「皆様、昼食の準備が整いました。」

 楽しい時間と言うものはあっという間に過ぎていくものらしい。テニス対決も終わり、その後片付けでもと思っていたところにメイドさんが現れこう次げた。

初めての合宿25

 昼食のメニューはパスタとオムレツ。運動をした後と言う事でエネルギー補給のしやすい物を作ってくれたらしい。一見簡単なものではあるが、そこは流石は小笠原家。

 「一つの皿に5種類のパスタが乗っているなんて、普通ないわよね。」
 「それにこのオムレツのソース、かなり時間をかけないとこの味は出ないよ。」

 感心する由乃さんに令さまがした解説によると、緑がほうれん草を、赤がトマト、黒がイカ墨、黄色が卵の黄身を多めに使った物らしい。因みに後1色は普通のパスタ。

 「それぞれ味が違うソースなんだ。」
 「あたりまえじゃないの祐巳さん、パスタの味が違うのだから、ソースも変えないと5種類も乗せた意味がないじゃない。」

 ごもっとも。


 「食事が終ったらだけど。」

 みんなが一心不乱にパスタと格闘している中、聖さまがみんなに話し掛けた。

 「祐巳ちゃん争奪戦の第2回戦をやるんだよね?一体何をやるの?」
 「私の争奪戦ではなく、同室の権利ですよ。」
 「あら、似たような物じゃない。」
 「江利子さままで。」

 そのやり取りが面白いのか、蓉子さままでクスクス笑っているし。

 「それはそうと、本当に何をやるの?私としては水泳あたりがいいんじゃないかと思うけど。室内プールがあるらしいから今の季節でも寒くないし、何より祐巳ちゃんの水着姿が拝める。」
 「あのですねぇ・・・。」

 聖さまったらまったく・・・。 (皆さん忘れかもしれませんが、この連載が始まったのは今年の2月、当然寒い時期を想定して書かれています。)

 「反対!」

 すかさず由乃さんが声をあげる。

 「さすがにそれは由乃ちゃんがかわいそうよ。」
 「おっ、流石第一回戦の勝者蓉子さん、余裕ですなぁ。」
 「まぁ聖のふざけた発言は横に置いておいて、さすがに2回続けてスポーツと言うのも面白みが無いし、何より水泳ではまぐれで勝つということは有り得ないから不公平ね。」

 蓉子さまの言葉にうなずく一同。確かに水泳では偶然足でもつらない限りは、早い人が必ず勝ってしまう。

 「と言うことは誰が勝ってもおかしくない物をということだね。まったくの不公平がでない偶然に頼ったもの。」
 「そこまで厳密である必要はないけど、実力以外に逆転の可能性のあるものじゃないと。」

 う〜ん、たとえ実力差があったとしても逆転の可能性が残されているものかぁ・・・これは結構難問かも。

 「あのぉ。」

 みんなが頭にはてなマークを浮かべていると、乃梨子ちゃんが恐る恐る手を挙げた。

 「どうしたの、乃梨子?」
 「トランプなんてどうでしょう?あれなら誰が勝ってもおかしくはないし。」

 なるほど。

 「う〜ん、トランプかぁ。でもちょっと地味じゃない?」
 「食後に激しい運動は体によくありませんし、腹ごなしの勝負にはもってこいですよ。」
 「確かに令の言うとおりか。よし、トランプで勝負だ!」

 決まったところで早速聖さまがトランプを持ち出す。さっきは不服そうだったのにこの変わり身の速さと来たら・・・。

 「ねぇ江利子、トランプはいいけど何をやるの?勝負と言うことはやっぱりポーカー?」
 「そうねぇ。」
 「それならババ抜きなんてどうでしょう。」
 「ババ抜き?でも祐巳ちゃん、それを一対一でやるとかなり間抜けだよ。」

 うっ、そこまで考えてなかった。

 「ババ抜きか・・・、案外それはいい案かもしれないわね。」
 「蓉子まで。」
 「まぁ聞いて。このトランプで時間をかけてしまうと、ここで時間切れになってしまうわ。でも、ババ抜きなら全員でやれるからその心配はない。」
 「なるほど、でもババ抜きだと勝者が一番最初に決まってしまうよ。」

 そう、トランプと言うのはほとんどのゲームが勝者が一番最初に決まるようになっている。

 「そうね・・・。ではこう言うのはどうかしら?先ほどのテニス対決も含めて、上位から順位に応じて点数を割り振るの。」
 「得点方式にする訳か。」
 「これなら最後のゲームが終った時点ですぐにトップを決められると言う利点もあるわ。」

 他のメンバーからもこの案以上のいい考えが出なかったので、第二回戦はババ抜き大会に決まった。

 「では得点の割り振りを考えるからちょっと待ってね。」

 そう言って江利子さまはトーナメントに参加しない令さまと志摩子さんを伴なって別室へ。

 「トランプかぁ、できたらもう少し動きがあるものにして欲しかったなぁ。」
 「自称写真部のエースとしては、やっぱりトランプ大会では写真を撮っていてもつまらない?」
 「祐巳さんのトランプならいろいろな表情が撮れるから楽しいけどね。」
 「はいはい、どうせ私はすぐに顔に出ますよ。」

 でも、この顔ぶれでは顔に出るなんて事はないだろうし、かなり白熱した戦いになるかも。

 「祐巳さま、トランプで白熱した戦いと言うのは有り得ないかと思いますが。」
 「ごもっとも。」

 って、乃梨子ちゃん、どうして解ったの!?まさかエスパー!?

 「祐巳さん、考えている事が顔に出てるよ・・・。」

 ・・・・あう。

あとがき(H16/9月7日更新)
 ちょっと遅れてしまいましたが、初めての合宿第25話をお届けします。

 さて、第二回戦のお題目が発表されました。これは魔神さんからいただいた案と同じトランプです。8月23日分の日記を読まれた方のほとんどは、あの時書いた文章で想像がついていたんじゃないかな?

 お題がお題だけに、テニス対決のように長々と書く話ではないので1話くらいで終ってしまいそう。おまけに、書いてしまってから言っても仕方が無い事ですが、文章にしても面白い物が出来なさそうなお題ですね。これは失敗したかな?(笑)

 今回もダイスを振って順位を決めるつもりです。さてさて、誰が一位になるのやら。

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