「江利子、始める前にちょっといいかな?」
 「何?聖。」

初めての合宿36

 「ルールなんだけど、ブレイクで手玉が落ちたり1番ボールにあたらなかったりしたファールの時はどうするの?交代してブレイクやり直し?それともそのままにするの?」
 「そう言えば、ファールした時に玉がポケットに落ちた場合の対処も聞いてないわね。」

 聖さまに続いて、蓉子さまもルールについて江利子さまに聞いてきた。

 「令ちゃん、私、どんな事がファールなのか良く解らないわよ。始めてやるんだし。」
 「そう言えば、細かいルール説明をしておかないといけないわね。」

 そう言うと、令さまはおもむろにポケットからルールブックらしき物を取り出した。

 「えっとですね、まずどんな場合にファールになるかですが、手玉を含む全ての球を手で触った場合、手玉がどの球にもあたらなかった場合、一番若い番号の球に最初にあたらなかった場合、突いた球が台の外に出るかポケットに入ってしまた場合、2度突きした場合などがあります。」
 「その他に突く時に両足が床から離れていたり、ついた後、どの球もクッションにあたらなかった時もファールになるわよ。」
 「へぇ〜、そんなルールもあるんだ。」

 お姉さまの補足を聞いて聖さまが知らなかったとつぶやいた。

 「先ほど話が出たブレイク時のファールは、再度ボールを並べなおすのは手間がかかるからそのままで。みんなあまり上手くないのだから、並べなおしてブレイクをやり直しても、また入らず最初からなんて事がありえるからね。」
 「確かに。」

 江利子さまの言うとおり、いつまでたっても入らず、毎回並べなおして再開なんて事になったら先に進まないものね。

 「後、先ほど蓉子から出た話だけど、ファールした時に落ちた球はそのままにするのが今は主流みたいね。ただし、9番が落ちた場合のみフットスポットにおいて再開と言う事にしましょう。」
 「フットスポット?」
 「フットスポットと言うのはほら、台の上に3つマークがあるでしょ。あれの事よ。この場合はブレイクの時、1番ボールをあわせるマークの事ね。」

 私の疑問には令さまが台の上を指差して教えてくれた。見てみると確かに台の上には3つの丸いマークが。あれの事ね。

 「ちなみに、並べた方と反対のフットスポットから横に引いたラインをフットラインと言うのだけれど、ブレイクの時はこのフットラインから手前なら何処において始めてもいいのよ。」
 「あのマークの所に置くんじゃないんだ。」

 令さまが続けて話した補足に、今度は由乃さんが感心したようにうなずいた。

 「さて、説明はこんなものでいいかな?」
 「ちょっと待って下さい、先攻後攻はどうやって決めるのですか?」

 江利子さまが先を進めようとしたところで、可南子ちゃんが質問した。そう言えばそうだよね、ジャンケンで決めるのかな?それとも今回もくじで若い番号の方から先?

 「ビリヤードなんだからバンキングでしょう?」
 「バイキング?」
 「バ・ン・キ・ン・グ。祐巳ちゃんは本当に面白いねぇ。」

 そう言ってカラカラと笑う聖さま。なっなによ、知らないんだから仕方が無いじゃないですか。

 「祐巳ったら。バンキングと言うのはね、プレイする二人がフットラインから反対のクッションに向かって同時に突いて、戻ってきたボールが手前のクッションに近いほうが先攻になると言う決め方よ。」
 「そうなんですか・・・。」

 お姉さまがあきれ顔でそう教えてくれた。うう、物知らずの妹ですみません・・・。

 「まぁ、説明するよりやって見せたほうが早いわよね。令、やってみましょう。」
 「はい、お姉さま。」

 そう言うと、江利子さまは白いボール、令さまは15番ボールを手にとってフットラインに置き、反対側のクッションに向かって同時に突いた。

 「う〜ん、結構自信があったのだけど、令の方が上手かったみたいね。」
 「恐れ入ります。」

 江利子さまの言う通り、令さまの勝ち。と言っても二人ともフットラインより手前で止まっているのだから凄いなぁと思うけど。私がやったらそこまでとどかないか、突くのが強すぎて手前のクッションにあたって大きく跳ね返ってしまうんじゃないかと思うし。

 「へぇ〜江利子、上手いんだ。さては結構やっているな。」
 「前に少しはまっていたからから、自信はあったんだけどね。」

 流石江利子さま、面白そうな事は一通りやっているのね。でも、

 「どれくらいやっていたのですか?」
 「う〜ん、3週間ほどかな?でも、ある程度突けるようになったら飽きてやめてしまったけど。」
 「3週間ですか・・・。」

 それだけの期間でこれだけ上手くなったのが凄いと言うか、それだけの期間で飽きてしまったのが凄いと言うか・・・どちらにしても江利子さま、恐るべし。


あとがき(H17/7月18日更新)
 かなり長い間お待たせしてしまった初めての合宿第36話、やっとお届けします。と言っても、今回の話は実質ルール説明だけですが。(おまけにいつもよりちょっと短いし。)

 でも、これをしっかりしておかないとこれから先ちょっと困るんですよね。試合中にいちいち注訳を入れられないし。という訳でこんな話になってしまいました。でも読んでもあまり面白くないだろうな、この話は。本当は再開1発目だからもう少し面白いネタだったら良かったんですけどね。

 とにかく、これで初めての合宿シリーズも再開です。これからはちゃんと更新していくので皆さん、お付き合いください。

初めての合宿37話へ

マリみてSSページへ