実際はこうであった。時間は朝の4時。当然こんな時間に起きているものはいない。
「おじゃましまぁ〜す。」(小声)
そう言いながらそっと祥子さまの部屋のドアをあけて進入する一つの影。言わずと知れた瞳子ちゃんである。
「やっぱり。ちょっと目を離すとすぐこれだ。」
そこには祥子さまに抱かれてすやすやと眠る祐巳の姿が。
「まったく、祥子お姉さまもお姉さまね。こんな幸せそうな顔をして。」
ん?なんだろう、祥子お姉さまの幸せそうな寝顔を見ていたら、なんだかむかむかしてきた。そして祐巳さまを見ると・・・。
「なんてかわいらしい寝顔。」
祥子お姉さまの腕の中だから全部は見えないけど、子だぬきのような祐巳さまの寝顔と来たら。
「この祐巳さまの寝顔を、祥子お姉さまは独り占めにしていたのね。」
そこまで考えてふと自分の思考に驚く。まさか、私が祥子お姉さまに嫉妬?祥子お姉さまより、祐巳さまのほうが好きだとでも?
「そ、そんな事は・・・。」
でも、確かに嫉妬してるし・・・。
「う、うぅ〜ん。」
ドキッ!
「ビックリしたぁ〜、祐巳さまが寝返りをうっただ・・・か、かわいい!?」
今までは祥子お姉さまの腕の中だったから、半分しか顔を見ることが出来なかったけど、寝返りをうってこちらの方を向いた祐巳さまの寝顔、まさかこんなにかわいいなんて。私とした事が、思わず悶絶してしまいましたわ。
「なんだかドキドキしてきてしまいましたわ。」
どうしましょう。このまま起こしてしまうのはもったいないし。それにもっとこの寝顔を間近で見ていたい・・・。
「思い立ったが吉日ですわね。」
そう言うとおもむろにベットの中へ。
「祥子お姉さまは低血圧でいらっしゃるから、きっと起きないわよね。」
そう言うと、祥子の手を祐巳からはがし、祐巳の腕を自分の方へ。
「祥子お姉さまが起きた時が楽しみだわ。」
祐巳の体温と感触を確かめながら瞳子はまどろみの中に落ちていった。
数刻後
お姉さまに怒られつづける祐巳さま。流石にちょっとかわいそうかな?
「祥子お姉さま、祐巳さまも別に悪気があったわけではないのですから、そこまで怒らなくてもよろしいのでは?」
「うう、おねえさまぁ〜」(涙目)
ああ、泣き顔の祐巳さまもかわいらしい。もう少し叱られさせておくべきだったかしら。
「しかし。」
「あまり続けると、祐巳さまに嫉妬深いお姉さまと思われて、お嫌いになられてしまいますわよ。」
「えっ!?」
あからさまに表情が変わるのだから。大体祥子お姉さまにべたぼれの祐巳さまが、この程度の事でお嫌いになるはずも無いのに。
「ですよね、祐巳さま。こんなヒステリーな祥子お姉さまはほって置いて、他の方たちを起こしに行きましょう。」
「え、瞳子ちゃん、ちょっと・・・。」
先ほどの私の言葉によるダメージからまだ抜けきれていない祥子お姉さまを残し、強引に祐巳さまを部屋の外へ。後で怒られるかも知れないけど、今はこの瞬間の幸せを楽しもう。
「瞳子ちゃん、さっきの話、嘘でしょ。」
「あら祐巳さま、祐巳さまは瞳子が祐巳さまに抱きしめて欲しくてわざとやったとでも?ずいぶんとうぬぼれ屋さんなのですわね。」
「えっ?そ、そういう訳じゃ・・・。」
あ〜あ、ここで「違うの?」と言って笑ってくれる祐巳さまだったら、祥子お姉さまから奪い取るんだけどなぁ。
あとがき(H16/3月13日更新)
本当は外伝にしようかとも思ったのですが、この流れで次の話に移行するので7にしました。
さて、私の中では瞳子ちゃんは本編より少し積極的です。本来、瞳子ちゃんは自分の感情を表に出すのが苦手で、好きという感情を素直に表せない子だと思うんですよ。だから今回も祐巳ちゃんに不利になるようなことをしてしまいます。
私としてはそんな瞳子ちゃんがすきなんですけどね。祐巳ちゃんの妹、瞳子ちゃんになって欲しいなぁ。(でも、予想は前に書いた通り可南子ちゃんだと思うけど。)