「前のパレードは女の子中心だったけど、今度のパレードはディズニーオールスター総出演って感じだったわね。」
 「うん、その時限定のスペシャルパレードもいいけど、このパレードにはこのパレードの楽しさがあっていいよね。」
 「振り付けで参加も出来るのも楽しかったわ。」

 由乃さん、パレードが来るまで何度も練習していたものね。

ブゥトン、ネズミの園へ行く 第6話

 「私は今回も上手く踊れなかったわ。」

 そうつぶやく志摩子さん。確かに振りは間違っていないのだけれど、1テンポ遅れると言うか、とにかく上手く踊れてなかったような気がする。

 「志摩子さんって日本舞踊のように優雅に踊るのはなれているけど、パレードの振り付けみたいな素早く手を動かしたりするのは苦手みたいね。」
 「そう言う由乃さんもあたふたしてたじゃない。」
 「だって、説明を聞いただけじゃあれほど早いなんて思わないじゃない。」

 そう、一生懸命練習しても、キャストのお兄さんが説明した振り付けより本番はかなり早くて着いていけないのよね。

 「でも元気は良かったわよね。思いっきり手を振って。おかげでいい写真が撮れたわ。」
 「あっ、そう言えば蔦子さんがいたんだっけ?しまった、変な顔で写っているかも。」
 「あら、あんなにいい顔はめったに撮れないわよ。少なくとも手術前の由乃さんの写真では絶対にありえなかったわ。」
 「そ、そう?」

 楽しげにはしゃぐ姿の写真なんて、令さまが見たらきっと驚くだろうな。感極まって、泣いてしまったりして。

 「ところで次は何処へ行くの?ホーンテッドマンションの時間まではまだあるのでしょう?」
 「そうだなぁ。」

 志摩子さんに言われてガイドパンフレットを取り出し、今の位置と見比べてみると・・・。

 「ここからだとシンデレラ城かジャングルクルーズがいいんじゃないかな?」

 他にビックサンダーマウンテンもあるけど、志摩子さんと蔦子さんがジェットコースターが苦手みたいだからね。

 「ジャングルクルーズがいいんじゃない?あれは夜乗るより明るいうちに乗った方がいい。」
 「そうだね、シンデレラ城は夜入っても変わらないし。」
 「それに昼間なら写真が綺麗に撮れる。」

 なるほど、蔦子さんらしい理由だ。そんな蔦子さんの思惑は別にしても、特に反対意見が出なかったのでジャングルクルーズへ。

 「結構混んでいるわね。私、ここで50分待ちなんてはじめて見たわ。」
 「普段は30分くらいで乗れるものね。」
 「そうなの?」

 このジャングルクルーズは一度に結構な人数がボートに乗れる上に、出発してすぐに次の船が来るから比較的回転が早いアトラクション。それがこんなにかかるのだから、いかに今日が混んでいるかわかると言うものだ。

 「でも、実際は40分ほどで乗れるわけだ。」
 「フフフ、そうね。」

 キャストの人たちが手際がいいおかげでスイスイ進み、思ったより早くボートへ。全員が座ったのを確認してから乗り場から見送るキャストのお兄さんたちに

 「行って来ま〜す。」

 と、手を振って出発した。でもこんな事、他じゃ恥ずかしくて出来ないのに、ここでは不思議と出来ちゃうのよね。ディズニーランドマジック?(笑)

 「なんかあのガイドのお兄さん、おかまっぽい喋り方するわね。」
 「うん、このツアーは全部のガイドさんがあんな喋り方をするのよ。でもやっぱりそれそれ特徴があって、上手い人も下手な人もいるの。」
 「で、今日は?」
 「当たり。」
 「やっぱりね。」

 このツアーで上手い人にあたると本当に楽しいのよね。今日の人は乗り合わせた小学生の兄弟によく話を振って笑わせて、ボート全体を楽しませてくれた。

 「楽しかったわね。ところでホーンテッドマンションまで後どれくらい?」
 「後1時間20分くらいかな。」
 「それならさっき言っていたシンデレラ城に行ってみない?」
 「そうね。あそこなら待ち時間もそれほどないと思うし。」

 場所も近いということで由乃さんの言う通りシンデレラ城ミステリーツアーへ。行って見るとなんと20分待ち。

 「今日は混んでいるから、もっと待ち時間があるかと思ったのに。」
 「人気のないアトラクションなの?」
 「そんな事無いよ。何度もディズニーランドに来ているけど、このアトラクションには絶対に来るって人もいるくらいだし。」

 何を隠そう、私もその一人だったりする。

 「そうなんだ。ならラッキーだったのかな?」

 そう言った由乃さんの言葉は本当にその通り。なんと並び始めてからすぐ人が集まり始めて、5分ほどで待ち時間が40分に伸びてしまった。

 「私達は本当に運が良かったみたい。」
 「そうね。もう少し遅ければ、倍の時間を並ばなくてはいけなくなっていたもの。」

 そんな事を志摩子さんと話していると順番が来たので中へ。ふと見回してみると、この組には子供が一人もいない。これは・・・。

 「(チャンスかもしれない。)」

 何度も来ているこのアトラクションだけど、私はここでもらえるメダルをもらった事が無い。このメダルは勇者に選ばれた人だけがもらえるのだけれど、小さな子供がいたらその子が勇者になってしまうし、もし子供がいなくてもルートそのものが二つあって、勇者を選ぶ方に入らないと選んでもらえないから。私は運が悪いらしく、なぜか毎回これに当てはまってしまうのよね。

 「今日はどっちだろう?」

 そう思いながら最後の魔王の部屋へ続くエレベータの中まで進むと、キャストのお姉さんが魔王を倒す勇気ある人はいませんかと聞いてきた。

 「(やった!勇者ルートだ!)」
 「はい!」

 喜んだ分一瞬遅れて先に立候補されてしまった。そしてその立候補したのは・・・

 「よっ由乃さん!?」

 そう、キャストのお姉さんの言葉にいち早く反応して手を上げたのは由乃さん。そしてその勢いに誰も立候補すら出来ず、そのまま勇者に選ばれてしまった。

 「勇気があるわね。私もやってみたいといつも思うのだけれど、恥ずかしくて立候補できないのよ。」
 「だって、どうせ参加するのなら色々やってみたいじゃない。」

 志摩子さんに嬉しそうに答える由乃さん。まぁ、今日は仕方が無いか。ちょっと悔しいけど・・・。

 (島津さんには勇者のメダルとレディーの称号が贈られます。)パチパチパチ

 無事(?)魔王を倒し、世界を救った由乃さんは出口前でみんなの前に出されて記念のメダルを授与され、拍手を受けた。

 「ちょっと恥ずかしいね。」

 なんて言いながら戻ってきた由乃さんは、少し照れた様子でもらったメダルを大事そうに鞄にしまっていた。うう、次こそは私が・・・。

 「綺麗・・・。」

 そんな事を考えていると、先に出た志摩子さんのそんな声が聞こえてきた。そこで慌てて出口へ向かってみると、

 「わぁ〜!」
 「ほっと、綺麗ね。」

 シンデレラ城ミステリーツアーの出口から出てみると、空はもう真っ暗。そしてその下にはライトアップされたディズニーランドが広がっていた。

 「いつもシンデレラ城は明るいうちに来るから知らなかったけど、出口から見た夜景ってこんなに綺麗なんだ。」
 「高い位置からディズニーランドの夜景を見ることができる場所はほとんど無いから、この景色は貴重よね。」

 そんなことを言いながら蔦子さんは写真を一枚パチリ。当然私達も入れてだけど。

 「蔦子さん、どうせならちゃんとこの景色をバックに写真を撮ってよ。」
 「いいわよ。」

 そう言いながら、今度はちゃんと並んでパチリ。

 「こんな綺麗な景色が見られるのなら、次からはシンデレラ城は日が暮れてから来ないといけないね。」

 そんなことを言い合いながら少しの間、私達はシンデレラ城からの景色を眺めていた。


あとがき(H17/7月2日更新)
 当初の予定より一週遅れになってしまいましたが、ブゥトン、ネズミの園へ行く 第6話をお届けします。

 今回の話に出て来るシンデレラ城のメダル、実は私ももらった事がありません。私の場合、東京のライブのついでに月曜日にディズニーランドに行くことが多いのですが、なぜかいつも私が行くツアーは勇者を選ぶルートは平日で少ないはずの子供がいて、今日は子供がいないなと思うと必ず勇者を選ばないルートなんですよ。で、これはガイドの人にもよるのでしょうけど、私が今まで参加したツアーでは子供がいると大人が立候補して、なおかつ子供が怖気づいていても子供に勇者をさせてしまうので(一度は嫌がっている子供を説得してまでやらせた事もあったけど、あれはちょっとやりすぎなような?)メダルがもらえないんですよね。う〜ん、いつかもらいたいものです。

 さて、毎度恒例のディズニーランド一口メモですが、今回は本編にも書いているシンデレラ城ミステリーツアー出口の夜景です。ディズニーランドは夜になるとライトアップされて色々と夜景が綺麗なところができるのですが、その中でも私のお気に入りはここ。ディズニーランドは高い所から夜景を見る事のできる場所が少ないので(他にはウエスタンリバー鉄道とかしかないんじゃないかな?)、ここはかなり貴重な場所なんですよ。今の時期は7時半頃まで暗くならないけど、冬場なら6時前には暗くなるので、最後のエレクトリカルパレード前にも夜景を見るチャンスは十分あります。(実際、本編で祐巳ちゃん達が見ている夜景は、タイムテーブル上では5時50分だったりします。)ツアーそのものは室内なので昼夜関係ないので、行かれる方は暗くなり始めてから行って見てはどうでしょうか?

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