蓉子さまの一言でぶり返した騒動も一段落して、今度は瞳子ちゃんの罰ゲームを何にしよう会議に突入。
「流石に罰ゲームを受ける子を入れて話し合うわけには行かないわね。」
と、言う蓉子さまの主張で、とりあえず瞳子ちゃんを別室に移してみんなで意見を出し合う事になった。
「何かいい意見はある?」
「う〜ん、そうだなぁ。」
罰ゲームとは言え、あまりひどい事をするのはかわいそうだよね。別に悪い事をしたと言う訳でもないんだし。
「いざ罰ゲームを考えるとなると、中々難しいわね。」
「そうね、テレビとかなら熱湯に入るとか、粉まみれになるとかあるけど。」
「由乃、それは流石にかわいそうよ。」
今のは上から志摩子さん、由乃さん、令さまの発言。令さまの言うとおり、いくらなんでもそれはかわいそ過ぎる。
「あっ、そうだ。祐巳ちゃんが私たちを送ってくれる会でやってくれたあれは?」
「ああ、あの踊り?」
「安来節ですか?」
あれって結構難しいのよね。私も祐麒に特訓してもらってやっと踊れたんだし・・・、などと考えていると、
「ええぇぇぇぇ〜!」
と、かなり大きな奇声が上がった。その発生源はというと・・・。
「か、可南子ちゃん、何をいきなり叫んでるの?」
「祐巳さま、安来節と言うと、あっあれですよね?」
「そう、通称どじょうすくい。祐巳ちゃんのほっかむりに五円玉で鼻をつぶしたあの姿は忘れられないなぁ。」
「確かにあの「アラエッサッサー」は忘れようとしても忘れられないわね。」
「忘れてください・・・。」
聖さまばかりか、蓉子さままで。あの時は卒業される薔薇さま達をとにかく楽しませようとやったけど、改めてこう言われると流石に恥ずかしいものがある。
「でも、祐巳さまが・・・。まさかそんな・・・。」
「私はマジックで、志摩子さんは日舞を舞ったんだよね。マリアさまの心で。」
「ええぇぇぇぇ〜!」
っと、今度の奇声は乃梨子ちゃん。
「志摩子さんって名取りでしたよね?それなのにそんな曲で踊ったんですか!?」
「あれは面白かったわね。」
「由乃ちゃんがマジックで使ったあっぱれと書かれた扇子まで持ってたしね。」
普段のイメージとはかけ離れた行動をとった事を聞いて、自分の知らないお姉さまを垣間見た乃梨子ちゃんは大興奮。
「今度私にも見せてください。」
なんて言って、志摩子さんを苦笑させている。
「所で、本当に罰ゲームに安来節と言うのは面白そうね。」
「そうだね、将来祐巳ちゃんの妹になる子はあの芸を受け継いで、祥子達を送る会で踊る事になるんでしょ。瞳子ちゃんは祐巳ちゃんの妹候補なんだから予行練習に丁度いいじゃない。」
「いつそんな事が決まったんですか!」
何を言い出すんですか、この人(聖さま)は。
「祐巳さまの妹になるには、安来節を踊らなければいけないの・・・でっでも、そんな・・・。」(小声)
「いいじゃない、祐巳ちゃんもあんなに上手く踊れるんだから、マンツーマンで手取り足取り教えてあげれば。」
「そうね。いっその事紅薔薇の送る会の演目は毎年あれにするってのはどう?」
「なんて事言い出すんですか!」
まったく、聖さまも江利子さまも、ちょっと悪乗りしすぎじゃないですか?
「ゆっ祐巳さまに手取り足取り・・・。」(小声)
「こらっ!聖も江利子も、調子に乗って変な事言わないの。」
ほら、蓉子様に怒られた。
「いくらなんでも悪乗りしすぎです。第一、お姉さまのような子が私の孫になったりしたら大変になるじゃないですか。」
「それはそれで面白いと思うけどなぁ。」
「まったく。それに妹候補だから予行練習というのも変じゃないですか?可南子ちゃんもそう思うでしょ、ね?」
「二人っきりで踊りの練習を・・・。(小声)って、えっ!?はっはい、私もがんばって覚えます!」
「えぇ〜!」
可南子ちゃん、いきなり何を言い出すの!?
「あらあら。」
「祐巳ちゃん、もう一人の妹候補はやる気満々みたいだよ。」
「えっ、あっ、いえ、その・・・・。」
見る見るうちに真っ赤になって、まるでゆでダコのようだよ、可南子ちゃん。
「聖さま、いじめないであげてください。」
「可南子さんの安来節かぁ、私も見てみたいなぁ。」
「乃梨子ちゃんまで。」
まぁ、私も見てみたい気はするんだけどね。
あとがき(H16/11月23日更新)
罰ゲームまで行くつもりが、変な所で盛り上がってしまい、予想以上に長くなってしまったので一旦切りました。因みに今回の話は10月9日の日記に書いた内田水夢さんと言う方と匿名の方からきた「安来節はどうか?」「妹になる子はやらなければいけないからと言えばやるんじゃないですか?」と言う案を元に書きました。
それと、今回は初めての合宿ではあまり目立っていない可南子ちゃんと乃梨子ちゃんにスポットを当てようと思って書いたのですが、可南子ちゃんについてはうまく行った(つもりな)のですが、乃梨子ちゃんはやっぱりあまり目立てませんでしたね。まぁこれは、志摩子さん自体があまり目立たない位置にいるのでどうしようもないのですが。
さて、今回盛り上がった安来節は当初の予定通り採用されません。理由は次回の最初で書きますが、その理由に上の理由があります。それは、これを覚えさせるには祐巳ちゃんが付きっきりで覚えさせる事になるので、どう考えても罰ゲームじゃないんですよね。
可南子ちゃんがあっちの世界に行ってしまっている通り、こんなシチュエーションなら私も罰ゲームを受けたいと思う子も出て来そうだしね。事実、可南子ちゃんはやる気まんまんだし。(笑)
さて、次回はいよいよ罰ゲームが決行されます。さてさて、どんなものになるのやら。
余談
5話くらいで終るつもりだった連載がとうとう30話に。まさかこんなに長い話になるとは、第1話を書いた今年の1月の時点では思いもしなかったなぁ。
余談その2
今回本気で入れようかどうか迷って、結局入れなかった一行。
≫「こらっ!聖も江利子も、調子に乗って変な事言わないの。」
≫ほら、蓉子様に怒られた。
の後に
「そうですよ。それに色物は黄薔薇姉妹が担当じゃないですか。」
これを祐巳ちゃんに言わせたら、この後の展開はどうなっていただろう。(笑)