「楽しかったわね。」
 「これならファストパスがなくなるのも解るわね。」

 跳ねたり回ったりと縦横無尽に動き回るアトラクションに大興奮。ホント面白かったぁ。

ブゥトン、ネズミの園へ行く 第4話

 「祐巳さん、そろそろパレードの場所取りをした方がいいのではないかしら?」
 「そう言えばそうね。」

 プーさんのハニーハントから出て時計を見ると11時45分。確かパレードは12時40分からだから場所取りをしてもいい時間だ。(ディズニーランドではパレードの1時間前からしかシートなどでの場所取りは出来ない規則なんだって。)

 「そうだなぁ、何処で見よう?」
 「パレードなのだから、ルートならどこでもいいんじゃないの?」
 「それがねぇ。」

 由乃さんがパレードと聞いてそう思うのも無理はない。普通、パレードと言ったらただ通り過ぎるだけだものね。

 「ディズニーランドのパレードはショーパートがあるの。パレードを止めて、そこでショーをやるのよ。」
 「だから見る場所を決めると言うのは案外重要なの。」
 「そうなんだ。そうなると確かに重要よね。」

 志摩子さんと蔦子さんの説明で由乃さんも納得したみたい。と言う訳で作戦会議だ。

 「ここからだとトゥモローランド付近が近いけど、どうする?」
 「初めて見るショーだし、折角だから景色がいい所がいい!」
 「それなら、やはりシンデレラ城をバックに見るのが一番だと思うわ。」

 本日のお姫様、由乃さんの希望でシンデレラ城前の広場のワールドバザール側に陣取ることになった。

 「やっぱりここは凄い人ね。」
 「どうしてもね。」

 行って見ると、まだパレードまで50分ほどあると言うのに数多くのシートの花が咲いている。

 「流石にここで最前列と言うのは無理よ。」

 と、冷静に蔦子さんが言うのを聞きながら、私達もいそいそとシートを広げて場所取り。周りの人に「ここ、空いていますか?」と聞いてから全員が座れて、なおかつ靴が置けるスペースを確保する。

 「大体4列目くらいかな?これならかえってパレードの全体が見れていいんじゃない?」
 「そうね。今回のパレードは参加型だけど、小学生以下の女の子しか参加できないみたいだし。」
 「参加型?私達が参加できるパレードもあるの?」

 志摩子さんの言葉に飛びつく由乃さん。そう、このディズニーランドのパレードの中には参加できるものもあるのだ。

 「普通に座って振り付けだけをやる参加型がほとんどだけど、中には今日のパレードのように前に出てキャラクターと一緒に踊ることができるパレードの時もあるのよ。」
 「そうなんだ。あ〜あ、どうせならそんなパレードの時がよかったなぁ。」

 そう言いながらちょっと残念そうな由乃さん。でも、これからは普通に来られるのだし、そんな機会も数多くあるんじゃないかな?

 「ところで昼食はどうするの?場所取りをしているうちに取ってしまうのでしょ。」
 「そう言えばそうね。由乃さん、リクエストとかある?」

 蔦子さんの言う通り、そろそろお昼の時間。ここでの食事と言うと、ハンバーガーとかラップサンド、ピザとかしか食べた事が無いけど、

 「焼おにぎりとかを売っているお店もあるのよ。」

 と志摩子さんも言うとおり、実は数多くのメニューがあるのよね。

 「リクエストと言われても・・・。そうだ、祐巳さんのお勧めは?」
 「えっ、私?そうだなぁ、おみやげにできるコーヒーカップつきのアップルプリンとかは?」
 「それは食事じゃなくて、デザートでしょ。」

 へへヘ、そうなんだけど、昨日ネットで調べていた時に見つけてどうしても食べたくなったのよね。

 「ここは定番のハンバーガーなんてどうかしら?値段も手ごろだし。」
 「そうね。それじゃあ、志摩子さんと私で買ってくるから、由乃さんは留守番をお願いできる?それと、祐巳さんにはそこのアイスクリームコーン(デザートのお店。)でお勧めのアップルプリンを買ってきてもらおうかしら。」
 「解ったわ。」
 「ら、らじゃ。」

 蔦子さんの指示でお買い物。お昼時でみんな普通の食べ物屋さんに行っているからか、アイスクリームコーンは空いていて10分ほどで私のミッションはコンプリート。

 「チョコレートブラウニーサンデーとかもおいしそうだなぁ。」

 などと後ろ髪を引かれながらも、由乃さんを待たせては悪いので真っ直ぐ帰ることにする。

 「あ、お帰りなさい祐巳さん、早かったのね。」

 待っている間暇だったのか、由乃さんは入り口でもらったガイドブックを読んでいた。

 「こうして見ると本当に色々なものがあるのね。ほらこれ、2500円のスペシャルセットなんてのまである。」
 「ああ、それはレストランで食べるものだよ。私は中で食事する時間がもったいないから食べたこと無いけど。」

 よくレストラン前で並んで待っている人を見かけるけど、その時間があればアトラクションを回ったほうがいいんじゃないかな?折角のディズニーランドなんだから、食事に時間を取られるのはもったいないような気がする。でも、ショーを見る事ができるレストランだけは一度行ってみたいなぁなんて思うけどね。

 「あっ、祐巳さんが買ってきたプリン、ここに載っているわよ。」
 「本当だ。へぇ〜、このコーヒーカップ、スーベニアカップって言うんだ。」
 「昨日見たHPには載ってなかったの?」
 「へへへ、そこまで詳しくは見ていませんでした。」

 そんな事を言いながらガイドブックを二人で見ていると、志摩子さんたちが帰ってきた。

 「思っていたより混んでいたわね。」
 「ホント大変だったわ。」

 全員そろったところで昼食。結構ボリュームがあったけど、騒いでおなかがすいていたのか全員デザートのプリンまでぺろりと平らげた。

 「ごちそうさまでした。」×4

 わいわい言いながらの食事だったから時間もあっという間に過ぎ、そろそろパレードの開始時刻。回りもパレードの期待からか少し騒がしくなってきて、つい釣られて私達も、「楽しみだね。」なんて言いながら笑いあう。

 (間もなくディズニースペシャルパレード、ブーケ・オブ・ラブが・・・)
 「あ〜、なんかドキドキしてきた。」

 パレード開催案内のアナウンスを聞いて、もう居ても立ってもいられないと言った感じの由乃さん。でもその気持ち解るなぁ、私もあのアナウンスを聞くとわくわくしてくるもの。

 「パレードが出発するのが40分だからここに来るのは1時近くかな。」
 「そうね、ここに来るまでに2箇所くらい止まってショーをやるはずだから。」

 蔦子さんも、志摩子さんとガイドブックを見ながら少し興奮気味。ディズニーランドに何度か来ていても、このスペシャルパレードだけは初めて見る事になるから毎回楽しみなのよね。

 「あれ?何か前の方で言っているわよ。」
 「ああ、あれはね。」

 パレードが近づくとキャストのお兄さん、お姉さんが前の方に来てパレードの注意や振り付けの説明をはじめる。参加型のパレードの場合は、ここで振りとかを覚えて実際のパレードが来た時に一緒に踊ることになるんだけど、

 「私はいつも、この説明を聞いて覚えたつもりでも実際のパレードでは早すぎてついていけなくなってしまうの。」
 「そうそう、私も途中で解らなくなって前で踊っている人を見ながらやるから、いつも変な振りになってしまうのよね。」

 志摩子さんもそうなのか。日舞の名取りだから踊りの振り付けとか覚えるのが早そうだけど、やっぱり違うのかなぁ。

 一通り説明も終わり、いよいよパレードの音楽が近づいてきた。

 「あ、来たわよ!」

 由乃さんの言葉に目を向けるとパレードの先頭が木々の間から見え隠れしていた。それと同時に近くのスピーカーから大音量の曲が流れ出して周りの空気を一変させる。

 「わぁ〜。」

 今日の由乃さんは「わぁ〜。」ばかり、でも仕方ないよね。中等部の頃、初めてのディズニーランドと言う友達と来た時も「わぁ〜。」とか「すごいっ!」ばかりだったし。それほどの衝撃があるんだろうね。

 通り過ぎていく装飾を施されたパレード用の車やダンサーの人たち、そしてキャラクターが曲に合わせて踊るのを見ていると思わず頬が緩んでしまうのは私だけかな?音楽の洪水と目の前に広がる幻想的な世界を見ていると夢の国にいるんじゃないかと思ってしまう。そんな事を考えながら見とれていると私達の前でパレードが止まり、前の方の小さな女の子達がダンサーの人たちに導かれて列に加わった。ショーパートの始まりである。すると不意に蔦子さんが、

 「なるほど。」

 と、ファインダーを外して一言。

 「蔦子さん、何がなるほどなの?」
 「今日はランド内にドレスのような服を着た小さな女の子がやけに多いなぁと思っていたけど、このパレードに参加するためだったのね。」

 そう、前に出ている女の子達は全員ではないものの、多くの子がそれぞれ色とりどりのドレスに身を包んですまし顔で立っている。きっとお母さんがこのために用意してくれたんじゃないかな?

 「少し遠くてよく解らなかったけど、さっきキャストのお姉さんが説明していたダンスはドレスに合うものだったのね。」
 「うん、回ったり、お辞儀したりするから余計に可愛いよね、ドレスを着ていると。」

 これはお母さんも気合が入るわけだ。

 (それでは皆さん、またお会いしましょうね、ごきげんよう。)
 「祐巳さん、ごきげんようだって。」
 「ふふふ。」

 ショーパートの最後にフェアリーゴットマザーと言う妖精女王様が言った挨拶につい反応して、由乃さんと顔を見合わせて笑ってしまった。だって、こんなところでごきげんようなんて挨拶を聞くとは思わなかったもの。

 その後も流れていくパレードを見つめながら先ほどのショーの余韻を楽しむ。でも、パレードが終った後は余韻どころじゃなかったのよね。

 「わぁ、凄い人。」
 「こんなに居たのね。」

 もう目の前は人人人。座っていたから解らなかったけど、いざ一斉に全員が動き出すと人の頭で周りの景色が見えないほどだった。

 「これほどの人が居ればどのアトラクションも混むはずよね。」

 少し空いてきて見えた周りの景色は、まるで朝の通勤ラッシュ時の駅のようだった。 


あとがき(H17/5月20日更新)

 ブゥトン、ネズミの園へ行く第4話、いかがだったでしょうか?本当はスプラッシュマウンテンまで行くつもりだったけど、またも長くなってしまった。ホント纏めるのが下手だなぁ、私は。

 さて、この旅行記のあとがき恒例のディズニーランド一口メモ。今回は食事です。祐巳ちゃんたちはハンバーガーを食べていますが、これが一番安いんじゃないかな?ディズニーランドでは。セットで食べると600円くらいになるけど、ハンバーガーだけなら200円くらいのはず。ちょっと多めに食べる人はセットと単品を買えば他のメニューよりは安くなるんじゃないかな?

 そう言う私がいつも食べているのはアドベンチャーランドにあるボイラールーム・バイツで売っているアジアン系のどんぶり物。私の場合はパンよりお米が好きなのでついここに足が向いてしまうんですよね。確か焼おにぎりもここで買えたような?違う店だったかな?値段もそれほど高くないので個人的には一押しの店です。

 次にスーベニアカップ付きデザートのお話。これって実は結構種類があるんですよ。今回本編に書いたものはディズニー・プリンセス・デイズ限定の物でしたが、トゥモローランドテラスではトイ・ストーリーのカップ付きのデザートが売っていたし、案外いろんな種類のカップが売っているんじゃないかな?

 私はつい行く度にその時の限定物のカップを買ってきてしまうのでたまる一方ですが、記念になるので行かれる方は買ってみてはどうでしょう?一つや二つなら邪魔にならないしね。(私はすでに10個ほどになっているような?(汗))

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