しばらく歩いて玄関の前まで行くと、あまり見たくない見知った顔がお出迎え。
「あれ?さっちゃんが祐巳ちゃん達が来ると言っていたから、てっきりユキチもつれてくると思ったのに。」
「ごきげんよう、柏木さん。残念でした、祐麒は家でお留守番ですよ。」
「そうか、じゃあ今から迎えに行ってくるかな。」
「ちょっと柏木さん、私の弟にちょっかい出すのはやめてくださいよ。」
って、本当に車の方へ行こうとしてるし。ああ、なんだか頭が痛くなってきた。
今日は山百合会の合宿なんだからと、何とか柏木さんを引き止め家の中へ。前回来た時と違い今日は使用人の人達がいて、私達を応接間まで招き入れてくれた。にしても、初めて見たなぁ、本当のメイドさん。
「部屋はどうしましょう?シングル、ツイン、後4人泊まれる和室があるけど。」
「なら私は祐巳ちゃんと二人部屋!」
「却下です!」
真っ先に手を上げる聖さまも聖さまだけど・・・ああ、お姉さまったらあんなに目を吊り上げて。そんな反応すると聖さまは面白がるだけですよ。って、私も人の事は良く解るんだなぁなどと思ってみたりして。
そうこう言っている内に部屋割りは決まり、旧薔薇さま方は3人で和室、令さまと由乃さん、志摩子さんと乃梨子ちゃんはそれぞれツインに、蔦子さんはシングルに入る事になった。そして私はと言うと・・・。
「あ、祐巳は私の部屋ね。」
と、この一言で決定。お姉さま曰く
「昨日のうちにベットを運び入れて置いたから大丈夫よ。」
との事です。ははは・・なんと言うか・・・。(テレテレ)
部屋割りも決まった所で、各自荷物を自分の部屋に置きに行く事に。でもなぜか私の荷物だけは
「いいから、祐巳はここでみんなが帰ってくるのを待っていなさい。」
などと言いながらお姉さまに持って行かれてしまった。なぜだろう?
さて、その後みんなでリビングに集合。合宿と言っても別に何をすると決めているわけでもないので、これから何をするかの話し合い。
「私、探検がしたい!」
由乃さん、お姉さまの家は未開のジャングルでも秘境ではないんですよ。
「私も見て廻りたいです。」
乃梨子ちゃんまで・・・。まぁ解らないでもないけどね。
「う〜ん、私たちは何度も来た事あるから探検と言ってもねぇ。」
これは聖さまのセリフ。そしてそれを聞いてうなずく蓉子さま、江梨子さま。
「なら見て廻りたいグループとリビングでお茶を飲んでおしゃべりをするグループに別れると言うのは?」
「そうね、それがいいかもしれないわ。」
由乃さんが出した提案に蓉子さまが賛成なさったので、すんなりと話がまとまってしまった。さすが前紅薔薇さま。蓉子さまがうんと言えば誰も反対しないのね。
「当然祐巳さんは探検側ね。」
と、由乃さん。私には選択権は無いのね。まぁ、元々そちらに入るつもりだったけど。
「なら私も・・・。」
「祥子はここでお留守番。それとも私達をほおって置くつもりなのかしら?」
「・・・はい。」
流石のお姉さまも蓉子さまには勝てないようで。まぁ、お姉さまのお姉さまなんだから仕方ないよね。(でもお姉さまと回りたかったなぁ。)
結局お姉さま、蓉子さま、聖さま、江梨子さま、柏木さんの5人は残り、他の6人でお姉さまの家を見学する事に。
「行こう!令ちゃん!。」
と、大はしゃぎで令さまの腕にぶら下がりながら進む由乃さん達を先頭に探索開始。さすがは小笠原家の邸宅。私たちが見た事も無いような物が普通に通路などに並んでいてちょっとビックリ。前来たときはここまでじっくり見る機会なかったから、探索を提案してくれた由乃さんに感謝かも。
「令ちゃん、令ちゃん、これいくら位するのかなぁ?」
「由乃、そういう事言うんじゃないの。」
「だってぇ〜。」
「すごいですね、お姉さま。」
「そ、そうね。」
黄薔薇姉妹は大騒ぎ(由乃さん一人がだけど。)、白薔薇姉妹も口を開けて、ただただ見とれるばかり。かく言う私も何か見つけるたびに「う〜ん。」と唸るだけ。だって、本当に凄いんですもの。ただ、蔦子さんだけは
「この花をバックに祐巳さん撮ったら綺麗かな?」
などとブツブツ言ってるけど。どんな時もカメラの事を忘れない。蔦子さん恐るべし。
「そろそろリビングにもどろうか?」
「そうですね、あれから2時間近くたってるし。これ以上お姉さま方をお待たせするのも悪いですから。」
令さまと志摩子さんの提案で一路リビングへ。するとそこにはお姉さま達はおらず、変わりにメイドさんが一人。
「お食事の用意が出来ております。どうぞこちらへ。」
こうして案内された場所を見てビックリ。50人くらいが一度に食事できそうなスペースに16人くらい着く事が出来そうなテーブルが一つ。そしてその上には・・・。
「こんな料理、映画かテレビでしか見たこと無い。実際に存在してたのね。」
「う、うん」
目の前の光景に圧倒される私達。前来た時のお寿司でも驚いたけど、これはそんなレベルじゃ・・・。
「何をしているの。お姉さま方がお待ちかねよ。」
「は、はい。」
お姉さまに優しくたしなめられて、私達もいそいそと自分のネームプレートの席へ。全員が席についたところでシェフらしき人が
「精魂込めて作らせていただきましたが、皆様のお口に合いますかどうか。」
と、一言。いえいえ、お口に合うどころか私の方がこの料理に合いますかどうか。どうやら由乃さん達も同じことを考えているらしく目を白黒させてる。でも聖さまはこんな時でも
「さぁ食うぞぉ〜。」
なんて言ってるし。ホント大物だなぁ。
「それでは皆さん、いただきましょう。」
「いただきま(ぁ〜)す。」
楽しい晩餐の始まりです。
あとがき(H16/1月31日更新、2/4一部修正)
文章まとめるのが苦手な事は解っていたのですが、まさかこれほどとは。
駄文ですが、もう少し(少しなのかなぁ?)の間お付き合い下さると幸いです。
追記
「長き夜の」を読み返してみたところ、祥子さまの家にはツイン以上の部屋が和室しかない事がわかったのでそこを修正しました。