テニスに続いてトランプでも1位になった蓉子さまに今回もキスすることに。
「祐巳ちゃん、どうせならあれやってあげたら?卒業式の前にやってくれた・・・。」
「わっわっわぁ〜!聖さま!」
「何、聖?あれって。テニスの時もそれっぽい事を言っていたようだけど。」
「それはねぇ。」
「せっ聖さまっ!」
私が必死に防ごうとするのを横目に蓉子さまに耳打ちする聖さま。それを聞いた蓉子さまはと言うと。
「まぁ、そんな事をしてもらったの?」
「いいでしょ。」
「そうねぇ、祐巳ちゃん、私にもそれでお願いね。」
なんてイタズラっぽい笑みを浮かべて言って来るし。こんな大勢の前で、できる訳無いじゃないですか。そもそも、あの時の事だって、今考えても顔から火が出るほど恥ずかしいのに。
「絶対ダメです!」
「あら、残念。」
私の返答を予想していたのだろう、わざわざさも残念と言う顔を作ってこう返答した後、
「聖には出来ても、おばあちゃんにはしてくれないのね。」
などと言いながら今度はすねたような表情を作る。
「ふっふっふ、私は特別だからやってもらえたのよね、祐巳ちゃん。」
「特別だからではなく、あれはだまし討ちにあったような物じゃないですか!」
まったく、これ以上この話を引っ張ったら・・・。
「祐巳、さっきから気になっているのだけれど、聖さまが言われている卒業式前の事っていったい・・・。」
「なっ何でもないんですよ。」
「なんでもないって事なさそうじゃない。祐巳さん、私も聞きたいわ。」
やっぱり・・・。お姉さまと由乃さんが問いただして来た。おまけに瞳子ちゃんや可南子ちゃんも興味津々と言った感じだし。
「それはねぇ・・・。」
「聖さまは黙っていてください!」
「は〜い。」
まったく、人事だと思って楽しそうに。
「蓉子はいいわね、楽しそうな孫をもって。」
「あら、由乃ちゃんだっていい子じゃない。」
「でも、こんな楽しみはないわよ。」
楽しみって・・・、楽しいのは周りだけで私は災難なんですけど。
「祐巳さん、そろそろ白状しなさい。」
「そうよ祐巳。ちゃんと話しなさい。」
「でっでも・・・。」
話したら怒るじゃないですか。絶対に。
「はいはい、そこまで。祐巳ちゃんが本当に困っているでしょ。」
「しかし、お姉さま。」
「あなた達はそんなに祐巳ちゃんを困らせたいのかしら?」
「そうそう、そんなんだと祐巳ちゃんに嫌われちゃうぞ。そこの一年生二人もね。」
口には出していない物の、身を乗り出すように聞いている瞳子ちゃんと可南子ちゃんも牽制する聖さま。でも最初に困らせたのは聖さまと蓉子さまじゃないですか。
「でも・・・。」
「はいはい、この話はここでおしまい。蓉子のご褒美が遅れてしまうでしょ。」
最後に江利子さまが釘をさしたおかげで、由乃さんも黙りこの話はここで終りそう。でも
「気になる物は、ハッキリしないと余計に気になるのよね・・・。(小声)」
なんて声が聞こえてくるし。これは蓉子さまか聖さま意外と同室になった時が怖いなぁ。
「それでは、勝者の蓉子に祐巳ちゃんから祝福のキスです。」
改めて、江利子さまの言葉で蓉子さまのほっぺにキス。
「あら、祐巳ちゃん。唇の近くにはしてくれないの?やっぱり聖は特別?」
「よっ、蓉子さま!」
「どっどっどっどっどう言う意味ですか、お姉さま!」
ああ、蓉子さまがすっごく意地悪な顔をしてる。騒ぎはまだ続きそうです。
あとがき
ちょっと間があいてしまいましたが、初めての合宿29話をお届けします。
私の書く蓉子さまは完璧超人って感じがすることが多いですが、個人的には卒業前に聖さまのまねをして祐巳ちゃんに抱きついたり、ホットミルクにイチゴ牛乳を入れてみたりするお茶目な面がある蓉子さまが好きなんですよね。
今回はそんな蓉子さまを目指して書いたのですが、どうだったでしょうか?少しでも原作に近づけていたらいいのですが。