「祐巳ちゃんの了解も取れたことだし、決勝を始めるわよ。」
「了承なんてしてません!」
「それじゃあ祐巳ちゃんのキス争奪戦を始めます!」
無視な訳ね。おまけに題名まで変わってるし・・・。
コイントスの結果、蓉子さまのサーブから。瞳子ちゃんの試合の時に見せた早いサーブに聖さまがまったくついて行けず、サービスエースで蓉子さまがファーストポイントを取った。
「フィフティーン、ラブ」
「蓉子、最初から飛ばすと後が続かないよ。」
「フフフ、心配してくれなくても大丈夫よ。」
続いて聖さまのサーブ。こちらは蓉子さまほどのスピードは無いものの、確実にコーナーを突いてくる。その後のラリーも確実にいやな所に落としてくる聖さまのボールに蓉子さまが根負けしたと言う形でカウントを対に戻した。
「フィフティーン、オール。」
「力の蓉子さまに確実性の聖さまかぁ。」
「何かいつものイメージとまったく逆の展開で面白いわね。」
由乃さんの言うとおり、どちらかと言うといつもは強引に進めるイメージの聖さまを蓉子さまが抑えると言う役割なのに、この試合に限っては蓉子さまが強引に強い球で押して、それを聖さまが確実に返してミスを誘おうと言う展開になっている。お互いの技量に差があるからこその展開なのだろうけど、いつもと違う一面が見れたようでちょっと面白い。
「フィフティーン、サーティーン」
「サーティーン、オール」
今度は蓉子さまのサーブが外れて聖さまが取り、続いて今度は聖さまの確実な返し球を力技で蓉子さまが押し切った。
「プレイスタイルこそ違うけど、力は拮抗しているんだろうね。」
「そうね。蓉子さまのボールには力があるけどコントロールがいまいちだし、聖さまはコントロールはあるものの、その分力強さが足りない。」
「どちらかと言うと蓉子さまの方が上手い感じがするけど、この展開なら蓉子さまのコントロールミスが続くと聖さまにもチャンスが出てくるわね。」
試合は想像どおり白熱した展開になった。蓉子さまの強いボールに押されながらも聖さまは焦らず確実にと言う点だけを心がけて丁寧にリターンを返し、その球を今度は蓉子さまが全力で打ち返す。そして・・・。
「デュース」
蓉子さま、聖さまとお互いが一ポイントずつとって、試合はデュースに持ち込まれた。
「こうなると聖さまのほうが有利ね。」
「どうして?」
「デュースになったと言う事は、ここからは2ポイント続けて取った方が勝つのよ。そうなるとやっぱり、力で押すより確実な戦法を取っている方が有利なのよ。」
「なるほど。」
確かに力押しだとミスも多くなるし、ワンポイント取られた時点でもうコントロールミスは出来ないって言うプレッシャーがかかるかもしれない。
「テニスはメンタルなスポーツって言うでしょ。小さなプレッシャーでも、案外ボールには大きく現れるものなのよ。」
「さすが由乃さん。テニスをプレイするのは苦手でも、見るのは得意なのね。」
「こらっ!」
「フフフ。」
正直私も由乃さんと同じ意見だった。でも・・・。
「アドバンテージA」
蓉子さまがいつもの通り早いサーブと力強いリターンでポイントを取ったところで、強引に行くのではなく確実にボールを返す戦法に変えてきたのだ。
「まさかここで戦法を変えてくるとわね。」
「戦略をちゃんとしなくては、勝てる試合も勝てないものよ。」
こうなると、今日初めてテニスをやったばかりの聖さまはかなり不利になる。相変わらずコントロール良くコーナにボールを打ち分けるのは変わらないのだけど、蓉子さまにも同じ戦法を取られてしまっては、蓉子さまが力強いボールを持っている分、「1球ミスしたらやられちゃうぞ。」状態になってしまって、かなりのプレッシャーと闘わないといけなくなっていると思うし。そして・・・。
「ゲーム、蓉子さま。」
先ほど由乃さんが言ったとおり、プレッシャーの為かボールが少し甘いところに行ってしまい、それを見逃さなかった蓉子さまの力強いリターンで勝負はついた。
「負けちゃったか。残念。」
「ご愁傷様。」
残念と言いながら肩を落とすような態度をとっているにもかかわらず、すっきりとした表情の聖さま。あれだけの試合をしたのだからあたりまえよね。もう1球蓉子さまがミスをしていたら、きっと聖さまが勝っていたであろういい試合だったし、きっと悔いはないと思う。
「祐巳さん、試合を見て感動しているみたいだけど、この後何があるか覚えてる?」
「へっ?」
「あ〜あ、祐巳ちゃんのキス、蓉子に取られちゃったか。」
「フフフ、私は楽しみだわ。」
うう・・・、そうだ、これがあったんだっけ。
「それでは優勝した蓉子に祐巳ちゃんから祝福のキスです!」
「祐巳さん、違う角度から数カット撮りたいから、2〜3回してね。」
「えぇ〜!」
ただでさえ恥ずかしいのにぃ!おまけに蓉子さまも、
「ちゃんと肩に手を回してね。」
なんて言ってるし。うう、恥ずかしいよぉ〜。
蔦子さんがもうワンカット、もうワンカットと何度も言うものだから結局5〜6回する羽目になった。おまけに・・・。
「はい祐巳さん、じゃあ次は唇にね。」
「あっ、はい。」
「そっ、それはダメェ〜!」
危ない危ない、何度もほっぺにキスをしているうちに麻痺していたのか、蔦子さんの言葉に反応してつい本当にキスしそうになってしまった。後数センチと言う所まで行っていたし、お姉さまが慌てて止めてくれなければ今ごろは蓉子さまとファーストキス!なんて事になっていたかも。う〜ん、カメラマンさんの言葉一つで脱いでしまう女優さんの気持ちが少し解ったかも。おまけに蓉子さままで
「惜しい・・・。」
なんて本当に惜しそうな顔をしながら言っているし。
「でも次勝ったら私たちも祐巳さんにキスしてもらえるわけだ。」
「この試合だけ特別って事は無いよね、祐巳ちゃん。」
「えぇ〜!そんなぁ〜。」
お姉さまもなんかぼぉ〜っとして止めてくれそうに無いし・・・。うう、もういいかげんにしてぇ〜!
あとがき(H16/8月22日更新)
いろいろやっているうちに一ヶ月近く更新が開いてしまいましたね。すみません。この話はそれほど大変ではなかったのですが、なかなか時間が取れなくて。おまけにマツケンサンバネタとか書いていましたしね。
さて、テニス大会は蓉子さまの勝利で終りました。(ダイスの結果は以下の通りです。)この祐巳ちゃんとの同室争奪戦は合計3回やろうと思っています。でも今のところ決まっているのは次の試合だけ。3回戦もスポーツにしようかと思っていたのだけど、そうなると由乃さんが不利すぎるんですよね。どうするかなぁ?何かいい案、ありません?
| 蓉子さま | 10 | 3 | 4 | 10 | 5 | 5 | 10 | 10 |
| 聖さま | 8 | 8 | 10 | 2 | 3 | 7 | 2 | 4 |