「では組み合わせを決めるわよ。」
江利子さまがあらかじめ用意していた番号の書いた紙が入った箱から、各自それぞれ一枚ずつ自分の紙を取っていった。
「全員に行き渡ったわね。それじゃあ、それぞれ自分の紙に書かれた番号を読んでいって。」
江利子さまの一言でみんな一斉に自分の紙を開く。そして最初に発言したのは蓉子さま。
「私の紙は1番よ。」
「私が2番です。」
続いて発言したのは可南子ちゃん。2を引いたと言う事で、第一回戦の組み合わせはこの二人に決定。何でもこなすスーパーマンの蓉子さまと、運動神経のいい可南子ちゃんの対決だけに結構面白いゲームになるんじゃないかな?
「3は私です。」
「と言う事は、私の相手は瞳子ちゃんか。」
3番を引いた瞳子ちゃんに、聖さまが4番の紙を見せながら笑いかけた。と言う訳で、第二回戦の組み合わせは聖さまと瞳子ちゃん。今まで数回やった事があると言う聖さま相手だと背が低くてビリヤードにちょっと苦戦していた瞳子ちゃんはちょっと不利かな?でも、練習の最後の方では瞳子ちゃんもかなりいい形になってたし、何よりゲームはやってみない事には解らない。
「最後に残ったと言う事は、私の相手は由乃ちゃんね。」
「はい。負けませんよ、祥子さま。」
5番を由乃さんが、6番を祥子さまがそれぞれ引いたと宣言して、この二人が最後の組み合わせに決まった。お姉さまは自宅で何度かやった事があるけど、由乃ちゃんもすじがいいって令さまに言われて得意げになってたし(令さまの事だからたぶんに贔屓目が入っているだろうけど。)、何より二人とも負けず嫌いだからかなり白熱した試合になるんじゃないかな?
「上手い具合に上位三人が別れたわね。江利子、何か細工したんじゃない?」
「いくら私でもそれは無いわよ。でも、出来ることなら蓉子には由乃ちゃんか瞳子ちゃんに当たって欲しかったわね。」
「どうしてですか?」
ぱっと見、面白い組み合わせだと思うのだけど。
「この組み合わせだと観客としては逆転の楽しみが薄いのよね。仮に蓉子が負けた場合、相手が由乃ちゃんか瞳子ちゃんなら勝ち組みに現在0点の子が必ず入るけど、この組み合わせだと最悪蓉子、聖、祥子が争うって感じになるじゃない。」
「そうですね。」
「でもどうせなら0点の子が1位になって蓉子が0点って感じのプレイオフなんて場面の方が劇的で楽しいでしょ。」
「はぁ。」
確かに、由乃さんか瞳子ちゃんが1位になっても蓉子さまが緒戦で勝ってしまったら逆転は無理。ならその局面を阻止する役を本人達がやる方が傍目には面白いかも。
「まぁ、一回戦から聖や祥子が蓉子とあたるよりはいいけどね。」
「それこそ一回戦で全て決まってしまう可能性が増えるからね。江利子にとってはそれが一番面白くなんでしょ?」
「そうよ。」
聖さまの言葉に、あたりまえじゃないと言わんばかりに答える江利子さま。前から思っていたけど、この対決を一番楽しんでいるのって江利子さまじゃないかな?
「とにかくこれで準備は出来たわね。それじゃあそろそろ最初の試合を始めるわよ。」
「はい。」
泣いても笑ってもこの対決が最後だけに、みんな気合が入ってる。
「それじゃあ、祐巳ちゃんの寝顔を一晩中見れる権利争奪戦、最終対決を始めます。」
「はい!(なっ!)」
なんて副題付けるんですか、江利子さま!それにみんな、さっきより気合入ってるように見えるし。
「祐巳さん、これは誰が勝っても今晩大変そうね。」
なんて志摩子さんまで笑いながら言って来るし。って、乃梨子ちゃん、後ろでおなか抱えて笑わないの!う〜ん、でもお姉さまが勝って一晩中私の寝顔を見ているなんて言われたら・・・それはそれでうれしいかも。(テレテレ)
あとがき(H17/1月23日更新)
初めての合宿第35話をお届けします。因みに組み合わせは例のごとくダイスで決めました。まったくインチキをしていないのにこの結果というのは。なかなかいい感じにばらけてくれてよかったです。もし一回戦で聖さまと祥子さまがあたったらどうしようかなんて考えてましたから。(笑)
さて、去年の1月23日に始まったこのSS。今日でついに一周年です。と言うわけでおまけSS(?)を。
祐巳:「お姉さま、この合宿って確か三日間ですよね?」
祥子:「いきなり何を言い出すの、祐巳?あたりまえじゃないの。」
祐巳:「で、今は二日目のお昼過ぎで、ビリヤード対決を始めようと言うところですよね?」
祥子:「そうよ。待っていなさいね。絶対勝ってあなたと同室になって見せるから。」
祐巳:「はい、がんばってください!」
祥子:「(祐巳の可愛い寝顔は誰にも渡さないわ!そう、今夜は一晩中眠らずに見続けるんだから。)」
祐巳:「(祥子さまと同室、今夜も一晩中お姉さまと一緒・・・(テレテレ))」
数刻後
天の声:え〜っと、話も進まないし、そろそろ戻って来てくれないかなぁ。
祐巳:「(テレテレ)・・・はっ!そうじゃなかった。お姉さま。」
祥子:「ふふふ(デレデレ)・・・なっ何?どうしたの祐巳。」
祐巳:「えっとですねぇ、私が言いたかったのは、なんかまだ二日しかたってないのにもう1年くらいお姉さまのお宅にお邪魔しているような気がするんですよ。」
祥子:「なにを言っているの、そんな事あるわけがないじゃない。」
祐巳:「でも土曜日の午後からお邪魔したので、まだ実質一日しかたっていないはずなのに、なぜかものすごく長い時間いるような気がしませんか?」
祥子:「確かに長く感じるかもしれないけれど、仮に1年経っているとしたら私はもう卒業しているのではなくて?」
祐巳:「それはそうなんですが・・・。」
祥子:「何より私達が一緒にいる時間は長ければ長いほどいいのではなくて?」
祐巳:「はぁ。」
祥子:「だから多少の事は目をつぶって、まだ一日しかたっていないという事にしておけばいいのよ。」
祐巳:「(ああ、お姉さまもそう思っていたんだ。)そうですね。1年だろうが3年だろうが1日には変わりないんですよね。」
祥子:「そうよ祐巳。私とあなたさえいれば1日が何十年でもいいのよ。」
祐巳:「そうですねお姉さま。」
祥子:「たとえ他の人が誰もいなくても私と祐巳だけがいれば幸せ。それでいいのよね。」
祐巳:「えっと、それは・・・。(テレテレ)」
祥子:「いいのよね。」
祐巳:「あっ、はいお姉さ・・・。」
聖 :「祥子、それは無いんじゃない?」
祥子:「せっ聖さま、なぜここに。ここは私と祐巳だけの神聖な寝室のはず。」
祐巳:「えっ!?寝室だったんですか?ここ。」
蓉子:「祥子、まだ勝負の結果は出ていないでしょ。それに何より今現在私が一番有利なのよ。」
祥子:「お姉さままで!?」
由乃:「祐巳さん、助けに来たわよ!」
祐巳:「助けにって、由乃さん、そんな大げさな。」
瞳子:「大げさではありませんわ!相手はあの祥子お姉さまなんですよ!」
祐巳:「瞳子ちゃんまで。」
祥子:「あら瞳子ちゃん、それはどう言う意味なのかしら?」
瞳子:「うう、祥子お姉さま・・・。祐巳さまのためです、瞳子は負けませんよ!」
この後可南子ちゃん達まで入ってきて大混乱。(江利子さまと志摩子さんたちはただ楽しんでいるだけ見たいだけど・・・。)
天の声:えっと、収集が付きそうも無いのでとりあえず祐巳ちゃんに来てもらって締めてもらおうと思います。よっと(祐巳ちゃんの襟首をつかんで部屋から引っ張り出す。)
祐巳:「ぎゃう・・・。なっ何ですか!いきなり。」
天の声:いいから、読者の皆さんに挨拶して。
祐巳:「あっ、はい。えっと、皆さん1年間もの間、私達にお付き合いくださってありがとうございました。この合宿はまだまだ続きそうなのでこれからもお付き合いくださると幸いです。」
祥子:「はっ!祐巳!?祐巳は何処?祐巳ぃ〜、どこへ行ったのぉ〜!。」
瞳子:「祐巳さまぁ〜、祐巳さまどこですかぁ〜!」
祐巳:「向こうが騒ぎ出したようなのでもどりますね。それでは皆さん、これからもよろしくお願いします。(ペコリ)お姉さま、私はここです。」
天の声:まぁ、このようにどたばた続きですが、これからもこの騒動にお付き合いください。