瞳子ちゃん、そんな風に言わないの。」
「でも祐巳さまっ!」
「でもじゃないの。可南子ちゃん、がんばったね。」
「負けてしまっては意味がありませんから。」
そう言ってうなだれる可南子ちゃん。ああ、でもどうやって声をかけたらいいんだろう・・・?っと、そこへ。
「胸を張りなさい。あなたはがんばったのだから。」
「紅薔薇さま。」
「死力を尽くして負けたのだから、うなだれる事も恥じる事も無くってよ。」
お姉さまが助け舟を出してくれた。よかったぁ、おかげで可南子ちゃんの顔が少し和らいだみたい。
「そうだよ可南子ちゃん。このテニス対決で終りと言う訳じゃないんだから、次がんばろ。」
「はい祐巳さま、ありがとうございます。」
「祐巳さま、私にはがんばっての一言もくれないのですね。」
「はいはい、瞳子ちゃんもがんばってね。」
まったく、すぐにこの二人は張り合おうとするんだから。でも、そこが可愛くもあるんだけどね。
あとがき(H16/7月10日更新)
今回は順当と言えば順当な結果です。なぜなら祥子さまに+1のハンディがあったから。前回は+2のハンディがあるにもかかわらず瞳子ちゃんが負けてしまいましたが、実は今回もダイスの目がかなり拮抗していたのですよ。特に1回目と5回目はともに10面ダイズで10が出ると言う状態。結果は4−2ですが、+1のハンディが無かったら、振りなおしの結果いかんでは、どうなっていたか解りませんでしたね。
この結果を受けて、次回は祥子さまと蓉子さまの新旧紅薔薇さま対決です。さてさてどちらが勝つかな。気合を入れてダイスを振らないとね。
例のごとくダイス目の発表。結果は以下のとおりでした。(ハンディ修正後)
| 祥子さま | 11 | 6 | 3 | 10 | 11 | 8 |
| 可南子ちゃん | 10 | 8 | 10 | 8 | 10 | 5 |